43. ボーナスステージ
第14区画、そこは一見しただけでは魔物がいないように見える区画だった。 しかし僕の探知には多数の反応がある。
ま、まさか、てんとう虫かっ!!
僕は幼少期に見た小さい虫の大群を思い浮かべて少し怯えたのだったが、てんとう虫がダンジョンに現れたという話は聞いたことがないし、どうやら探知に引っかかる魔物は移動していないみたいだった。 そしてその場所に近づいてよく見ると小石が落ちているだけだった。
このような場所はアクティブな魔物がいないので一般的にはセーフティーゾーンと呼ばれている。 だがしかし、僕に言わせれば”噛み付き小石”ゾーンだ。 このセーフティーゾーン以降は魔物が急激に強くなるとされているのだが、実際にはこのゾーンから強くなっている可能性がある。 ”噛み付き小石”はサロナーズオンラインでは出てこないのでレベルは当然不明なのだが、セーフティゾーン以降の敵は概してLV100を超える強敵ばかりとされているのだ。 つまりこの”噛み付き小石”はレベル100前後だと考えられる。
いずれにしても多くの”噛みつき小石”がいる第14区画は、僕にとってボーナスステージで間違いないだろう。
この小石だったら、今の僕なら突きの一撃で倒せるんじゃないかな。
早速一つだけ倒してみようか。
いやその前に蹴ってみるか。
僕は小石を蹴とばしてみた。
痛っ!
まあ、これは”噛み付き小石”なのだから当然だろう。 結果はわかっているのに蹴とばしてみた僕が愚かだった。
それにしても僕はどうして、とりあえず蹴ってみたくなるんだろう。 あのスライムで懲りているはずなのに。
それではと気を取り直して、ツッツキ君を構えて、”噛み付き小石”のあの一点へと突きを繰り出してみた。
僕の期待通り、その一撃で”噛み付き小石”は消え去り、エネルギー石とオーブ2つをドロップした。
ははは、弱い奴だ。
でもなんだ? オーブは2つ?
”噛み付き小石”じゃオーブは2つしかドロップしないってことか?
この結果には多少不満を覚えたのだが、この区画がボーナスステージであることには変わらないだろう。
それからの僕は小石を見つけては端から倒していったのだった。
結果的に倒した”噛み付き小石”の数は、43で、”噛み付き石”は2個になった。 オーブ換算だと94個になったのだ。
僕はこの14区画で一旦引き返すことに決めた。 お昼の時間が迫っているし、なんにせよこの美味しい第14区画をリセットして”噛み付き小石”をリポップさせるためだ。
ちなみに今回使用したオーブは158個、今までの合計で261個使っている計算だ。
面倒なのでステータス確認はサボっていたが、 今のステータスはどうなっているだろう?
僕は期待しながらステータスを確認してみた。
「ステータスオープン!」
近くには誰も居ないはずなので、恥ずかしげもなく声に出して恰好をつけてみた。
LV 74
HP 1963 + 60%
MP 2000
STR 2000 + 180%
VIT 2000 + 220%
AGI 2000 + 160%
DEX 1959
INT 1391
MND 1603
スキル: 体力3(ON)、筋力9(ON)、頑健11(ON)、俊敏8(ON)、回復魔法3 (50/50)、アイテムボックス5 (6/10)
ユニークスキル: 急所突き、ダンジョン生成、ダンジョン内探知
うあっ! ステータスが4桁になってしまったよ。
まあこれだけオーブを使ったのだから不思議はないのだが、これってどうなんだ?
でもあれっ? なんかVITやAGIとかのステータスが2000で飽和している? ステータス増加のアナウンスは聞こえていたのに飽和してるって何?
新手の詐欺か?
ステータスが飽和するなんて聞いたことがない。 僕だけの特別ルールなのだろうか?
それとも一般には知られないように巧妙に隠蔽されている?
いや、よく考えればステータスの飽和はあり得そうだ。 世界中では魔物が強すぎて危険な未踏破ダンジョンも多く問題になっている所もあると聞く。 もしステータスに上限がなければ、トンデモなく強い冒険者がいてダンジョンなんて全て踏破されていても不思議でないはずだ。
それにオーブの価格が変だ。 一個220万円、それは僕たち一般市民にはべらぼうに高い金額なのだが、エネルギー石取得を生業とする大企業、あるいは国家の軍隊、研究機関ならどうだ? 有用なのであれば数億円とか数十億円など余裕で出資するだろう。 国家戦略だったら数千億円だってあり得る。
オーブ1000個買うとしたら22億円だ。 今の僕は高々260個程度使っただけで、ダンジョンの中だけの限定であるものの常人の20倍ものステータスになってしまっている。
スキルの飽和、いや間違えた。 やはりステータスの飽和現象が無いという方が間違っているんじゃないだろうか。 きっとそうに違いない。 うん分かったそういう事にしておこう。
ん? 今僕はスキルの飽和と考えたよな? スキルの飽和じゃないくて、スキルの上限が1000とかいう、どう考えても眉唾として思えないふざけた話は聞いたことがある。 だがそれはステータスとは別物だし、1000とかの値も違う。 まあ関係ないだろう。
僕は考えるのを止めてしまった。 面倒な事や小難しいことは僕には向いていないのだ。
それにしても、いくつかのステータスを飽和させてしまったということは、相当量のオーブを無駄に使ってしまったということだな。 いや未だ飽和していないステータスは8種の内4種が残っている。 これだけのオーブを使ってもステータスの内の半分の種類しか飽和値まで持っていけてないってことだ。
ん? 半分しか2000に到達していない? これも何か変なような気がする。 そういえば、ここ数十回はステータスの上昇量で10%以上のアナウンスを聞いてなかった気がする。 なんだこれは?
あああ、無理、無理、無理。 僕にはやはり無理だ。 考えるのは今度こそ止めよう。
どうせオーブなんて簡単に手に入るのだ。
さて自分のレベル上げは一旦これで終わったと考えていいのかもしれない。
ならば午後からは、パーティに使ってもらうためのオーブを取りに行こうと思う。
パーティでの初級ダンジョン――2986ダンジョンの攻略は万全な備えで臨みたい。 それが過剰といえる備えであっても、ちょっとした努力で実現できるならば、やらない手はない。 まだパーティを結成して間もない僕達なのだが、友の少ない僕にとっては掛け替えのない仲間なのだ。
作者の都合により、投稿ペースを一日一回へと落とさねばならなくなりました。 楽しみにしていただいている方には大変申し訳なく思っております。 m(_ _)m