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81.  過剰に過剰

 自宅に帰り少しお茶を飲んだり窓から外を眺めたしてぼーっとした時を過ごした後何かできることはないかを考えた。 大学は2、3日サボっていたら夏休みに突入していたので授業とかレポート提出とかもない。 

 するとマリから携帯端末へ連絡があった。 それは明日の予定が変更になったという話だった。 何でも、彼女等の仕事が終わらないそうで、一日遅れとなってしまったのだ。


 ふぅ、更に暇になってしまったな。 さてどうしよう。 アイテムボックスが大きくなったから何か大きなものを収納してみようかな。 でも僕の持っているものでそんな大きなものはないよな。 

 いっそ駐車されているトレーラーでも見つけて、前後反対向きにしてみるとかの悪戯でもしてみようかとも思ったが、考えて見ればその結果に驚く人がその場に来ないと面白くないし待てない。 そうして色々と悩んだ挙句、明後日攻略予定の初級ダンジョンの予習をすることに決めた。 そうさ、僕は真面目なのだ。


 ソロで入る手続きをしてから、2986ダンジョンへ入り散歩を始めた。 今はVRヘルメットを装着しているので僕が誰かを知られることはない。 つまりある程度好き勝手できるのだ。 僕は悠々とダンジョンの中を進んでいった。 今日はあくまでも見学目的なのでスライムやオークなど魔物との戦闘は回避している。 やがてだんだん人と会う回数も減って行き、気づいたときには大分奥へと入り込んでいた。 そして帰ろうとしてハタと気づいた。


 ヤバイ、道が分からない。 覚えてないし地図もない。


 気分良く適当に分岐を選んで歩いて来たので、完全に迷ってしまった。 まぁそれでも大丈夫、僕の移動スピードはかなりのものだ。 ならば適当に走っていればそのうち入口付近に辿り着くだろう。 


 僕はランニングを始めた。 途中ノミネズミとかヤスリカマリキに遭遇したが回避するのも面倒なのでそのまま体当たりを食らわせてやって倒してしまった。 でも貧乏性の僕はエネルギー石だけはつい拾ってしまったので、結局時間的にはロスしていたのは秘密だ。 


 そしてダンジョンの中を駆け回ること数時間。 漸く人と会うことができた。 道を聞こうとしたが様子が変だ。 僕は駆け寄って声を掛けてみた。


「あの~。 出口ってどっち方向でしょう?」


「き、君。 君はソロか? ここは危ないから逃げた方がいい」


「どうしたんですか?」


「ああ、我々はヤスリカマキリを狩っていたんだが、イレギュラースポーンで、上位のヤスリカマキリが現れたんだよ」


「そうですか、それで?」


「だから逃げたほうがいい」


「ええと、その上位のヤスリカマキリは何処に?」


「あっちだ。 だから君はこっちへ逃げるのがいいと思う」


「分かりました」


 ちょっと上位のヤスリカマキリと遊んでやるかな~。 僕は軽い気持ちでそう思って、アッチの方へと向かった。 少し離れたところでさっきの人のHPが減っていたのでHP回復魔法を使ってあげた。


 少し進むと上位のヤスリカマキリと数人の前衛が戦っている場面に出くわした。 僕の見立てでは人の方がちょっと劣勢に見えたが、さてどうしよう。

 助けることは確定なのだが、その倒し方が問題だ。 見え無いぐらい素早く動いて倒すか、それとも……。


 僕は先程拾ったエネルギー石を物陰から投げて見ることにした。 エネルギー石は魔物の装甲を貫くには十分な硬さがあるが、投げてぶつけてもその比重が小さいので威力は限定的だ。 だが僕には奴の弱点が見えている。 そこへ石をぶち込めば倒せるかもしれないのだ。 

 そう思って全力投球で投げてみた。 結果エネルギー石は見事に弱点を突くことができて、ソイツは消え去った。


「あれっ? 魔物が消えた!?」


 戦っていた人の驚き声が聞こえたが、かまわず僕はその場から逃げるように立ち去った。

 そして気づいてしまった。


 あっ! しまった。 折角出口の方向を教えてもらったのにまた適当に走っちゃった~。



 またもやミスした僕はマラソンを続けるしかなかった。 結局焦りを感じながらダンジョンの中を夜通し走り続け、出口らしき入口を見つけたときは既に朝方になってしまっていた。

途中ダンジョン管理センターに立ち寄った時に、”魔物消え去り現象”とか”高速走り亡霊冒険者”とかの話が聞こえて来たが、僕には気にする気力は残っていなかった。



 こりゃ駄目だ。 次は地図を買って慎重に行動しよう。 



 僕はそう思って家に帰り倒れ込むように寝たのだった。 


 夕方になってから目が覚めた。 そして僕は気づいてしまった。 


 ああっ! 昼食を食べ忘れたっ!


