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64.  使ってやるぜ

 マリ達の攻撃が始まった。 4人で四方から取り囲み滅多打ちだ。 しかし全く急所に攻撃が届いていないように僕には見えた。 そうしているうちにマリの剣が折れてしまった。


 ガッキーン。


 マリは反動で倒れてしまった。 う~ん、これって武器がボロすぎた? 

 

 僕が見えている急所は、表面の一点というよりは少し奥にあるような感じだ。 言い表すのは難しいが、何となく3次元的な(まと)? いや、そういう感じでもなく超次元的な何かのなんじゃないだろうか。 僕の見立てでは、マリ達の剣の攻撃はそこまで届く能力がないように感じられたのだ。 これはもっと高品質な武器を使ってもらった方がよいのではないか? そして僕はマリに提案してみた。


「マリ、剣が折れちゃったね。 その剣は安物だったのか? ダンジョン産の武器を破壊するって凄いな!」


「俺のダンジョン産の愛剣が折れるとはな。 15万円もした中古品だったんだが、折れるなんて思いもしなかったぜ。 こりゃ参ったな」


「15万円か~。 結構痛手だな~。 予備は持って来てないでしょ? 何なら僕の在庫の剣を使ってみる?」


「ああ、予備なんて持ってないぜ。 じゃあ貸してくれ」


 僕はアイテムボックスに保管してあるドロップ品のリストを見て、赤い剣を取り出した。



「じゃこれをどうぞ。 たぶん”噛み付き岩”からのドロップ品だから簡単には壊れないと思うよ」   


「真っ赤な剣か。 もっとこう日本刀みたいな恰好良い金属の剣のは無いか?」


「ええと、刀と剣は違うと思うけど、僕の持っている剣で金属光沢のは全てレベルの低い魔物からドロップしたものだよ? ”噛み付き石や岩”のような比較的レベルが高そうな魔物からは、だいたい金属っぽくない色の武器をドロップしてたよ」


「ちょっと横から失礼するね。 マリちゃん、15万円という価格から考えると、折れた剣はたぶんゴブリンとかオークあたりのドロップ品じゃないかしら。 真っ赤な剣は見たこと無いけれど、もしかしたら1千万円クラスの品なんじゃないかな。 あの”噛み付き石”からのドロップ品なんだからね」


「な、なんだよ、その超価格は! 壊したら洒落にならねーぞ。 おれは普通の剣を使うぞ」


「いや、マリ。 僕はツッツキ君と、この緑色の剣を愛用しているから、その真っ赤な剣は余り物なんだ。 売る予定も無いし、買い手もそうそう見つからないだろうから有効に使ってもらった方が僕らにとって利益になるんじゃないかな。 それに壊せるもんなら壊してみせてくれ」


 マリは暫く戸惑っていたのだが、やっと赤い剣を受け取ってくれた。 マリは受けとった剣の色をしきりに気にしているしょうだったが、やがてエネルギー石で剣をコスり始めた。


「何やってんだよ。エネルギー石で剣をコスるなんて、何のおまじないなんだ?」

 

「普通の石じゃ()ぐことはできないんだぞ。 もしかしてこの赤色はメッキみたいなもんじゃないかと思ってやってみたが無理だったな」


「マリちゃん、ダンジョン武器を砥ぐなんてできるの?」


「……」


 どうやらマリは赤色が嫌だったようだ。 それよりもエネルギー石でダンジョン武器を砥ぐなんてマリのオリジナル発想か? でもミレイさん達も知らないとなると、砥ぐなんてできないし単に汚れを落とす意味しかないんじゃないかな。


 しばらくしてマリ達の攻撃が再開した。 マリの攻撃は、最初は恐る恐るだったのだが、次第に勢いづいていった。 


うん、マリの攻撃は”噛み付き小石”の急所付近にまで達する能力がありそうだ。 これなら倒すのも時間の問題じゃないかな。


 そして15分程経過した時に、マリの攻撃によって”噛み付き小石”はエネルギー石とオーブ2つ、それに何とスキルオーブまでドロップしたのだった。


「た、倒せた~!」


 マリは歓声を上げた。 女子達も喜んでいるし、僕も嬉しい。

 やはり世間でも言われているように武器の品質は攻撃力にも関わっているらしい。 それにしても小石からスキルオーブがドロップしたのは初めてだろう。 マリはどれだけ運の良いやつなんだ。


「オーブはパーティ共有として、スキルオーブはどうするの? というか”噛みつき小石”でもスキルオーブが出るのね」


「スキルオーブは、そうね、止めを刺したマリちゃんが使うべきだと思うわ」


「僕もそれに賛成するよ」


「私もそれでいいと思う」


「俺は、……う~ん、使わないで売る!」


「……」


「マリ、僕のような庶民にはその気持ちは良~くわかるよ。 だけどエネルギー石が売れれば、お金の心配はしなくて良くなるんだよ?」


「そうよ、使いなさいよね。 スキルオーブなんて市場にあまり出回らないんだから」


「いや、しかしだな」


「グダグダ言ってないで、使え!!」



 カナさんが怒った。 ポッチャリ系可愛い系のカナさんが怒っても迫力はない。



「ええと、スキルオーブは使った方がいいわよ? お金の問題なら、パーティ資金で何とかなるでしょ? 一度に大金を得ても(ろく)なことにならないと思うわ」


 清楚なお嬢様系のレイナさんがお(しと)やかにマリに使うよう促した。


「私も使った方が良いと思う。 今使わないと後で絶対に後悔するわよ? 私たちの大儀のためには必要なことなのよ。 使え!」


 ミレイさんが命令した。 本当に女王様らしい振る舞いだ。



「おいおい、マリ。 これだけ皆から言われてもウジウジしてるなんて、男らしくないぞ!」


 僕はマリに必殺の言葉を投げかけた。 ”男らしくない”という言葉はマリの弱点なのだ。 マリはなぜか”男らしい”とか”女々(めめ)しい”とか言ったジェンダー的な表現を含む言葉に比較的強く反応する傾向がある。 ゲームでは女性アバターを使っている癖に実に変な奴である。


「お、おう。 なら使ってやるぜ。 もう如何(どう)とでもなってしまえ!」


 やっとマリはスキルオーブを使ってくれた。

 さて何のスキルを取得したのだろうか。 これがまたアイテムボックスだったら面白いのだが。

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