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74.  ポータブル

 うぁっ、できちゃったよこれ! ということはプライベートダンジョンがポータブルになるということだな。 

 だが待てよ、これって重いんじゃないか? 僕とマリの二人がかりで漸く動かせるレベルの重さじゃないだろうか。 



「あの、これ出来ちゃいましたけど、どうしたら?」


 何やら女子達の目が輝いていた。 いったいどうしたっていうんだ。


「ヨシ君。 これは凄いことよ? この強化ガラスを持ち運べは何処でもダンジョンがだせるのよ」


「それは分かりますよ。 でもこのガラス板って重いし持ち運ぶのは困難……」



 そこで僕は気づいてしまった。


 アイテムボックスか! 


 アイテムボックスを使えば、こんな重いのも持ち運べるし好きなところに設置できる。 僕はアホか! やばい、気づかなかったことを煙に巻かねば。



「持ち運ぶのは困難、こんなん、こんなん? ……こんなんはマリの仕事だ!」


 困ったときのマリ頼みだ。 悪いけど僕に協力してくれ。



「ヨシ、お前はどうしても俺をポーターにしたいようだな。 だけどな、彼女らも持ち運べるサイズのアイテムボックスを持ってるんだぞ?」



 ぐっ、マリもアイテムボックスを使うことを前提に考えてたのか。 くっそ~面白くないぞ。 面白くな~い。 少し抵抗してやろう。



「で、でもマリ、彼女達のアイテムボックスはマリのより大分小さいぞ、 こんな一辺が2.5メートル程もあるガラス板なんて入らないだろ?」


「何言ってんだヨシ。 アイテムボックスは異空間みたいなもんだし、入れるための制限は体積の合計で決まるんだぞ? この強化ガラスは縦横は大きくても厚みはないから体積的には小さいぜ。 十分彼女らでも持ち運べるはずだ」


 ええ? マリがアイテムボックスのことを勉強していた? これは想定外だ。 僕の知らない事実を知っていたのか?



「あ、ああそうだったな。 十分持ち運べるな。 だが一番容量の大きなアイテムボックス持ちはマリだ。 だからマリが運ぶのがいいんだよ」



 もちろん現時点では既に僕のアイテムボックスの方が容量が大きい。 だけどそれはマリ達が知らないことだ。



「ヨシ君。 この強化ガラスは6枚あるから、皆で一枚ずつ持つのがいいと思うわよ。 壊れたら予備が必要だからね」


「あ、ああなるほどね。 でも6枚ということは1枚余るよね。 それは当然マリが持つんだよね」


「ヨシ君。 貴方のアイテムボックスは小さいはずだけど、プライベートダンジョンが出せるのは貴方だけなのよ? 貴方が一人の時に壊れたらどうするの? 私たちが持つのは予備扱いよ。 ポータブルダンジョンはヨシ君がいて初めて成り立つのよ」



 ぐっ、それはそうだ。 僕は単独行動することができるし、その場合の予備は僕が持つべきだ。 こ、これは腑に落ちないがこの辺で抵抗を止めるべきか? まあプライベートダンジョンを持ち運べれば、つまりポータブルダンジョンにできれば、色々と山に一人で取り残されても中に避難できるしな。 

 ベッドを持ち込めば宿泊だってできるじゃないか。  ん? 宿泊? ってまさか。 まさか彼女達の目的は……。


「でもよかった~。 これで昨日一生懸命インテリア選びをした甲斐があったわね。 さてとまとめて発注してしまうわね。 ポチっと」



 あああああ、僕のプライベートダンジョンが彼女達に侵されてしまう~。 彼女達に占領されてしまう~。 


 って……あれっ? いやしかし、よく考えたら僕がいないとそこへ入れないよね。 つまり彼女達は僕と一緒じゃないと宿泊できないわけだ。 つまり、……これは悪くないかもしれない。 マリはともかく野郎と二人っきりで籠るのは好ましくないが、女子とだったら悪くない。 僕はちょっとニヤけてしまった。



「ヨシ君。 何を考えているの? もちろん今注文したのは簡易的な休息所に設置する家具とかよ? 本格的なのはちょっと今の私たちの財力じゃ無理ね。 だから」


「だから?」


「プライベートダンジョンで”噛み付き小石”を倒しまくって稼ぎましょう」



 それにしても彼女の言う”本格的”というのが何か分からないが、大分高価なインテリアなのだろうか? 今の財力で無理ってどういうことだ? 豪邸を建築するでもなかろうに。 それにプライベートダンジョンの中は基本的に屋内と一緒で雨風も無く温度も湿度も一定に保たれている。 さらにお肌に悪い紫外線とかもない。 個室を作るにしてもパーティション程度で十分だから、そんなに費用がかかるとも思えない。


 う~ん。 贅沢な個室かな。 ん? 個室? ルーム? 

 ま、まさか 2D版VRルームか! 

 彼女達は、僕のプライベートダンジョンの中でVIPサロナーズオンラインでゲームとかやるつもりなのか! 


 何てゲーム好きな女子達なんだ。

 こ、これは言っておかねばならない。



「ゲームばかりしてないで、少しは勉強しなさいっ!!」


「……」



「ヨシ、いきなり何を言い出すんだ。 お前にとって”噛み付き小石”を倒すことはゲームなのか? それに勉強ってなんだよ」



「いや、ほら、彼女達もそろそろ高校を卒業だろ? 大学へ行くなら受験勉強が必要だろう」


 今は夏なのだが、新学年の始まりは十年近く前から9月へと変更されている。 従って今は高校生は受験で忙しいはずなのだ。 彼女達は学校へ行かなくてよいのだろうか。


「あら、私たちのことを心配してくださるの? 大丈夫よ、私たちの高校は推薦で大学へ入学が決まっているの。 それに大学の単位もすでに2年分取っているから、余裕なのよ?」


「えええっ!!」

 レイナさんはクラっときた。 カナさんもクラっときた。



 う、噂には聞いていたが、凄い秀才とか天才を潰さないためにそういう制度が導入されていたことは知っていたが、まさか彼女らがそれほど優秀とは思わなかった。 これはさすがに信じられない。 レイナさんはともかく、カナさんもだなんて。



「えっと、まさかカナさんも?」


「なに? 私のことを何だと思っていたの? 小さいころから厳しい教育を受けて来たのよ。 レイナに巻き込まれてね」


「カナ、私が巻き込んだわけじゃないわ。 私が教育を受けさせられているところにミレイとカナが入って来たんじゃない。 これは親の陰謀なのよ。 私のせいじゃないわ」


 な、なるほど。 地頭がいいところへ英才教育を(ほどこ)されたってわけか。 それなら理解できるが、それにしてもこんなことが有っていいんだろうか。 もしかして来年度には学年的に彼女らは僕と同じになるのか? このペースだと先に追い越されることもあるってことか。 これはヤバイかもしれない。



「え、ええと分かりました。 なら勉強は大丈夫ですね。 でもですね、皆さんはここへ来た当初の目的を忘れてないですか? 魔物素材を吟味するはずだったんじゃ?」


「ああああ、そうだったわ。 忘れてたわ~。 ヨシ君ごめんなさいね」


「そうですよ。 ちゃんとやることをやってから狩りにいきましょうね」


「本当にごめんなさい」



 まあ、ちょっと違う形になってしまったが、少しだけ留飲を下げることができた気がした。 何となく収支的には負けている気もするが、今回はこれで良しとしよう。

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[気になる点] 主人公の「ええっ」とクラっと来たがクド過ぎる
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