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41.  第6区画

 ダンジョンの中、入口付近で用意していたお弁当を食べた。 時刻は夜の8時頃だ。外を見ると暗くなっている。 移動時間は自転車により大分短縮できたが、今回は大物の”噛みつき大岩”を相手にしたので思いのほか時間がかかりオーブの取得量が少ない。


 食事を済ませてから荷物をまとめて一旦外へ出た。 携帯端末への着信をチェックするためだ。 当然ながら外へ出たことでプライベートダンジョンは崩壊した。

 電源を入れて着信を見ると着信は2件のみ。 マリ(泊里)と妹からだけだった。 最近僕はSNS関係のアカウントを削除したばかりだ。 サロナーズオンラインで僕のSNSアカウントを探り当てた奴がいて、嫌がらせが酷くなったからだ。 元々少なかった友達も今やマリ(泊里)だけになっていた。


 マリ(泊里)からのメッセージは、次のリアルパーティと明日のゲームについてだった。 そして妹からは予想通り家族の話だった。 要は余裕ができたら少しだけでも送金してほしいということだ。 そのためにも僕としては手に入れたエネルギー石をなるべく早くに売りさばきたいと思っている。 


 当初はサロナーズオンラインのアカウントで儲けたゲームマネーをリアルマネーに換金して、つまりRMTで対処する考えだったのだが、それだけでは不足だろうし、何よりもサロナーズオンラインから締め出される可能性があった。 RMT自体は禁止されていないのだが、展開によってはそういう事態になり得ることもあるのだ。


 思い返せばレイナさんからの提案は僕にとって大変な救いである。 それが無ければリスクを冒してオーブを売ることになったはずだ。 そうなると、いずれリアルでも話題になり、大騒ぎされてゲームの中のように酷い目に合うことは避けられなかったと思う。 


 <ダンジョン生成>でプライベートダンジョンを作り直しダンジョンの中へ入った。

 とにかく今は強くなることが重要だ。 理由もなく、心の中からそのような思いが湧き起こっていた。 

 僕は夜の探索活動を再開した。 要はダンジョンの第2区画から第5区画までを往復して、”噛みつき石”や”噛みつき岩”を倒してオーブ取得とレベルを稼ぐ作業を進めるのだ。 倒し終わればダンジョンから出てダンジョンをリセットしてやり直す。 これを繰り返すつもりなのだ。


 深夜2時。 何度目かの周回で倒した”噛みつき石や岩”から得たレベルは12。 そしてエネルギー石は14個、オーブは52個、スキルオーブは4つ、その他素材類が得られている。 レベルについては明らかに上がりづらくなってきているのが実感できていた。 


 そして僕のステータスは、以下のようになっていた。


 LV 65


 HP   675 + 60%

 MP   446

 STR  708 + 180%

 VIT  934 + 220%

 AGI  717 + 160%

 DEX  677

 INT  451

 MND  505

 スキル: 体力3(ON)、筋力9(ON)、頑健11(ON)、俊敏8(ON)、回復魔法3 (50/50)、アイテムボックス4 (3/10)

 ユニークスキル: 急所突き、ダンジョン生成、ダンジョン内探知


 ステータスはすでに上位冒険者並みのはずだ。 LV換算だと156なのだから。 



 この前のようにダンジョンの中で就寝し朝を迎えた。

 いよいよ今日は第6区画、オークゾーン以降へ挑戦するつもりだ。 前回その第6区画では、オークの集団に見つかってしまい逃走を余儀なくされた苦い経験がある。 今の僕は段違いにステータスが上がっているので、今回は逃げないで戦ってみるつもりだ。


 朝食を食べてから自転車に乗ってどんどん奥へと走って行く。 もちろん”噛みつき石”を発見したらその都度倒すのは変わらない。 そして第6区画前のゲートに到達した。 ちなみに倒した”噛みつき石”は1体でレベルは1つしか上がっていなかった。


 ゲートをくぐり周囲を見渡す。 

 いた! 300m先に8匹ほどの集団がいる。 

 自転車をゲート近くに駐輪し、徒歩でオークへと迫って行くと、僕に気づいたオークが咆哮を上げた。 


 グォー。


 その咆哮に呼応してその他のオーク達も僕を見つけたようだ。


 グォー、 グォー、 グォー、 グォー。


 うるさい! うざい! 遠くで吠えているオークを前に、僕は苛立ちを感じ行動を開始した。


 レベル66になり、オーブも12個追加で使用し、僕のAGI(敏捷性、すなわち認識速度)は、スキル込みで1600を超えている。 これは鍛えてない人の16倍だ。 意識すれば魔物の動きは1/16のスーローモーションに見えるのだ。 

 さらにSTR(筋力)は、1900近いので、反応速度に見合う体の動きが可能だ。 もちろんそれを支える体の頑健さも十分だ。 しかし生憎とDEX(器用さ、すなわち精度)が759と低い。 つまり、俊敏な動きはできるが、それに見合う精度は出せず攻撃が雑になってしまう状態なのだ。 


 僕のクリティカルを発生させる突きはDEXとの関連性が高いようなので、今の僕は、緑色の剣――あの2時間も戦った”噛みつき大岩”がドロップした剣――に持ち換えている。 剣を使えば多少雑な攻撃でも胴体を狙って斬りつけるだけなのでトップスピードが出せるのだ。 


 本気になった僕にとってはオークは動かない剥製の飾り物のようだった。 その剥製に緑色の剣で斬りつけたのだが、まるで豆腐を包丁で切る様に手応えが感じられなかった。


 ん? 何か変?


 違和感を覚えながらも僕は次々とオークの剥製を切り裂いていった。 そして一旦距離を取り、()()を解いて結果を観察した。 結局僕が目にしたのは、オークがその場で次々に消え去っていきエネルギー石などに替わって行く姿だった。


 ははは、ステータスの効果って凄いな。 

 今の僕にとってオークなんてスライムと大してかわらない魔物だ。

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