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3. VR戦闘講習

「それではダンジョンのVR戦闘講習会を始めます。 私は教官の石崎と申します。 皆さんよろしくお願いします。 今日はVRシミュレーションにて、スライムとノミネズミ、そしてゴブリンとの戦闘を体験してもらいます」


「「「「「「 はい 」」」」」」


「ここに集まった受講者は全員、サロナーズオンラインのVR戦闘ゲームの経験者で、ゲーム内ではある程度のレベルに達している方々です。 装着しているVRゴーグルの映像には慣れているとは思いますが、今回は手だけでなく体を動かしての講習となるので、今までとは多少勝手が違うことだけは事前に承知しておいてください」


「それではまず、ここにある練習用の剣や斧などの武器をお取りください」


 練習用の武器は部屋の隅に(あらかじ)め用意されていた。 教官から指示があったので僕はVRで表示されているそれを手に取ってみた。 予想よりもずっしりとした手応えが感じられた。


 この講習会では僕たちが普段遊んでいるシミュレーションゲームの様な実体のない仮想表示物ではなく、実物の剣を用いて訓練を行うことになっている。 その実物の剣は鉄製で刃引きされている模造剣である。 その剣はかなりの重量があるので取り扱いには注意を要するが、実際のダンジョンの中ではこのような実物の剣を使うことになるので事前に講習会で体験しておくことが必要とされているのだ。


 そんな危険な模造剣を使って講習を行うのだが、怪我を心配する必要はほとんどない。 なぜなら僕らが着こんでいる全身タイツスーツは、ダンジョンドロップ品である非常に強靭なエムレザー製で作られていて、VRゴーグル付のヘルメットにもエムレザーが貼り付けられているからだ。 全身をエムレザーで防御している状態なので、鉄製の剣で殴られても僕らには危険はない。 



「皆さん全員が武器を手に取ったようなので練習を開始します」



 教官がそう言ったとたん、突然僕のいた場所が道場のような光景へと変わり、7体の人形がこちらへやってくるのが見えた。 事前情報によれば、その人形はおそらくAIロボットが演じているはずなのである。



「それでは、私が打ち込みをやって見せますので、良く見ておいてください」



 ガツン、ガツン。


 教官は訓練用の人形へ剣を打ち下ろして、というよりは剣で人形を殴ってみせた。 


 なんだそれは? 僕は教官の技量に疑問を覚えた。


 しかし時間が経つと教官が殴る速度は次第に上がっていき、それはやがて剣で斬る実戦的な動きへ変化し、最終的には映画のような華麗な演舞も披露するまでになった。



「それでは私がやって見せた通り各自戦闘用の、――メノコちゃんに向かって武器を打ち込んでみてください」


「「「「「「 メノコちゃん? 」」」」」」


「あ! いや。 その訓練用人形に向かって武器を打ち込んでみてください」



 教官はあの人形をメノコちゃんって呼んでいるのか~。 なんか教官の弱点を見てしまった気がするな。 まあでも、そんなことはどうでもいい。 今は講習に集中すべきだ。 



 僕は気を引き締めてその人形へ剣を振り下ろしてみた。


 ガツン。


 剣が人形に当たった音とともに手へ衝撃が返って来た。 VRゴーグルを通して見えているダミー人形は、ダンジョン製の防御素材を(まと)った実物のAIタイプのロボットだそうだ。 実体のある人形を剣で殴って感じる重い手応(てごた)えは今まで経験したことのないものだった。



 これは、やはりゲームとは違うな! お、面白いじゃないか。


 ガツン、ガツン、ガツ。


 面白くなってしまった僕はメノコちゃんへ剣を連続して打ち込み始めた。

 僕が身に着けているエムレザーという防具の素材は、防御力は高いが一定以下の衝撃は感覚として通す。 従って手応(てごた)もあるし、実際には負傷しなくとも場合によっては痛いとさえも感じることができる。


 勿論エムレザーが耐えられなくなれば負傷してしまうが、その様な強い攻撃をする魔物が出現する場所はほとんどの場合ダンジョンの奥の領域に限られ、そこは高品位のエムレザー等の防御素材がドロップする場所でもある。 その高品位の防御素材を用いればさらに防御を強化できるし、そもそもダンジョンの奥の領域は能力の高い高ランクの冒険者のみが戦う場所である。

 僕らのようなヒヨッコ冒険者は、まず防御素材であるエムレザーが破壊されないようなダンジョンの入口付近で戦闘を行い、能力を高めたりお小遣いを稼いだりすることになる。


 僕はゲームで覚えた知識に従って剣を振りメノコちゃんを叩き続けた。


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― 新着の感想 ―
[気になる点] 人数分の括弧に言葉を入れるんじゃなくて、地の文に発言を入れた方が描写的にもわかりやすいと思います。 「「「「「「はい」」」」」」という表現から、『受験者はみな、緊張した面持ちで「はい」…
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