26. ストレート型ダンジョン
こ、これは何だ!
考えるまでもない。 <ダンジョン生成>スキルが発動したのだ。
もう一度岩に手をついて、頭の中で念じてみた。
「ダンジョン生成!」
やはり手をついた所からモヤモヤが出始めた。
今度は手を離さずに我慢していると、モヤモヤはだんだん大きくなり約2m位の円形になったところで大きくなるのが止まった。 そして次第にモヤモヤが収まって行き、ダンジョンの入口らしい光景が見え始めた。
モヤモヤは半透明な膜、つまりゲートへと変わり、その奥に光る壁面の洞窟がうっすらと見えた。
よし! ダンジョンが生成できた! 遂に成し遂げた。
歓喜のあまりガッツポーズをとろうとしてゲートから手を引き抜いてしまった。 するとどうだろう、ダンジョンの奥から何か壁のようなものが迫ってくるように見えて、それが半透明なゲートに到達したと思ったら、元の岩肌へと戻ってしまった。
手を放すと生成したダンジョンは消えるのか?
何となく映像で見たことがある現象だな、と思ったのだが直ぐに気づいた。
これってダンジョンコアを持ち出した時と同じ現象なんじゃ?
ダンジョンには、その奥底にダンジョンコアと呼ばれるダンジョンを維持しているらしい特殊なエネルギー石が存在する。
そのダンジョンコアのエネルギー石は数百A程度の出力を持つ巨大な石とされている。 エネルギー的には最高品質というわけではないが、だた置いてある石だったので持ちだすことが可能で簡単だった。 ただしそれを本来の位置から取り除きダンジョンの外へ出すと、ダンジョン内の魔物が消滅し、ダンジョンの末端から壁が入口の方へと迫ってきて、ついにはダンジョン自体が永久に消滅してしまうのである。
初期の頃の冒険者達は、利益を求めて巨大なエネルギー石の確保を優先させたので、ダンジョンコアもそのターゲットになり、多くのダンジョンが消滅してしまっていた。
現在はダンジョン発生によるダンジョンの増加がほぼ無くなって安定してしまっている。 このため、ダンジョン消滅を防ぐ目的で、ダンジョンコアの持ち去りは法律で禁止されている。
さて、僕は悩んでしまった。
僕が手を入れていないとダンジョンは消滅してしまうのだ。
これって僕がダンジョンコアみたいなもの?
そうならば、僕がダンジョンに入っていればその間は消滅しないのだろうか。
そう思った僕は、再び頭の中で念じてみた。
「ダンジョン生成!」
ダンジョンの入口が半透明になり、ダンジョンの中が見えたところで、その中へ足を踏み入れてみた。
僕が作ったダンジョン――プライベートダンジョンに無事入ることができた。
このダンジョンの通路はずっと先まで一直線に伸びている。 これは噂に聞くストレート型ダンジョンというやつだ。
ストレート型ダンジョンは、その名の通り一直線にダンジョンコアにまで伸びているダンジョンで、ところどころに半透明な膜、すなわちゲートがある。
そのゲートは人が一人通れるサイズで、巨大通路(縦10m、横幅40m、奥行4km位)の間を繋いでセパレートしているのだ。 そしてその巨大通路には漏れなく魔物がいて、ゲートで区切られた異なる巨大通路では魔物の種類も異なっているのが普通である。 巨大通路は、入口付近から第1区画、第2区画と番号が付けらていて、奥へいくたびに魔物が強くなっていくのが普通だ。 また普通のダンジョンと同じく薄暗いし少し霞がかかっているので視界はせいぜい4~500m程先までしか見えない状態だ。
ストレート型ダンジョンは幅も高さもほぼ均一で、しかも床面も道路のようにスムーズなため、電動モータ付きの輸送機械等を持ち込み易い。
そのためダンジョンコアを保護していなかった初期の時代に攻略が進み、ダンジョンコアを壊してしまったケースが多かったので殆どのストレート型ダンジョンは消滅してしまっていた。
日本にある数千余りのダンジョンの内、現在で残っているストレート型ダンジョンは、北海道と富士山近隣の2箇所だけになってしまっている。
それらの2箇所のストレート型ダンジョンは、ロボットなどの機械を導入して近代的な工場になり、国有のダンジョン管理機構によって厳重に管理され、計画的に中の魔物を討伐しエネルギー石を生産していた。
ちなみにストレート型ダンジョン以外のダンジョンは、鍾乳洞のような洞窟型が大半だ。 中には地下側に向かっている、或いは上に登るようなタワータイプのダンジョンも確認されている。
僕たちが実習を受けた2986ダンジョンは洞窟型だが、比較的入りやすい初級ダンジョンだった。
僕は生成したストレート型ダンジョンの第1区画を奥へと進んで行った。
驚いたことに、その第1区画には魔物がいなかった。
なんか調子が悪いです。 あとで修正するかもです。