表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

76/202

75.  爪の先

 僕もマリ達も魔物素材をアイテムボックスから取り出して床に置いてみた。

 結構な量があり山盛り状態だ。 ところどころ普通とは違う色合いの素材が混ざっているが、それらは高品質素材だろうか。


「で? レイナさん、どうしますこれ?」


「ヨシ君が個人的に取って来た分は、ヨシ君自身で売るか自分で使うために残しておくかを考えてもらうのが良いと思うわ」


「で、パーティで狩った時のドロップ素材は?」


「そうね、”噛み付き石”のドロップ品は迷うけれど、”噛みつき岩”や”噛みつき大岩”のドロップ品は超高級素材だから売らない方が良いと思います。 ”噛み付き小石”の素材はかなり高品質の部類だと思うけれど、沢山あるからお金に換えた方が単純になって便利だと思うわ。 もちろん”噛みつき石”系統以外の雑魚の素材は全部売ることになるわね」


「そうですよね。 単純なのがいいですよね。 僕もそうしたいです」


「ええと、ヨシ君も売るのは精々”噛み付き石”のドロップ品までにとどめた方が良いわよ? もちろん岩や大岩のドロップ品は売らないで取っておいて、自分の装備用に確保しておくべきね」


「ああ、成程そうします。 でも、どれがどれだか覚えてないんですけど……」


「……」


「それは困ったわね。 ならちょっと色味の異なる素材は鑑定に出すということでどうかしら? 耐久試験とかの費用はかかるけれど、それ以上の利益は見込めるはずだし、自分用の装備にどれを使ってもらうかを決めることもできますからね」


「わかりました。 レイナさん、それでお願いします」


「えっ? ヨシ君の素材も私にお任せするの? それは……。 わかったわ、これもお父さんの部下の人に丸投げしてしまいましょう。 ミレイもカナもマリもそれでいいわね?」


「おう、任せたぜ。 叔父の武具店へ持ち込む手もあるがな、この量だと手に余るはずだぜ」

「私もレイナの方針でいいと思う」

「もちろんいいわ」


「じゃあ決まりね。 ちょっと待ってね連絡しておくから」


 レイナさんは携帯端末を操作した。 査定と買い取りの依頼を出したのだろう。 信用できる人に丸投げできるのは楽ができて良い。


「オッケー、それでは、早速今日の目的の”噛み付き小石”を倒しにいきましょう」


 レイナさんも大分積極的になったものだ。 まあ僕としてはそれで満足だ。 さてプライベートダンジョンの攻略を始めるとしよう。



 試しに例のポータブル強化ガラスを使ってみようかな。 そう思って僕は部屋の強化ガラスを一旦アイテムボックスに収納して、すぐに取り出して部屋の壁面に立てかけた。 アイテムボックスを経由すれば重量物でも動かすのは簡単だ。 強化ガラスのエッジは金属製のフレームで囲われていて安全だし強化ガラス自体も頑丈なので簡単には壊れない。 これが普通のガラス製だったなら、倒れたら割れて悲惨なことになりそうな気がした。 そして僕は気づいてしまった。


「あの~。 これでプライベートダンジョンを作ったとして、その中に入っている時に魔物とかに強化ガラスを破壊されたらどうなるんでしょ?」


「……」


「……」



「ええと、それは想定外だわね」


「ミレイさん、そんなんでいいんですか? 危なくないですかこれ」


「ミレイ、実験してみたらどうかしら。 プライベートダンジョンを出している状態で強化ガラスを壊してみたらどうなるかを」


「そうよね、ヨシ君が中へ入ったところで、壊してみ……、 いやそれはさすがに危険よね。 ええと腕を片方入れた状態でやってみるとか?」


「ミレイさん、それで壊れた場合、僕の腕はどうなるの?」


「ええと、大丈夫だとは思うけれど、万一切断されたら私のスキルで治すとか? でもダンジョンの中でしか治療スキルは使えないのよね。 それに切断されて、腕が欠損になってしまった場合に治せる自信がないわ。 それも試したいところだけれど」


「み、ミレイさん。 怖い事言わないでください。 せめて指先ぐらいで、……いや爪の先でいいんじゃないかな」


「それが可能ならそうすべきね。 ……でも実験には後一点だけ問題があるわね」


「な、なんですか怖いな~」


「こんな厚さの強化ガラスなんて私たちには壊せないかもしれないわ。 ダンジョンの中であればステータスが上がるからハンマーで叩いて壊せるかもだけど。 元々壊せないなら実験にはならないわ」


「成程ダンジョンの中で実験することになるのか~。 今はこのポータブル強化ガラスは使わない方がいいよね。 じゃ普段通りにこのコンクリートの壁にプライベートダンジョンを作りますよ?」


「おい、地震が来てこの建物が倒壊したらどうなるんだ?」


「マリちゃん。 そこまでは考えなくていいと思うわ。 このビルは大規模地震でも簡単には倒壊しないはずだし、倒壊したとしたらどのみちプライベートダンジョンの中に居なくても助からないわ」


「お、おお。 それはそうだな」


「じゃ入りますか~」


 そしてプライベートダンジョンを発生させて中へ入って行った。 途中で見つけた”噛み付き石”や”噛み付き岩”は僕が倒す担当で、マリ達は露払いのために先行することにしていた。 そして第14区画、――”噛み付き小石”ゾーンへと辿(たどり)りついた。


 僕は”噛み付き小石”に手を出さないことに決めていた。 マリ達に倒してもらい修練を積んでもらうためだ。 ダンジョン内で強くなるにはステータスが重要だが、それだけが強さの全てではない。 ステータスの値は、自分が元々持っている力をどの位増幅するかを示す値なのだ。 

 例えばSTRが114だったとすると、その人がダンジョンの外で持っている筋力がダンジョン内では1.14倍に増強されるということだ。 つまりステータス値が同じでも素(ダンジョンの外)の実力を上げれば上げるほど、効果は大きくなるのだ。 技についてもDEXとかAGIが関係はするのだが、素の能力があってこそだ。 特に僕達の技は完全に素人だから修練は重要だ。


 魔物に手を出さないことに決めた僕は暇になった。 暇つぶしに何かできないかを考えた末に、第15区画の様子でもみてこようと思いついた。 今のステータスならきっと危険はないはずだ。 ただしセーフティーゾーンより奥の魔物は急に強くなるとのことなので注意は必要だ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