42. 攻略
その後僕は難なく第6区画のオークを殲滅させた。 途中で見つけた”噛みつき石”も1体追加で倒している。 エネルギー石以外のドロップ品は嵩張って持ちきれなくなってしまったので、一旦第7区画へのゲート手前にまとめて置くことにした。 以降は区画毎に嵩張る素材はゲート手前に貯めておき、帰る時に持ち帰ることにしたのだ。
第7区画を進んで行き、遭遇した魔物はゴブリンの上位種のハイゴブリンだった。 サロナーズオンラインの探索シミュレーションでは、ハイゴブリンは魔法や剣を使い集団で連携して襲ってくる魔物だ。
サロナーズオンラインの探索シミュレーションは、現実のダンジョンの敵をシミュレートして事故を低減することを目的に開発されている。 そのため初級ダンジョンに出現する魔物程度の情報は完璧と言っていいほど正確にできているのだ。
ハイゴブリンが今までの敵と違う点はファイアボールという魔法攻撃を使ってくるところだ。 だだしハイゴブリンの使うファイアボールは、10cm程度の火球で威力としては非常に低いし、飛んでくる速度も人が走る程度と遅いので、強化していない人でも攻撃を避けるだけなら簡単だ。 そんなハイゴブリンが集団で襲ってきても今の僕の敵になるはずもない。
これって本当にハイゴブリン? なんか異様に弱いんですけど……。
そう思いながら、オーク同様に軽く殲滅させたのだった。
この第7区画で見つけた”噛みつき石”は1体だけだった。
第8区画へ侵入した。 この区画の魔物は殿様バッタだった。 実際いる殿様バッタという虫を、俊敏さをそのままにして人間サイズに拡大したような魔物だ。 主な攻撃手段は体当たりと噛み付きだが、もちろんそんなのは僕には通じない。 少し面倒だったのは、虫の数が異様に多かったことだけだ。
俊敏さで優る僕は殿様バッタに取り囲まれる前に一匹ずつ剣で切り裂いて倒していった。
この区画では”噛みつき石”を2体、そして”噛みつき岩”を一体倒すことができた。 ”噛みつき岩”は、スキルオーブをドロップし、それを使うことでアイテムボックスのレベルが5になった。
アイテムボックス5の容量は10立方メートルだ。 これは自転車も含めて僕の持っている全ての荷物が楽々入るサイズだ。 もちろん今まで通り一日あたりの使用回数制限があるので、頻繁に使うものはバックパックに収納して持ち歩かなければならない。
それにしてもおかしい、殿様バッタもあまりにも弱すぎる。
いくら僕のステータスが高いと言ってもこれは変だ。
もしかしてプライベートダンジョンの敵って……。
第9区画へ侵入した。 この区画で現れたのはオーガだった。 オーガは動きが速く腕力も強いとされ、ある程度の知能を有する魔物だ。 これも僕の敵ではなかった。 単純にAGIとSTR、そしてVITが大きく上回っていたからだ。 オーガの推定レベルは30なので、今の僕にとっては雑魚だ。
この区画では”噛みつき石”を1体だけ討伐できた。
第10区画、そこにはビッグキャットという魔物がいた。 そいつはオーガよりも数段動きが速いことが特徴で、爪での引っ掻きと、ネコパンチを使ってくる魔物だ。 推定レベルは40で雑魚だ。
この区画では”噛みつき石”を3体討伐できた。
第11区画へ侵入した。 随分入口から遠くまで来ている感がある。 入口までの推定距離は40kmを超えているはずなのだ。
第11区画にはビッグタイガーという魔物がいた。 ビッグキャットを一回り大きくし、動く速度も一段速い魔物だ。 推定レベルは50。 結局僕にとっては未だに雑魚だった。
この区画には ”噛みつき石”はいなかった。
第12区画、レッドウルフという魔物がいた。 レッドウルフはビッグタイガーの特性に噛み付き攻撃を加え、遠吠えによる仲間を集めるスキルと威嚇によるスタン攻撃を持っている魔物だ。 この魔物の威嚇攻撃は、防具を除くVITが320を超えていれば無効化できることが知られている。 それゆえVITが突出して高い僕にとっては何の変哲もない雑魚で間違いなかった。 推定される魔物のレベルは60だ。
この区画には ”噛みつき石”が1体、”噛みつき岩”が1体いたが、スキルオーブはドロップしなかった。
第13区画、ブルーインコという小型の魔物がいた。 コイツはツッツキ攻撃しか物理攻撃手段を持たないが、睡眠攻撃と混乱攻撃を仕掛けてくるやっかいな敵として知られている。 ツッツキ攻撃は防御を含めてのVIT値が600以上であればダメージを受けることはない。 また睡眠攻撃や混乱攻撃については、INT値とMND値の合計が600を超えていれば無効化できるとされていた。 つまりスキルで強化済の僕には、ブルーインコも小鳥扱いだったのだ。 推定レベルは70だそうだ。 ”噛みつき石”は4体討伐できた。
やはりプライベートダンジョンの敵って普通より明らかに弱いのではないだろうか。 それとも僕のステータスが高すぎて、敵の強さが分からなくなっているのだろうか。
不謹慎極まりないのだが、正直僕は攻略に飽きが来ていた。 それでもダンジョンは何が起こるかわからないところなので、気を引き締め直して第14区画へと進んでいった。
そしてその第14区画で僕は驚愕した。