2話
11時10分、俺は、いつもの場所で待っていた。杉山は時間にルーズなのはいつものことだから気にしてない。
「よう。」
「ようって。え……。」
なんと杉山の隣には、伊月がいた。伊月はこちらに目を合わせないように、少し曇った空を見ていた。気まずい。あの日以来、一言も話さずに今日に至っている。あちらはどう思っているか分からないが、俺はずっと伊月のことが好きだし、謝りたいと思っている。未練しかない。
「え、どうしたのかなー?」
杉山は明らかに煽るように言った。どうしたのかなーじゃないだろ。
「帰るぞ。」
俺は言った。真剣に伊月と話したいと思っているが、どうしても尻込みしてしまう。俺にはこの空気に耐えることはできない。逃げたいと思っている。すべて忘れ去りたいと思っている。でも、忘れ去ることはできない。逃げることもできない。なぜ?伊月は俺の本当に恋した初めての人だからだ。
「帰るな。」
伊月の声が聞こえた。
「僕は、藤花と話がしたい。」
近くの駅前のカフェに入った。僕はアイスティー、杉山はホットコーヒー、伊月はカフェラテを頼んだ。
「さて。どうする?」
杉山は言った。沈黙。
「俺的には、二人仲良くなってもらった方が都合がいい。二人で遊ぶより三人の方が楽しいじゃん。二辺じゃ三角形も作れない。」
杉山は両手で三角形を作った。沈黙。アイスティーの氷がカランと音を出す。口を開いたのは伊月だった。
「もう、そこまで怒ってないし、謝ってくれたらいい。僕は、藤花と話すの楽しかったし。」
俺は言葉を噛み締めた。その時間は刹那のようにも思われたし、永遠のようでも思われた。
「本当にごめん。伊月の気持ちを害するつもりじゃなかったし、なにより本当のことだったから。好きなのは変わりない。」
俺は落ち着きながら、言葉を紡いだ。
「あれ、伊月君も藤花の事あれ?」
杉山が少し小馬鹿にしたように言う。そして杉山はあるものを出した。それによって、伊月は顔を赤らめた。