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58.  ゲーム

 そんなわけで僕とマリは3人から解放されてしまった。

 折角VIPサロナーズオンラインをプレイしているのに暇になってしまったのだ。

 そこで僕はマリに話かけた。 


「マリ、どうせだから僕の戦士に付き合ってもらえない? そろそろLVを100まで持っていきたいんだけど」


「ああ、分かった。 気は進まないが、今日はその、リアルで色々と世話になったからな」


「おお~やった~。 じゃパーティを組もう」


 マリはサロナーズオンラインのゲームで盗賊ジョブをやっている。 つまりモブを釣って来たり、攻撃に参加したり、罠を避けるようなスキルを持っているのだ。 

 盗賊を生業(なりわい)としているゲームプレーヤーは少ない。 パーティでは重宝されるのだが、ソロ活動では弱いし、専用のクエストが実にダーティなのだ。 それに何故かは公表されてないが、人によっては選択できないという制限まである。 その制限の理由としてはリアルで素行の良い人だけが選択できるようにしているという噂がある。 確かに盗賊職は使いようではゲーム内で悪行を重ねることも可能なのだからそういう制限があってもおかしくない。


 僕はマリとパーティを組んで、インスタンスバトルへの参加申請を出した。 マリと組んでいれば戦士の僕であってもパーティ募集での集まりは早いはずだ。 ゲームで僕が参加申請を出したバトルのパーティは6人固定式で、戦闘職3名、回復職1名、盾役1名、支援職1名の構成になる。 そして戦闘職は同じジョブの重複構成が許されない仕組みとなっている。


 申請したパーティに人が集まって行く。 僧侶、騎士、黒魔導士、吟遊詩人。 そして僕たちは戦場へと転移したのだった。


 転移した先はアオイノハラBというバトルフィールドだった。 推奨レベルは102で、全員のレベルは104以下に制限された。 パーティのレベルを確認したところ僕以外はすべてレベル104だった。 僕だけレベルが99と低い。 

 集まったメンバーの名前を見て、僕はため息をついてしまった。 そう、メンバーにカナ2694、つまりカナさんが黒魔導士として参加していたのだ。 まぁ、お約束と言ったところではある。


「ど、どうして貴方たちがいるの?」


 カナさんがクラン専用の会話で話しかけて来た。 なぜパーティ会話でなのかとも思ったが、何か事情があるのかもしれない。 でもこれってミレイさん達にも聞こえているよね?



「カナさん。 それは僕が質問したいです。 なぜわざわざソロでパーティ申請したんですか?」


「え、えっとそれは、腕試し?修行? ……とにかく固定メンバーだけじゃ自分の実力を計れないじゃない」


「まあ、それは分かるよ」


「じゃ、そういう事で」



 カナさんが離脱申請を出してきた。 まさか僕が認めると思っているのか? それは甘すぎるだろう。

 パーティ離脱申請はリーダーである僕が受けている。 もし僕が認めない限り、あるいは一定の時間が経過しない限りは許可を得ないとペナルティーを食らうのだ。



「逃がしませんよ。 僕らとパーティ組むのは初めてでしょ? お望みの通り自分の実力を試してみてはいかがでしょう」


「えっと、マリちゃんとは何回も組んだことあるし、今更なのよ」


「カナ、諦めるんだ。 こういう厳しいパーティプレイにも慣れておくといいぞ」


「えっ? 厳しいパーティプレイになるの?」


「ああ、それはやってみれば分かることだ。 一度は経験しておいても、……良いかもしれない?  まあ勉強だと割り切るんだな」


「マリ、どうして厳しいパーティになるって決めつけているんだよ。 カナさんってそんなに弱いのか?」


「あ、あなた。 私の実力を知らないの? 万人に恐れられた偉大で超強力な破壊的攻撃力を持つ極悪非道で容赦ない黒魔導士よ?」


「それって、黒魔導士ジョブ専用のクエストでの設定だよね? カナさんの実際の実力と関係ないよね?」


「だから、腕試し?で参加してるんじゃない。 君今更何言ってるの?」 


 ぐぬぬ、なんか誤魔化しにかかっているなカナさん。 ここで議論しても(らち)が明かない気がする。 それなら早く戦闘を開始してすこしでも効率を上げた方が良いのかもしれない。


「ヨシ、お前自分の立場は分かっているのか?  それにカナ、要は実戦で示してやれば済むことだ。 それに厳しい戦いでも逃げるなよ」


「わかったわよ。 やってやるわよ。 何が厳しいのかはわからないけど……」



 そして、僕らの戦闘が始まった。

 目標はこのフィールドのボス撃破だ。 目標を達成した時点で各自に報酬があり経験値が入る仕組みだ。 これはリアルダンジョンと仕組みが似ていると言える。 


 先ずは雑魚から少しずつ狩っていく。 

 マリがその雑魚を釣って来た。 息を切らせているのが笑える。 VIPの2D版VRだと体を動かさねばならないから、当然と言えば当然だ。 だがそれを補うだけの価値はある。 もちろんスリルもだが、ノーマルゲームのVR手袋のスイッチだけでは操作不可能な動きができるのだから。


 マリの釣って来たモブを、盾役さんが引き受けて、僕らの攻撃が始まった。 

 僕は盾役に敵対しているモブの横に位置取り攻撃を仕掛けた。 マリは背後に回っている。


 ガッツン。


 僕の攻撃がモブにヒットした。 だがモブの上に見えているHPバーはほとんど減らなかった。 カナさんの魔法が発動した。 火魔法だ。 具体的にどの位の威力の魔法を使ったかは僕には分からないが小規模であることくらいはわかる。 自分に敵対を向けないように威力は手加減しているはずなのだ。 

 マリは背後から隙を窺い短剣で斬りつけたり突いたりしている。 ああ、僕にはこのモブの急所らしきところが見えている。 そこに突きを入れれば結構あっさりと倒せそうなのだが、僕は生憎と突きを封印しているのでどうにもならない。 


 頑張れマリ。 お前の狙っている近くに急所があるぞ!


 僕は自分を棚にあげて、マリを応援した。

 そして、そのモブを倒すのに結構時間がかかってしまったのだった。


 これは僕が戦士で参加した場合の通常パターンだ。 

 VIPサロナーズオンラインで精細な動きができても、今までのゲーム運びと変わらない。


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