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7. ミミズク

 四回目の模擬戦ともなると、剣の重さと体の使い方に慣れて来たので、打ち合い自体はCさんと結構いい勝負になってきていると感じた。 それでも今はCさんの方が少しだけ上手(うわて)の感はある。 Cさんの身のこなしが尋常でないくらい早いのだ。 ゲームの中でもこれだけの動きをする人はめったにいないと思う。


 そして僕は唐突に(ひらめ)いてしまった。


「ああっ!! そうだったのか!!!」


 僕は閃いて愕然(がくぜん)としてしまった。

 そのとたんにCさんの動きが止まったので、先程のようについ反射的に突きを入れてしまった。 そしてまた、いとも簡単にCさんのHPをゼロにしてしまったのだった。


「痛った~い。どうしてよ!!」


「ええっ!! 痛かったですか? 貴方があからさまに(すき)を見せたので、僕は反射的に突きを入れただけだよ。 僕のせいじゃない」


「そうじゃないわ!! 痛いという話じゃなくて、どうしていきなり叫んだかって聞いてるの」


「そうなのか、また痛かったらどうしようと思ったけど、痛く無くてよかったね」


「いえ、痛かったわよ。 なぜ痛いのよ」


「それは、さっき分からないと答えましたけど、……もう一度実験してみます?」


「わかったわ。 さっきと同じくらいで試して、って問題はそこじゃないわ!!」


「ええっ? なぜ痛くなったのか分からなくてもいいんですか?」


「そうじゃないって言ってるでしょ! なぜいきなり叫んだのかを聞いてるの!!」



 そんなCさんの大声を聞きつけて教官がやってきた。 言い合いを続けてもよかったのだが、面倒なのは嫌なのでこれは猫に小判、……いや渡りに船ってところだ。



「Cさん、急に大声を出してどうしたんだい。 何か問題があったのかい?」



 Cさんは、きまりが悪るそうにして無言のままだ。 それならばと、僕が教官に答えてあげた。



「えっとですね、彼女はなぜ叫んだかを聞きたいそうです」


「あれっ? 叫んだのはCさんなのに、Cさんはなぜ叫んだのか聞きたいということなのかい?」


「そうなんです、わけが分からないですよね」



 これにはCさんが慌てた。 まあ分からなくもない。 この場を治めるためにあえていやらしい作戦を取ってみたのだ。



「ちょっ、ちょっと待って! おとなしく聞いてれば、なんで私が変人扱いされなきゃいけないのよ。 私は何故あなたが急に叫んだかを聞きたいって言ってるのよ!」


「まあ、まあ、Cさん落ち着いてください。 私には分からなかったんだが、D君は叫んだのかい?」


「すみません。 記憶にございません」


「こ、この卑怯者! 試合中にいきなり、“そうだったのか!!” と言って叫んだじゃない。 あれでビックリして貴方の突きを()け損なったのよ」


「ああ、その件か。 叫んだ覚えはないけれど、なるほど、それはね(ひらめ)いたからなんです」


「いったい何を閃いたっていうのよ。 私を驚かして勝負に勝とうとしたんじゃないの?」


「勝負に勝ったのは事実だけど、閃いたのも事実でよ」


「勝ったって、……あれっ? HPがゼロになってる。 まさか私って負けたの?」


「そうだよ~。 これで僕の二勝二敗だね。 ふっふっふ」


「くっ、まさかそんな、って誤魔化されないわ。 何を閃いたのよ。 言ってごらんなさい!」


「閃いたことですか、……あれっ? 何を閃いたんだっけ。 ああ、そうだ。わかった。 “ミミズク”だ! って閃いたんだ」


「ん? ミミズク? 何よそれ!」


「え? ミミズクを知らないですか? ほら、フクロウの一種の……」


「そんなこと分かってるわよ。 なんで“ミミズク”って閃いたのかを聞いてるんです!」


「何でって、ほら、昨日のお好み焼きチャンネルTVのお昼番組で、夜の動物特集をしてたじゃないか」


「お好み焼きチャンネルTV? が、なんだか知らないけど、それがどうしたのよ」


「その番組の最後のプレゼント応募企画で、“夜のフクロウで耳があるのは何?”っていうクイズが出たんだ。 それがさっき “ミミズク”だってわかったんだよ」


「ああ、なるほど。 わかったわ」


「よかった、やっと分かってもらえたようだね」


「……」


「いや、ちがうわ。 絶対にちがう!」


「ええっ? “ミミズク”が間違いだって言うの?」


「違うわっ!! なぜ試合中にそんなことを閃いて叫んだのか聞きたいのよ!」


「……そんなこと言われましても、気づいたものは仕方無いじゃないよね。 誰だって閃くことは良くあることだと思うけど?」


「……い、いや。 分かったわ。 もういい、これ以上は疲れるだけだわ」


「それは良かったです」


「クッ」


「……」


「どうやら、問題は解決したようだね。 “痛い”っていう声も聞こえた気がしたから、ちょっと心配だったんだよ」


「教官。 この人変なんです。 負けるたびに“痛い”って文句言うんです」


「ち、ちがうわ。 本当に痛かったんです。 ビックリするぐらいで、針をさされたような感じの……」


「ほう、そうだったんですか。 それは、クリティカルっていう稀に起こる現象かもしれないね。 主に格下の相手に出やすいとされていて、一撃でかなりのダメージを与えるんだ」


「教官!! 私がこの変態男子よりも格下って言うんですかっ?」


「い、いやそんなことは言ってないよ。 主に格下ということで、めったにない事だが格上にもクリティカルが発生することがあるらしいね」


「そんな、めったにないことが、二戦連続で起こるなんてことがあるんですか?」


「格上に二戦連続ですか……。 あり得ない位に稀に起り得るかもしれないですね」


「……」


「原因が分かってよかったです。 教官ありがとうございました。 ふっふっふ、格下か~」


「あ、あなた……」


「さて、みんな模擬戦も終わったようだし、時間も押しているから、次の魔物討伐シミュレーションに移ることにします」



 教官がそう発言すると、僕らに見えていたVRの道場はダンジョンの風景へと変わった。

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[気になる点] 主人公がただひたすらムカつくタイプ、ここまで頭が可笑しい人間を書けるのは身近にモデルが居るのか? 一緒にダンジョンには潜りたくない、自分の奇妙な行動ゆえの相手のミスを相手の失敗として周…
[一言] 漫才のネタみたいだ 漫才小説ですか?。
[一言] 地の文がほぼ無く会話文のみで進められていて、非常に読みにくい
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