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59.  ちゃんと考えてます?

 マリが次のモブを釣ってくる合間にカナさんからクラン会話が飛んできた。


「ちょっとあんた。 真面目にやりなさい。 ダメージが全く出てないじゃないの。 戦士なんだから一番のダメージソースにならないとおかしいわよ?」


「す、すみません。 なんか調子悪くて……」


「カナよ。 これからが試練の時なのだ。 覚悟してかかれよ?」


「何? まさか、こういう事? 効率が悪いパーティで地獄を味わえと? ヨシはヘタレなの?」


「良くわかってるじゃねーか。 そういうことだ。 効率を上げたけりゃお前も頑張らねーとな」


「いや、しかしおかしいわよ。 ヨシ君ってリアルであれだけ強いじゃない。 <急所突き>とかあるでしょ? あれってゲームじゃ使えないの?」


「無理言ってるんじゃねーよ。 リアルの話がゲームで有効な訳が、……って、アレッ?  そういえばヨシ、お前<急所突き>ってリアルで使えるのが分かったのはミレイさんに突きを入れた時だよな? ってことはリアルでない所で使えたわけだよな?」


 不味い、普段は鈍いマリが今は鋭くなっている。 も、もしかして盗賊をやっているとジョブ特性で感性まで影響するのか? 何とか誤魔化す方法はないだろうか。 僕がゲームでも<急所突き>が使えることがバレてしまえば、僕の隠しているもう一つのアカウントの事まで知られてしまうかもしれない。 それだけは絶対避けなくてはならない。 そうしないとまた酷い目に合ってしまうかもしれないのだ。 自業自得と言えばそれまでなのだが、僕はやっと更生したのだ。


 僕は何とか誤魔化そうと真剣に考えを巡らせた。



「あ! そうだ!」


「なんだよ! ビックリするじゃねーか」


「今は狩りに集中しないと、不味いでしょ。 ほら無駄口叩いてないで、早く釣って来い」


「お、おう」


 マリは新しいモブを釣りに出て行った。


 よし、一旦マリについては処理できた。 あとはカナさんだけだ。  さてどうしよう……。



「ねえ、ヨシ君。 本当のところどうなの?」


「え、ええとですね。 今使っている武器でクリティカルを発生させるのはちょっと無理かな?」


 なんとかクリティカル発生を武器のせいにしようと試みた。



「ってことは、武器さえ何とかなれば、クリティカルを発生させることができるってわけね?」



 しまった。 これは墓穴を掘ってしまったかもしれない。 

 不味い、不味いぞこれは。 考えろ、考えろ、何とか誤魔化すんだ。


「……」



 マリが釣って来たモブ相手に戦闘が始まっている。 それなのにカナさんの追及は止まらない。



「なんで黙ってるの答えなさいよ」


「ええと、その。 スライムです」


「……スライムって、何なの」


「あれっ? カナさんともあろう者がスライムを知らないなんて、ちょっと意外です」


「ば、ばかぁ。 ふざけるのも大概にしないさい。 怒るわよ!」


「もう怒ってるように見えるんですけど……」


「い、いや。 落ち着くのよ私。 コイツの罠に(はま)っては駄目。 ……で? <急所突き> とスライムの関係は何なの?」



 クッ、カナさんもやるじゃないか。 ちょっとしたボケじゃ煙に巻けないな。

 それでも僕の敵じゃないかもだけどな!



「スライムに突きを入れたらクリティカルで倒せたんですよ」


「スライムに突きって。 常識よね? それにそんな低レベルのモブじゃクリティカルが発生してもおかしくないし、そもそもクリティカルじゃなくても一突きで倒せるわよね」


「あ、ああ。 スライムっていっても、あの集まって大きくなる集合スライムのことです。 あれを一撃で倒せたんですよ。 まあ集合スライムだけの限定ですけどね」



 どうだ! これで言い訳は完璧じゃないか?  さてカナさんはどうでる。



「なるほど、なるほど。 理屈は通っているようにも見えるわね。 …………でもさっき貴方はそれを武器のせいにしたような気がするけど?」



 ぐぬぬぅ。 カナさん、中々しぶとい。 カナさんのくせに、これはやっかいな。



「そ、それは、……カナさんの聞き間違いでは?」


「……」




 カナさんは押し黙ってしまった。 

 卑怯だけど、僕は言った言わないの水掛け論にしてしまったのだ。 すまんカナさん。 僕はどうしても真実を話したくなかったんだ。 カナさんが大人なら僕の事情を察してこれ以上追及してこないはずだ。 あくまでも大人ならの話だが。



 それにしても先ほどからモブのHPは殆ど減っていない。 僕はともかくカナさんの魔法が全く着弾していないのだ。



「おら! おめえら、無駄口叩いてねーで、コイツを早く倒せや!!」


「ちょっとマリちゃん。 その言い方やめて! わかったから、私頑張るからね、ね?」


「そうだよ~。 カナさん、頑張らないと駄目だよ~。 カナさんて意外にヘタレなのかな」


「こ、このおぉぉ~~!!!」



 僕の(あお)りにより、カナさんは怒りに燃えて、僕にでも想像がつく何か大きい魔法を準備し始めた。


 えっ? この段階でそれ使っちゃうの? 

 それって不味(まず)くないですか? 

 敵意がカナさんに向いちゃうじゃないですか。 

 カナさん、ちゃんと考えてます?



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