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54.  VRゴーグル

 戦闘も終わり余韻に浸っていると、深刻そうな顔をしたミレイさんが話しかけて来た。


「ヨシ君。 この近辺に休息所とかある? もしかして化粧室とかがある施設って近くに無かったりする?」


「え? こんな山奥に休息所なんて無いですよ。 僕はちゃんと携帯トイレとウエットティシュとかを持ってきてます。 まさか皆は持って来なかったんですか?」


「……」



「イヤイヤイヤ。 ダンジョン攻略では携帯トイレとか常識ですよ。  神降(かみおり)さん、そう思いますよね?」


「あ、ああ。 そうだね。 余程大きなダンジョンでは、予めセーフティゾーンに洗面所とかを設置してる場合もあるんだが、普通ダンジョンで普通の冒険者は携帯トイレを持ち歩くはずだよ。 ただ、……今日はこんな山奥のしかもダンジョンに潜るとは想定外だったからね」


「えっ? 神降(かみおり)さん。 携帯トイレ持ってきてないんですか? 僕は12パック持ってきているから1つお貸ししましょうか?」


「いや、私は大丈夫だ。 それより……」


 神降(かみおり)さんは、カナさんに視線を移した。

 カナさんは汗をかいて青くなっている。


 あ、カナさん。 ヤバイのか? これはピンチなのか?

 僕は黙ってアイテムボックスをあけて携帯トイレをパック取り出した。 それから5パックを皆に配り始めた。

 いちおう状況的に最初にカナさんに配るべきだろうが、先ずマリに1つ、 神降(かみおり)さんに1つ、そしてミレイさんに3つの順番で手渡してみた。 ほら僕だって女性への気遣いぐらいできるんだ。  



「えっと、ヨシ君。 携帯トイレ、ありがとう。 でもこれって何処で使えばいいの?」


「えっ? 別にここは広いから何処でも大丈夫ですよ?」


「あ、貴方。 皆の見ている前で、これを使えると思ってるの?」


「……」


 ミレイさんの問いかけに正直に答えただけなのに怒られてしまった。 要するに広いところは駄目ということか……。



「あ! そうだ!!」


 僕は突然理解してしまったのだ。 なるほどそういうことだったのか。



「何よ。 突然大声を上げて! また何か良くないことを(ひらめ)いたんじゃないでしょうね?」


「いえ。 VRゴーグルです」


「ヨシ君、良く理解できません。 今の状況とVRゴーグルがどういう関連があるのですか?」


「レイナさん、 よく聞いてくださいました。 VRゴーグルはこういう時のためにあるんです。 VRゴーグルをつけて映像上で携帯おトイレと使っている人を非表示にすればいいんです」


「なるほど。 ……でもそれには一つ難点があります」


「なんでしょう?」


「貴方のVRゴーグルがそのように設定されていることを、どうやって確認すればいいの?」


「……ええと、それは僕を信用してもらってですね……」



「「「信用できません!」」」



 3人がハモって断言されてしまった。 

 そんなに僕は信用ないのだろうか? なんか微妙に傷つくんですけど(泣)。 

 でもこの状況は、何とかしなくてはならない。 さてどうしよう。


「あ! そうだ!!」


「またなの? 今度は何?」


「ええとですね、 もう少し先へ進めば、第6区画に入れます。 それでカナさんは第5区画側に残って、僕らは第6区画で待つっていうのはどうでしょうか」


 どうだ名案だろうと、皆に笑顔を振りまいた。 

 そして僕は気づいてしまった。 カナさんが青ざめながらも僕を睨んでいることに。

 あああ、折角気遣いしてたのに、カナさんの名前を出してしまうなんて、僕はどうしてこうなんだろう。


「ヨシ君。 それ採用! じゃ行くわよ」


 ミレイさんが、素早くフォローしてくれた?  

 いや違うな。 きっと状況が切迫してるのだ。


 僕らはすぐに自転車に乗り移動を開始した。 そして第6区画のゲートをくぐり抜けた先でカナさんを待った。 ゲートは直径約2mほどの円だが、それに対して区画は非常に大きいから位置的に隠れる場所は十分ある。

 そして待つこと10分くらい? カナさんがやっと僕らが待つ第6区画へやって来た。


 ふぅ。 これで何とかなったな。 僕は少し安心したのだった。



「ところで、使用済品はどうするの? 持ち帰るの?」


 カナさんがなぜか僕に問いかけた。 そんなのなぜ僕に聞く?

 面倒だし、放置してもいいのだが一応答えておいた。


「えっと、そのままにしておいてください。 少し臭いが残っていても僕がちゃんと回収しておきますから」


「あ、あほか! 絶対に私が持ち帰ります! ええと、マリちゃん。 袋に入れるからアイテムボックスへ収納してもらえる?」


「お、おう。 アイテムボックスな。 ……あれ、ヨシもアイテムボックスを持ってるよな?」


「マリちゃ~ん。 それはどういう意味かな?」


「あ、ああ。 別に意味はねえ。 ってカナ、そんな怖い顔で俺を見るな」



 結局僕らは準備不足ということで、プライベートダンジョンの見学ツアーを中止した。

 それでも神降(かみおり)さんは、”噛み付き石”からのドロップ品を確認できたから目的は果たしたと言えるだろう。 僕が戦っているところの動画も撮ったようで満足げだった。 人に見せる場合には僕にモザイクを掛けてくれるなり秘密にしてもらえるようにお願いしておいた。


 それにしてもマリ、お前の呼称は”マリちゃん”で確定しているな。 まあ日頃の行い(サロナーズオンラインのアバター)のせいだな。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] こいつら図々しいな。財宝部屋の鍵を持った人に対して文句言うタイプだ。 人選ミス感凄い
[一言] 面白かったです! これからも頑張ってください!
[一言] 面白い
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