29. 床の石
ドサッ。
痛って~。
僕は膝を抱え込んでしまった。
何でこんなところに石が落ちてるんだよ!
イラついて立ち上がり、その石――床と微妙に違う色の石を蹴とばした。
だがしかし石は動かないし、僕はさらに足を痛めてしまった。
あ、痛い! 痛い!
なんじゃこれは~!
イライラしながら石を睨みつける。 そして気づいた。
こいつはこの前の黒い岩と同類の奴なんじゃ?
どう見てもストレートダンジョンの真っ平な床に落ちていて、さらに動かないのは不自然だ。
それではということで、ツッツキ君で攻撃を始めた。
ガシュッ、ガシュッ、ガシュッ。
一見すると的が小さくて突きを打ち込むのが大変に見えるだろうが、僕の突きは長年の経験で精度が高いのでそれほどでもない。 そうやって石を攻撃して5分たらずで石は消え去り、エネルギー石とオーブ4つと、スキルオーブ1つに変わったのだった。
<レベルがあがりました>
<レベルがあがりました>
<レベルがあがりました>
「やった! やった! 僕はやってやったぞ~!」
つい喜びを爆発させて大声で叫んでしまった。
我に返った僕は、慌てて周囲を見渡したが、誰もいるはずもないので安心した。
もしだれかに見られていたら恥ずかしさで悶えていたかもしれない。
僕は何の迷いもなくドロップしたオーブとスキルオーブを使ってみた。
<スキル、<アイテムボックス2>を取得しました>
僕の頭の中でスキル取得のメッセージが響き、ついてスキルアップのメッセージも4回つづいた。
そして僕のステータスは以下のようになった。
LV 24
HP 129
MP 155
STR 128
VIT 205 + 140%
AGI 134
DEX 133
INT 119
MND 114
スキル 頑健7(ON)、アイテムボックス2 (10/10)
ユニークスキル 急所突き、ダンジョン生成
アイテムボックス、それは希少なスキルで、自分の創り出す異空間に物を収納することができるスキルだ。 そして僕の取得したスキル――アイテムボックス2は、容量が10リットルサイズなのだ。
正直なところアイテムボックス2は希少なのだが微妙だ。 これだと小物しか入れられない。 携帯端末や、ドロップしたエネルギー石、水筒にお弁当ぐらいしか入れられないのだ。 装備とかが入るサイズであれば良かったのだが少し残念に思えた
そんな贅沢なことを考えていたのだが、ふと気づいてしまった。
あれっ? この<ダンジョン生成>って、同じダンジョンを何回も作れるのか? それなら、さっきの石の魔物は何回でも倒し放題なんじゃないか?
これは是非実験しなければならない。 僕はそう考えて一旦ダンジョンを脱出することに決めたのだった。
僕はダンジョンを入口の方へと戻って行く。 結構長い距離だが、この程度は大したことはない。
そしてノミネズミの区画に入って暫く行ったところで僕は見つけてしまったのだ。
そう、あの石の色違いで微妙に大きいのを。
やっべ! この石の魔物って実はダンジョンに多く生息している?
この石の魔物は中々見つけにくいし、動かせないし、僕のクリティカル能力?でないと倒せないだろう。 そう考えると普通のダンジョンにも石の魔物は結構たくさん生息しているのかもしれない。
ただしストレート型ダンジョンの平坦な床でないと見つけるのは非常に困難だと思われる。
とりあえず見つけた石を攻撃して見ることにした。
ガシュッ、ガシュッ、ガシュッ。
そして僕のツッツキ君が大活躍して石は例の如く消え去ったのだった。
<レベルがあがりました>
<レベルがあがりました>
ドロップ品は、エネルギー石とオーブ4個、そしてダンジョン産の剣だった。
正直今まで中で一番渋いドロップだと思った。
ダンジョン産の剣は100万円以上500万円以下程度であり、数千万円以上するスキルオーブと比較するとゴミみたいなものなのだ。 剣以外はアイテムボックスへ入れて、剣はバックパックの中へ半分だけ突っ込んで持ち帰ることにした。
それからは、歩くのにも慎重になった。 床を見回して、不自然な突起が無いかを丁寧に調べていったのだ。
そして僕は期待通りに、不自然な岩を見つけてしまった。
なんと今度は床ではなく、向かって右側の壁に大きい岩がへばり付いていたのだ。
床ばかり見ていたのだが、この岩は床から30cmほど高さにあり、視界に入ったので発見できたのだ。
こうなれば当然戦ってみるしかない。
ガシュッ、ガシュッ、ガシュッ。
僕はそいつにツッツキ君で攻撃を始めた。
ガシュッ、ガシュッ、ガシュッ。
5分経ったがまだ倒れない。 僕は攻撃を続ける。
ガシュッ、ガシュッ、ガシュッ。
10分を過ぎたがまだだ。 これは大物かもしれない。
ガシュッ、ガシュッ、ガシュッ、
ガシュッ、ガシュッ、ガシュッ、
ガシュッ、ガシュッ、ガシュッ。
僕は30分以上戦った。 しかし壁から突き出た岩は倒せなかった。
次第に懐疑的になった。 これって只の岩なんじゃないだろうか?
僕はそれから更に30分間ツッツキ君で攻撃を仕掛け続けたのだが、結局岩は倒せなかったのだった。
今の僕にとってはそいつは岩だ。
本当は魔物であっても、倒せないし害はないのでただの岩と同じなのだ。
苦労してしまったが今は諦めることにしよう。