表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

95/202

94.  修羅場?

「あ! 誰か来た」


 エミリから逃れるように席を立ち来客モニターをチェックした。 来客者はマリだった。


 マリか~。 何しに来たんだ?  だがグッドタイミングだ。


 僕は玄関走って行きドアを開けてマリに話しかけた。



「マリ、どうした? 良くここがわかったな。 何か急用か?」


「それはな、お前に連絡が取れないからだぞ。 ぶっ倒れたんじゃないかと思って、わざわざ調べて来てやったんだぞ」


 そこへエミリが割り込んできた。



「この女、何? お兄ぃに夜這いしに来た押しかけ女房とか?」



 あああ~。 エミリそれは言っちゃダメな奴だ。 マリは女子じゃないぞ。 

 どう見れば女子に見えるんだ。 お前の目は節穴かっ!



「なんだとコラ! 俺が女に見えるってか~? ふざけんじゃね~!」



 マリがエミリに凄んだ。 だが如何(いかん)せん迫力がないのが残念だ。 



「あれっ? まさか男だって言うの?  男が夜這いに来たってこと?」


「何なんだこのガキは! お前の弟とかか?」


「ええっ? エミちゃんのどこが弟なんだぁ~。 どう見ても可愛い妹だろうがぁ~」



 どうしよう。 面白いからこのまま放置して見学するか?

 

 でも大事な友と妹の仲が悪いのは今後困る。



「まぁまぁ、マリもエミリも落ち着いて。 そんなの、どっちもどっちじゃないか」


「……」



 なぜか、マリとエミリの敵意が僕に向いた。 何てことだ、これは何とか場を収める必要がある。



「ええと、ではご紹介します。 マリ、こいつは僕の妹で吉田絵美里だ。 こんなんだけど、今年高校2年か3年生になる、なんちゃって女子高生のような奴だ。 エミリ、こいつはマリ――泊里(とまり)(かい)だ。 僕と大学の同期で、冒険者として行動を共にして稼いでいる仲間だ」


「お兄ぃ、エミちゃんは、今年3年になる確かな女子高生なの。 変な言い方やめてほしいの!」


「お、おう、そうだったか。 俺はマリだ。 ヨシに妹がいるなんて初めて知ったぜ」


「あっ、エミちゃんは、エミリです。 お兄ぃに友達がいるなんて初めて知りました。 お兄ぃが迷惑をかけてないですか? こんなお兄ぃですけど、根は、根は、……捻じれていてもまっすぐなの」



 よし、何とかなったな。 互いに不思議そうに観察して警戒しているようにも思えるがそれは許容範囲だ。



「ところでマリ、何しに来たんだ? 連絡が取れないって理由だけじゃないんだろう?」


「ああ、装備のことだ。 ミレイ達からもらった装備な、あれを叔父に見せたらレベル50位の魔物がドロップするエムレザーで出来ているんだとよ。 メーカー品で高級な装備だそうだ」


「そうなのか。 それでそれがどうしたっていうんだ?」


「俺たちがダンジョンで戦っている魔物ってレベルはどれぐらいだ? このままじゃ装備が持たない気がするぜ」


「あ、ああそうだな。 そういえば僕たちはもっと高レベルの素材も取れる環境にあるな。 素材は既に売却を依頼してしまったかもだけど……」


「ね~お兄ぃぃ、何の話してんの? ゲームの話?」


 しまった。 エミリの奴が居たんだった。 さっきの振込履歴の話は忘れてしまっているようだが、ダンジョン攻略の話を聞かれるのは良くないかもしれない。


「あ、ああ。 ちょっとした冒険者仲間の話だよ。 エミリ、ちょっと部屋の中で待っててくれないか? すぐ終わるから」


「え~。 エミちゃん退屈しちゃう」


「ほんとにちょっとだけだから、待っててくれ。 あ~、アパートの中のお菓子は何を食べてもいいからな」


 エミリの弱点は甘いお菓子とかだ。 お菓子で釣れば大抵何とかなる奴だ。



「わかった。 じゃ待ってるから早くしてよね。 早く証拠を見せてもらってフレにしてもらわないと帰れないし。 早く帰ってお兄ぃが悪さしていないことをお母さんに報告するの」


