攻撃は最大の防御だけど、それでも君は防具を纏う
君は武術を習ったことがあるだろうか。私はない。ないながら言わせてもらうことがある。
武術は「受け」から始まる。
相手の攻めを受ける、流す、回避する。これらは一番基本となる動きだ。ではなぜ防御から始まるのか。答えは簡単、防御無き者に訪れるのは死そのものだからだ。
つまずいて転ぶとき、咄嗟に手が出る、恐怖を感じる。これは体を守るために危機に反応しているのだ。この防御ができないと、頭を打ちつけて大変な怪我になる。
と、こういうわけだ。
自己防衛はれっきとした戦術のひとつ。攻撃のためにそこを最大限削るのは、回避に長けた者だけにしてもらいたい。
「そういうわけで、水着の防具は不可だ」
「でもこれ守備力高いっすよ」
「何かの間違いだろう」
今、勇者パーティー一行は武器・防具屋に来ている。ところが仲間の力自慢は、水着を着て旅をしようなどと考えている。守備力はなぜか高いらしい。だが言おう、ハレンチだ。
そこをぐっと抑え、防御の大切さをとくとくと説いているというのに、女性陣は水着選びに夢中になっている。
君たちは海に行く前の女子高生か。
「身軽で動きやすいかもしれんが、せめて面積のある服にしてくれ」
目のやり場がないから・・・じゃなかった、防御のため。
「可愛いのと綺麗なのだとどっち派?」
「清楚派」
「白がいいって」
どうしてそうなる。
「いかん、白は透ける」
「水被るわけじゃないっすよ?」
しまった。女性陣の巧みな話術に誘導された。
「私たちは真面目に、敵と戦うために防具を選んでいるっす」
「ぐぬぬ・・・」
本当に守備力があるのだろうか。敵も落ち着いて見ていられないから、避けやすくて守備ができるように見えているだけではなく?
結果、購入。
そうなるのはどこかでわかっていた。男性陣諸君、これからの時代、話術の防衛力も上げたほうがいいらしい。