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2. 講習会

 僕、吉田幸大(こうだい)は現在大学2年生だ。

 公立連合大学に通っており、ダンジョンへ入れる資格、つまり冒険者資格を得たばかりだ。


 冒険者資格を得るには様々な試験に通る必要がある。 試験の種類は体力試験、高校卒業程度の学力試験、ダンジョンの基礎知識試験等だ。


 この資格試験は18才以上で受けられるのだが、僕は去年風邪を引いてしまい体力試験に落ちてしまったので、今年になってようやく合格できたばかりだ。


 実際にダンジョンへ入るためには、この冒険者資格に加えて戦闘能力を高めるために講習と実習を受ける必要がある。 それらを修了したと見做(みな)されれば晴れて冒険者として登録されることになる。


 冒険者資格を得るための講習はVRシステムを用いて行われる実戦的な講習会で、シミュレーションの中で実際に体を動かして魔物との戦い方を学ぶことになる。 僕らが普段使っているVRゲームは、VRゴーグルとVR手袋のみを用いてアバターを操作する普通のメタバースタイプなのだが、この講習では全身にセンサが付いたスーツを着こみ、実際に体を動かすことで周囲の景色が変化し、さらにその環境の中にAIロボットがリアルな障害物を演じるという、高級版のシミュレーションを採用している。


 講習が終わると次は実習なのだが、これは実際に教官の指導の下でダンジョンへと入り、魔物討伐を経験することになる。 勿論のことだが、実戦用の装備をレンタルで借りて戦うことになる。



 そして今日僕はVRシミュレーションの講習会へと来ていた。



「講習番号SP-5487の吉田さん、 吉田幸大さん。 104待機室へお入りください」


 番号が呼ばれたので、僕は104待機室へ入って行った。

 そこは完全な個室で、(あらかじ)めサイズを測定して注文しておいたセンサー付きの全身タイツスーツを着用するための部屋だ。 その部屋はVR戦闘講習室へと繋がっていてそのまま講習会へと参加できる。

 僕は一旦下着だけになり、センサー付きの全身タイツスーツを着こんでからVRゴーグルの付いたヘルメットを頭から被った。


 イヤ、何というかこの全身タイツは男の僕であっても恥ずかしいぞ? 

 なんでタイツの色が肌色なんだよ! これじゃまるで全裸のようじゃないか。

 

 もしこんな姿で外へ出てしまったら逮捕されちゃうじゃないかって、あ! これってセンサー付きのタイツを持ち逃げされないための予防措置なのか? イヤイヤイヤ、そうであるとしたら斬新な対策過ぎるだろう。



 ヘルメットは講習が終わるまで脱ぐことが禁止されており、一度ロックを掛けると外すことができなくなる。 これは主に安全を確保するための措置と説明されているが、全身タイツ姿を他の実習者に見せないためでもある。

 VR戦闘講習では教官の他にも男女数名がパーティを組むことになるが、肌色の全身タイツスーツ姿という関係上、女性でも容赦なくあられもない姿になってしまう。 このためセクハラとの批判が高まってしまったのでヘルメットを外せなくさせたという(うわさ)がある。


 僕はVRゴーグル付きのヘルメットと全身タイツスーツを身に着けて戦闘講習室へと入って行った。 そこには既に教官と講習生5人が待っていた。 講習生は僕も入れて男子3名、女子3名だった。


 ヤバイ! 出遅れた。 


 でも開始予定は未だ5分前のはずだ。

 お前ら、どんだけ期待に胸を膨らませてるんだよ!

 

 そう思った僕は慌ててヘルメットのVR画面に時間を表示させてみた。


 ゲッ、1分過ぎじゃないか!


 これは不味った。 なんとなく他の講習生の視線が痛い。 たった1分の遅刻のために僕の講習スタートは先行きが怪しくなったと感じてしまった。


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― 新着の感想 ―
「この資格試験は18才以上で受けられるのだが、僕は去年風邪を引いてしまい体力試験に落ちてしまったので、今年になってようやく合格できたばかりだ」 運転免許みたいに常時、試験があるわけでなく、試験の日取…
[一言] 肌色ピッチリスーツでVRヘッドを装着した集団。遠目から見るとヤバい集まりだな……。
[気になる点] 「この資格試験は18才以上で受けられるのだが、僕は去年風邪を引いてしまい体力試験に落ちてしまったので、今年になってようやく合格できたばかりだ。」 この資格試験、年に一度しかないのかな…
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