 こればかりは既に取り返せないので、夕食を多めに取り、何かできないかを再び考えた末、迷う可能性がないプライベートダンジョンへ潜ることに決めた。



 まずポータブル強化ガラスをアイテムボックスから出そうとしたのだが、部屋の天井につっかえて中々だせない。 色々と試行錯誤した結果、何とか斜めに立てかけられる場所を見つけてその強化ガラスを出した。 僕の部屋の中なら強化ガラスを破壊しに来るような不届き者はやって来ないはずだ。


 やはりダンジョンの中は広い。 僕の狭い部屋とは段違いだ。 ミレイさん達がここに家具とかを持ち込みたくなる気持ちも分かる。


 そこで僕は考えた。 僕の部屋の家具とかも全部この中へ入れてしまおうか? ゲートによる電波遮断効果によって無線LANは繋がらなくなるが、光ファイバーケーブルなら中へ引き込むことができる。 そしてダンジョンの中に無線ルーターを設置すれば今までと同じ生活が出来る。


 そう考えた僕はすぐに行動に移した。 ダンジョンの外へ出てから、ソファー、テーブル、椅子、ベッド、VRヘッドセット、冷蔵庫、衣装ケース、金庫、色々な道具が入った秘密のおもちゃ箱等をアイテムボックスへ収納した。 お風呂やトイレは部屋に備え付けなので持ち込めない。 

 そしてゲートを作りプライベートダンジョン第一区画の右隅に色々と取り出して設置していった。 途中一旦外へでて光ケーブルの端を持ってもう一度ダンジョンへ潜り、入口付近に置いた無線LANルーターへ接続してVRヘッドセットや携帯端末が使えることも確認しておいた。


 よし、これでダンジョンで迷っても安全に宿泊できるぞ。 ならプライベートダンジョンで狩りを始めよう。


 装備を整えてから攻略を開始した。 今回は基本的に”噛み付き石”も”噛み付き岩”も無視だ。 自転車も今回は使わない。 走った方が早いことが分かっているからだ。 途中で”噛み付き大岩”だけは討伐してスキルオーブと緑色の剣を入手した。 これで緑色の剣は全部で3本となった。 

 そして第14区画も素通りして第15区画へ入った。 例の如く”絡まれ釣り”をして第16区画側の壁にレッドカウの群れをダンジョンの壁へ激突させてから殲滅させた。 得られたスキルオーブは3つ。 そしてエムレザーは41枚で武器防具なしだった。


 時間が有ったので僕は更に第15区画を2回周回し、その日はプライベートダンジョンに設置したベッドで休んだ。 ちなみに使わないで保管しているスキルオーブの数は18個になった。


 翌朝起床した僕は、慎重に光ファイバーケーブルをルーターから外して外へ出た。 そしてシャワーを浴びて食事を取ってから考えた。

 スキルオーブもこれだけあれば、流石に勿体ないとは言えないだろう。 8個だけ使ってみよう。


 結果、僕のステータスは以下のようになった



 LV 95


 HP   2000 + 140%

 MP   2000

 STR  2000 + 300%

 VIT  2000 + 400%

 AGI  2000 + 180%

 DEX  2000 + 200%

 INT  2000

 MND  2000


 スキル:  体力7(ON)、筋力15(ON)、頑健20(ON)、俊敏9(ON)、器用10(ON)、回復魔法3(50/50)、アイテムボックス12 (10/10)、看破6

 ユニークスキル:  急所突き、ダンジョン生成、ダンジョン内探知



 念願の器用を覚えてDEXの底上げができた。 アイテムボックスは重複進化させてしまったので酷い状況だ。 容量的にはザックリと一辺が460m程度の立方体相当だ。 本当に本当にマリにはバレてはいけない。 そして不思議だったのは頑健が出ずに、使えないスキルオーブがあったことだ。 その使えないスキルオーブは区別して保管しておくことにした。


 準備に過剰に過剰を重ねたと思うが、これで今日の初級ダンジョン攻略の最後の一押しができたと思った。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 面白いですよ?。 [一言] 3食きっちり食べないと死ぬの? つまんないネタ何回も使っていると うんざり感出てきますのでほどほどにするのが 良いかも?。
[一言] 出現はランダムだが中身は確定してるなのか
[良い点] 世界の謎がまた1つ明らかになった事。 いつも面白い所。 [一言] 更新ありがとうございます。
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