 クッ、振込履歴の話は忘れてなかったか。 まあいい、フレの件は別としても、後でサロナーズオンラインにログインして何とかしよう。



「あ、ああ。 すぐ終わるから大人しく待ってるんだぞ」


 エミリはアパートの中に引っ込んだ。 僕はマリを(うなが)してドアの外へ出て話を続けることにした。



「それで、マリはどうしたいんだ? 防具に使う素材を取りに行きたいってことか?」


「お前にしちゃ~良くわかったな。 まあそういうことだ。 ”噛みつき小石”を倒してエムレザーとか防具に使う素材を手に入れたいってこった」


「う~ん。 見ての通り、めずらしく妹が突然やってきてるし、困ったことに僕のアイテムボックスのカウンターがゼロなんだよ。 僕の防具装備は中に仕舞ったままだから、ダンジョンに入るのは止めておきたいんだ」


「アイテムボックスのカウンターがゼロだ? 相変わらず間抜けなだな、お前は。 ……そうか困ったな。 今日中に素材を渡せば2,3日後には何とかするって叔父が言ってたんだけどな。 でもこれじゃ無理そうか」


「ああ、今日僕は駄目だ。 ダンジョンに入りたくないよ。 たとえ入ったとしても攻略はちょっと控えたいんだ」


「なら、俺一人で攻略するからお前の入口で待ってもらうということでどうだ? できることなら今日中に何とかしたいんだ。 ミレイ達との話があるからな」


「ん? 話って?」


「ん? お前メールとか見てないんか?」


「ああ、僕の携帯端末もアイテムボックスの中だしね。 さっきまでずっとプライベートダンジョンの中にいたから見てないよ」


「サロナーズオンラインにもログインしなかったのか?」


「アパートに帰ってすぐにログインしたけど、お前たちがログインしてなかったらからすぐにログアウトしたんだよ。 メールチェックは忘れてたよ」


「なるほど、まあいいか。 彼女達の話ってのはな、明日遠出して6963だかの中級ダンジョンを攻略したいんだと。 それに付き合えってことで、事前に話し合いをしたいんだそうだ」


「中級ダンジョンの攻略はまだしも、なぜ遠出が必要なんだ?」


「それは、人が少ないダンジョンで、ひっそりと快適に行動したいからだと思うぞ」


「……わかった。 でもさ、新しい防具作成はどう考えても間に合わないだろ? それなら叔父さんには明日の朝素材を渡せばいいんじゃないか? 今日深夜以降にプライベートダンジョンに入って素材をゲットしてさ」


「それでもいいが、素材集めは結構時間がかかるぞ? あの”噛みつき小石”からのエムレザーのドロップ率は高くないからな」


 そこで僕は気づいてしまった。


「あっ! そういえばエムレザーなら第15層のレッドカウのをたくさん持ってるよ」


「それは、レイナさんへ渡して鑑定中だろ? 正式な結果はまだ出ていないようだが鑑定に苦労してるって聞いたぞ?」


「ええとね。 僕はさっきまでダンジョンに籠っていたんだ。 レッドカウも一回だけ殲滅させたからエムレザーなら40枚程度は持ってるんだ。 まあアイテムボックスの中なんだけどな。 24時を回ればカウンターが戻るから取り出せるからね」


「……お前がそれでいいなら、そのエムレザーを使うのも手だな。 なら一応叔父には知らせておくから、武具店へ24時頃来てくれるか?」


「ああ、わかった。 その前に妹の件を片づけなきゃだけどね。 まぁ何とかなるさ」


 素材の目途がついたマリは武具店の叔父さんへ報告しに帰って行った。 

 それにしてもこんなにすぐに中級ダンジョン攻略とか随分と急ぐものだ。 何が彼女らをそうさせるんだろう。 今の時点で焦る必要なんてないんじゃないか? 


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[気になる点] なんとなく、妹に居座られて なしくずしでパーティー参加しそうな予感
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