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48.  お父さん

 10時になり2986ダンジョン前に来た。 僕とマリはすでにダンジョンへ潜る準備をして、彼女らを待っている。 

 ご飯はダンジョン管理センターの中で売られているお弁当を購入済だ。 真空パックされて一旦ダンジョンの中に持ち込んだものなので、完全殺菌されて賞味期限は数か月ある。 普通のデリバリー食品と異なるのは主にダンジョンへ持ち込むという関係上、できるだけコンパクト且つ規格化された頑丈なトレーに入っていることだ。 使い終わったトレーは重ねることで容量を減らせるので行きは嵩張っていても帰りの荷物は少なくて済むため、ドロップ品を多く持ち帰ることが可能なのだ。


 高級自動車が僕らの前に止まった。 チャーターにはかなりの金額を必要とする車だ。 その車のウインドウが開き、ミレイさんが僕らを手まねきするのが見えたので、僕らは自動車へ歩いて行き乗り込んだ。

 その高級自動車はひと昔前のマイクロバスサイズほどで、中には彼女ら3人と身なりの良いおじさんが居たのだった。


 誰だろう。 柔和な感じの御仁なのだが間違えてはいけない。 こういう雰囲気の人は大概社会的地位が高い人が多いはずだ。 僕の父から聞いた話なので間違いない。 僕は父を信じていたのだ。


「やあ、君たちが、吉田君と泊里(とまり)君かい? 私は嶺衣奈(れいな)の父の神降響(かみおりひびき)といいます。 娘が色々とお世話になっているそうだね」


うあ、レイナさんのお父さんか~。 なんかヤバイ、ヤバイ雰囲気がぷんぷん匂ってきているぞ。 これはやはり売却予定のエネルギー石がらみだよね。 いやだな~、面倒だな~、何とか誰かに押し付けたいな~。


「あ、僕は吉田幸大(よしだこうだい)です。 こちらこそレイナさんには色々と助けてもらっております。 よろしくお願いします」


「お? 俺は、泊里快(とまりかい)……です。 よろしくお願いします」


「ごめんね。 マリちゃん、ヨシ君。 お父さんが付いて来ちゃいました。 お願いしていたエネルギー石についての結果が出て、その事情を詳しく知りたいそうよ」


やっぱり! というか当然か。 緊張するなこりゃ。


「まあ、そういうわけなんだよ。 と、その前に、この車は何処へ行けばいいのかな? このまま停車していては迷惑だから行先を設定してくれないかい?」


「はい。 ちょっとお待ちを」


 そう言って僕は携帯端末を取り出して、AI自動車のコンソールへ行先――あの山の中の岩場の近くの道路を設定したのだった。 そして自動車は設定を終わるとスムーズに動き出した。

 神降(かみおり)さんは、僕の設定を覗き込んでから話を進めた。


「ほう、あの山の、……結構奥深くを設定したのだね。 その付近にはダンジョンは無いはずなのだが」


 神降(かみおり)さんは、どこかのダンジョンで”噛みつき石”を倒すところを見たかったのだろう。 それなら”噛みつき石”がいる普通のダンジョンへ案内されるというのが神降(かみおり)さんの予想だったのだろうけど、それでは僕がパーティに約束したオーブ取得ツアーという目的から乖離してしまうし、今後のことを考えるとこの辺で権力者の誰かを味方に引き入れてしまうのも有りだと思う。 ならば先ずプライベートダンジョンについての秘密を共有してもらうのが良いと思う。


「ええと、そこが特別な場所という訳ではないんです。 ただし秘密にしなければならない事情があるので、実績のある場所を選んだというだけなのです。 その場所以外でスキル発動の実績はないので」


「おおっと、何か特別なスキルに関係しているのかい。 それなら私が来たのはちょっと不味(まず)かったかな」


 不味かったかといえば、不味かったのだが、こうなったからには覚悟は決まっている。


「いえ丁度よい機会だったかもしれません。 うら若き女子達を山の中へ連れ込むなんて非常識だし、このことはいずれご相談しなければならないことなので。 ただし今日開示する内容については秘密厳守でお願いしたいと思っています」


「お、おい、ヨシ。 何か重要な話になって来てないか? それにお前いつもと雰囲気が違うぞ。 まるで別人だ」


 マリ、今更何を言い出すんだ。 神降(かみおり)さんが、わざわざ出向いて来てるんだ。 重要な話以外に何の用があるって言うんだよ。 でもまあマリがビビるのも分かる気はするけどな。



「大丈夫さ。 慣れるよきっと」


「……」 


「ふむ、秘密厳守か。 まあそれはいいだろう。 そのスキルの件は後で聞くことにして、先ずこちらからいいかな?」


「はい。 もちろんです」


「結論からいうと、君たちに託されたエネルギー石だが、10kA以上の極上品であることが分かったのだよ。 それを君たちが複数個手に入れる手段を発見したというのが重大なことでね。  この案件を迂闊(うかつ)に扱うとエネルギー市場の現状を壊しかねない事態になることは理解しているかい?」


「はい。 わかっています」


「それで、”噛み付き石”が魔物で、討伐できるというのを聞いたのだが、本当なのかい?」


「それは間違いないです」


「それでは”噛み付き石”はあらゆるダンジョンで複数発見されているから、それらから極上品のエネルギー石を手に入れることができるということだね?  だが”噛み付き石”を壊す――討伐できるかとなると、……今まで試した冒険者もいたようなのだが、不可能という結論だったのだよ。 どうして君は討伐できたのかな?」


「それは、……。 ”噛み付き石”がオーブを複数ドロップすることから考えて、レベルの高い魔物です。 今までの冒険者たちは、その様なレベルの高い魔物を倒すつもりで攻撃しなかったからじゃないでしょうか。 高レベルの冒険者が本気で攻撃すれば討伐できたはずと思います」


「そう言われてみれば、そんな高レベルの魔物を倒すようなつもりで攻撃したという話は無かったかもしれないね。 ”噛み付き石”は、低レベルの層にもあったから盲点だったね。 だが何故君がそれを倒せるのかな?」


 遂に聞かれてしまった。  僕の秘密の第一のスキルについて話す時が来たのだ。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] これ、ダンジョン作成がチートと言うか、噛みつき石に唯一攻撃できる急所突きと噛みつき石を発見できるスキルが強いんであって、 わざわざダンジョン作らなくてもいいよね? その辺のダンジョン…
[一言] 良い。実に良い。(後方両面宿儺面)
[気になる点] 噛みつき石ってなんかださくない?
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