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46.  結構ギリギリ

 マリのゲーム内ハウスは僕と同じで一番小さいタイプで一番安いやつだ。 別アカとの共通ストレージを持つ僕は、本当は大金持ちの部類なのだが、高級ハウスは必要ないし目立つのが嫌なので小さいタイプに住んでいたのだ。


「マリちゃん、ヨシさん、おはようございます」


「「「おはようございます」」」


「じゃあ俺のハウス内で会話しようぜ」


「なんかマリちゃん。 何時もの可愛らしい言葉遣いにしてもらえないかしら」


「い、いや。 ヨシの前じゃ恥ずかしくてできね~」


「……わかったわ。 それで提案なのですけど」


「うん?」


「ヨシさんもフレ仲間にして、私たちのクランハウスで話しませんか? そのほうが落ち着くので」


「えっ? 僕をフレにしてくれて、クランへも入れてくれるんですか? やった~」


「秘密を共有しているリアルパーティの仲間ですから、フレ登録は当然です。 クランは昨日設立したばかりです」


「えっ? それじゃ”疾風の白狼”じゃないってことですか?」


「そうです。 ”疾風の白狼”じゃ、目立ちすぎますし、他のメンバーもいますからね」


「わかりました。 お願いします」


 少しガッカリはしたのだが、目立ちたくないのは僕も同意するので納得した。

そうして、レイナさん、ミレイさん、カンナさんとフレになり、クラン”虹色の宝珠”へ所属できたのだった。 


「それじゃ、クランハウスまで転移しましょう」


 特に異論はないので転移した。

 クランハウスは、レイナさんの個人ハウスを少しだけ大きくした感じの建物で、彼女らにしては随分と質素じゃないかとも思えた。 そうはいうもののマリとか僕のハウスと比較すると凄く豪華ではある。

 システム上、敷地内にはクランメンバーあるいは招待した人以外は入れない仕様なので、クランハウスの中に入ればセキュリティは万全で秘密の会話ができる。 まあそれは個人ハウスでも同様なのだが。


「では第二回、パーティ会議を始めます。 今日は、ミレイに進行をお願いするわね」


「えっと、ミ、ミレイです。 よろしくお願いします」


「ちょっとミレイ。 何、緊張しているの?」


「え、ええ。 これからの方針を決めなけばならないと考えると責任が……」


「へぇ~。 ミレイさんって、思ったより真面目だったんだ。 第一印象と大分違うような気がする」


「何よ! 私の第一印象がどうだったと言うのよ?」


「い、今の、その感じです。 ツンデレとかそんな感じ」


「貴方、言葉の使いかたが間違っているわよ? ツンデレって確か好意を寄せている相手が対象なんじゃなかった?」


「あ、そうでしたか? ツンデレじゃないとすると。 え~と、女王様タイプかな」


「お、おま、そんなこと思ってても言っちゃだめだ。 おまえというやつはこれだから」


「ミ、ミレイ。 怒っちゃだめよ。 多分コイツにとっては誉め言葉なんだからね」


「……」


「わかっているわ。 ヨシ君に聞いた私が愚かだったわ。 気を取り直して今日の話し合いを始めます」


 ミレイさんは何となく怖い雰囲気なのだが、リアルと違ってゲーム内のアバターは柔らかい顔立ちなのが救いだ。 それにしても僕やマリと違い、VIPサロナーズオンラインのアバターは表情まで分かってしまうところが凄いところだ。 VRゴーグルの中にもカメラが内蔵されているし、AIと精細なモーションキャプチャの賜物なんだろう。


「まずは、レイナ。 エネルギー石とか会社とかどうなったか報告をおねがい」


「はい。 一応父に相談しました。 結論から言えば換金は直ぐには無理でした。 私たちの話は突飛すぎるし、私が高レベルの魔物からドロップしたエネルギー石であると主張しても信用してもらえなかったんです。 だからこの前のエネルギー石をサンプルとして渡しておきました。 出力が大きいタイプのエネルギー石であることが分かれば、換金についての話を進めてくれることになっています」


「えっと、ならば僕のエネルギー石を担保にお金を借りるというのも無理なんですか?」


「そうなるわね。 ただし少し待てば借りることは可能になると思うわ」


「クッ、やはり20万円でマリに売却するしかないのか」


「ちょ、ヨシ。 お前、まだそれを言うか。 おれは買う気なんてないぞ」


「どういうこと? ヨシ君、説明してください」



「自転車を買ったんです。 それで金欠になってしまって、マリに”噛み付き石”のエネルギー石を売ろうとしたら、20万しか手持ちがないっていわれたから」


「だから、俺は買うって言ってねーぞ。 俺だって金が無くなると苦しいんだよ」


「……貴方たちって、結構ギリギリだったのね。 仕方ないわ。 レイナ、カナ。 パーティ資金作らない? とりあえず運転資金を融資しないと面倒な気がする」


「いいわよ、 担保も十分すぎるぐらいあるしね。 エネルギー石が現金化できれば全く問題なくなるわけだし」


「じゃあやってしまいましょう。 えっと、ここへ資金提供をおねがい」


「……」


「はい。 それでヨシ君。 どの程度融資してほしいの?」


「助かります。 とりあえず10万円でお願いします」


「……はい。 送金しました。 それにしてもセコイ金額ね。 何に使うの?」


「袋とか、その他のハイキング用品を買いたいんです」


「それを何に使うかは聞かないわ。 まあ、直ぐにお金には困らなくなるはずよ。 安心しなさい」


「ミレイ様。 ありがとうございます」

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― 新着の感想 ―
[気になる点] 主人公が母親を助けたいとはあんまり思ってないとしか思えません 母親の命と身バレを天秤にかけて母親の命が軽い状態なのですよね
[一言] 早急に現金が必要なら、プライベートダンジョンで手に入れたオーク等、雑魚モンスターのドロップを売れば良いのでは?
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