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37.  逆がいいです

 翌朝僕はすぐにサロナーズオンラインへログインした。 プライベートダンジョンで使う移動用の中古バイクとかのオークション品を物色するのだ。 3D画像を確認しながら購入するためには、オークションを利用するのが常識だ。 値段についてはオークションが終わらないと分からないのだが下見をしておくのだ。


 サロナーズオンラインのビジネス系セクションの待機室で、乗り物関係の項目を選択し、展示場へと一瞬で転移した。 そしてそこにいるAIのお姉さんに話しかけた。 


「お姉さん。 中古バイクの展示を見たいのですが。 案内をお願いできますか?」


「ヨシ2864様、承知いたしました。 それでは展示場へ転送してもよろしいでしょうか?」


「はい、お願いします」


 一瞬で展示場へと転移した。 展示されている中古商品の数は数十を超えていた。


「お姉さん。 比較的安く買えそうな中古バイクは分かりますか?」


「ヨシ2864様、オークションなので厳密には不確定です。 ビッグデータを用いた落札推定価格サービスをご利用しますか?」


「はいお願いします」


「希望価格はお決まりでしょうか」


「ええと、う~ん。 10万円以下で何とかなりませんか」


「少々お待ちください。 ……一件だけ検索にヒットしました。 実物をご覧になりますか?」


「はいお願いします」


 会場の中をその品の3D画像が表示されている場所まで一瞬で転移する。


 こ、これが? 本当にバイクなのか? 何か随分ユニークな形をしているじゃないか!


「え、ええと。 この不思議な形のバイクはどうやって運転するのでしょうか?」


「ヨシ2864様。 このバイクはジャンク品です。 使用履歴はレースでのクラッシュした事故品となります。 ちなみに運転者はその時運悪く死亡しております」


 いやいやいや。 それは無いだろう。 そもそもジャンク品を中古品といっていいのか? それにしても死亡事故のジャンク品バイクが10万以内で買える唯一の品とか。 ……つまり10万円では不足のようだ。


「お、お姉さん。 動くバイクで最低価格の品を紹介してください」


「分かりました」


 また転移した。

 そこには、バイクらしい形を保った、ボロいバイクがあった。


「こ、これは動くのですか? どの位の価格なんでしょうか」


「はい。 動きます。 ただし、メンテナンス用の部品は無いので、壊れた場合には自己責任で部品の作り直しが必要となります。 落札推定価格は543万円です」


 あはははは。 こりゃ無理だ。 何となくわかっていたけど、分かっていなかったようだ。


「はぁ~。 乗り物が欲しかったけど諦めることになるのかな~」


「ヨシ2864様、乗り物をお探しですか。 AI自動車なら8万円からご案内できます」


「それってAIを外すことはできますか? ダンジョンの中で使えますか?」


「AIを外すことは法律で禁止されております。 同様にダンジョンへの持ち込みも公務のような特例除いて認められておりません」


「自宅の庭でもAIを外してはいけないですか?」


「私有地でのご利用の場合でもAIを外すことは認められていません」


「そこを何とか」


「ヨシ2864様。 私には判断できかねます。 私有地内ということでしたら、アシスト付の自転車などいかがでしょうか。 趣味目的の自転車ならAI搭載の義務はございません」


 おおっ? 自転車か。 そうだその手があった。 路面がスムーズなストレート型ダンジョンなのだから自転車で十分だ。 それに自転車ならスポーツとしてメジャーなのだから安いだろう。


「お姉さん。 新品の自転車を紹介してください。 ええと、AI自動車に積載できるぐらいコンパクトな奴で、できれば荷物も運べるタイプでお願いします」


「ヨシ2864様。承知いたしました。ご予算は10万円以下ということでよろしいですか?}


「はいお願いします」


「……28件ヒットしました。 荷物の積載については法律上で制限がありますことをご承知ください。 商品をご覧になりますか? 」


「はい」


 転移した。


 そこには、子供用や幼児用の超小型自転車、三輪車とか沢山あった。


「あ、あの大人用に限定できますか?」


 その瞬間、一台だけ自転車が残った。


「え~と。 これは自転車ですか? 」


「はいそうです」


 確かにコンパクトだ。 それにペダルもサドルもハンドルもあるし、どうやら新品で間違いない。 だが車輪が異様に小さい。 なんだこれは?


「あの~ これは何ですか。 ちゃんと走れるんでしょうか」


「はい走れます。 自転車漕ぎの運動負荷に対して移動距離が1/1000に抑えられる設計になっていてダイエットには最適な一品でございます。 家の中でも使用でき、実際の移動距離が確認できるのでモチベーションを維持できるというアイディア商品でございます」


「つまり頑張って漕いで普通の自転車なら1000m移動できる運動をしても、これを使えば1mしか移動できないということですね」


「はい。 アシストにより負荷を増加させることで、狭い家の中でゆっくり進むサイクリングが楽しめます」


「え、ええと、僕は逆がいいです」



「大人が使用するタイプで、普通の移動にご使用、そしてアシスト付となると、新品では15万円からのご案内となります」


「中古品ではどうでしょうか」


「中古品で使えるタイプでは8万円からご案内できます」


 そうやって僕の半日は潰れてしまったのだった。

 結局16万円でアシスト付でコンパクトな新品自転車を購入できたから良しとしよう。

 もちろんAIなど付いていないからダンジョンの中でも使えるはずだ。


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