33. 蹴ってみる
<レベルがあがりました>
<レベルがあがりました>
「「「「 えええっ!! 」」」」
僕以外が素っ頓狂な叫び声をあげた。
「何を驚いてんだよ。 ”噛みつき石”は魔物だったってことだろ?」
僕は何食わぬ顔で惚けて見せた。
ふっふっふ。 さぞかし驚いただろうな。 ざまあみろ!
何に対して、”ざまあ”なのかは僕も分からなかったが、何かの達成感はあった。
「ちょっと、レベルが5つも上がったじゃない。それに、スキルオーブをドロップするなんて、これってめっちゃ強い奴なんじゃない?」
「わたしも、5つあがった」
「わたしも」
「俺も6つあがった」
僕のレベルも2つだけ上がったのだ。
そして、僕の<ダンジョン内探知>には、もう一つ傍に反応があった。
「恐らくそれも、”噛みつき石”だと思う」
そう言ってその石を指し示すと、マリが飛び上がってその場から逃げた。
そいつは、マリの足元近くの石だったのだ。
「お、驚かすなよ。 ビックリするじゃねーか。 ふざけんな!」
「ふざけてなんかいないよ。 試しに蹴ってみたら?」
「こんな石、そんなわけねーだろ~」
ガッ。
マリは本当にその石を蹴ってみたのだ。 まあやるだけやって思い知るがいい。
「痛って~!」
「馬鹿だな~。 本当に蹴るなんて、気がふれたのか?」
「馬鹿って、お前、こんな普通の石が”噛みつき石”だと分かるお前の方がおかしいわ」
「それで、マリたん。 それって本当に”噛みつき石”だったのですか?」
ええっ? レイナさんたちは、泊里を”マリたん”とか言うのか。 何か面白いっていうか羨ましいというか。 僕も ”ヨシたん”って呼ばれたい。
「レイナさん。 ”マリたん”は止めてください。 俺は男なんだから、少なくともリアルでは勘弁してください」
「あら、マリたんってそんなキャラだったのね。 ふふふ、まあいいわよ。 リアルではできるだけ”マリたん”って呼ばないであげる」
「レイナ、そんなことはどうでもよくない? それでマリちゃん、結局どうなのよ。結論は?」
「結論は、……本当に”噛みつき石”だと思うぞ。 カナよ、お前も蹴ってみればわかるぞ?」
「そんなのイヤに決まってるわ。 ミレイやってみる?」
「私もイヤです。 痛いのは嫌いなのよ」
「じゃ私が蹴ってみますね。 それっ」
ポコッ。
レイナさんは躊躇なくその石を蹴とばした。
「あ!、痛い。 これは本当に”噛みつき石”だと思うわ。……それでどうします?これ」
「レイナが蹴とばすなんて、ちょっと意外だったけど、そうね戦ってみる? 反撃はしないみたいだから」
「そうね、でも”噛みつき石”って壊せないって聞いていたわ。 なぜさっき壊せたのか不思議でならないわ」
「もしかして、ヨシが原因? コイツは格上にもクリティカル出すようなヤバイ奴なのよ」
「ハイハイハイ~。 提案しますぅ~。 ヨシ抜きで攻撃してみて、倒せなかったらヨシがやってみるってどう?」
「あら、カナは積極的ね~。 私はそれでいいと思うわ。 今後も”噛みつき石”を発見できるかもだからね」
結局、僕以外のメンバーでその石への攻撃が始まった。 白狼の3人は凄まじい攻撃を浴びせている。 マリは、それに比べると控え目だ。 そして10分以上が経過した。
「はあ、はあ。 駄目よこれ。 はあ、倒せない。 これって本当に倒せるの?」
「ミレイさん。 それでは僕が攻撃してみましょうか?」
「レイナどうする?」
「そうね。 私たちでは厳しいのかもね。 ヨシさん、試しに攻撃してみてくれないかしら」
僕が試しに攻撃することになった。 そして突きを一発いれた途端にその石は消え去り、エネルギー石と、オーブ4つ、エムレザー2枚がドロップしたのだった。
<レベルがあがりました>
<レベルがあがりました>
「い、一撃か! ヨシ、お前どうなってんだよ。 すげーな」
「ヨシさん。 貴方って何者? まさか変態とk」
「トイレ!」
ミレイさんが僕に失礼なことを言いそうだったので牽制してみた。
「クッ」
「ミレイ、何なのそれは?」
「ごめん、話せない。 でもヨシは卑怯よ。 私の弱みにつけ込んで……私をいいようにコントロールする気なのよ」
「ちょっとミレイさん、人聞きの悪いことを言わないでくれますか? そんな大したことじゃないですよ。 ミレイさんを思い通りにコントロールするというのは魅力的な提案ですけど」
「て、提案なんてしてないわ! やはりあんたは変態よね」
「トイレ!」
「……」
「まあまあ、二人とも落ち着いて。 そんなことより、これは大変な事なのよ? これは重大な発見だし、どう扱うかを決めなければならないと思うのよ。 こんなところじゃ人に聞かれるかもしれないから、一旦ダンジョンから出て、サロナーズオンラインの中で話し合いましょう」