17. つまんねー奴
ダンジョンへ潜るのに必要なのは、携帯端末と冒険者章、バックパックぐらいで、後は装備類だから現地でレンタルすればいい。 待ち合わせのダンジョンは近所だから、自動運転機能付きのAI電動自動車に乗って10分ほどで到着できた。 中へ入ると受付で半日の装備レンタルをお願いして、ロッカー室で装備を身に着けた。
そこへ泊里(ゲームではマリ)がやってきたので、早速ダンジョンへと入って行った。 入口で冒険者章を確認されたが、資格もちゃんとしているし、トラブル歴も無いのでそのまますんなりとダンジョンへ入ることができた。
僕たちは他愛もない会話をしながら奥へと進んでいき、スライムの群れに遭遇した。
「吉田どうする? スライムで練習してみるか?」
「ああ、やってみるよ。 じゃ泊里は見ていてくれ」
僕はスライムの群れへと突っ込んで、次々にスライムを倒していった。
一匹、二匹、三匹、… そして十匹を超えたあたりで数えるのが面倒になったので止めてしまったが、群れを殲滅させるに大して時間を必要としなかった。
<レベルが上がりました>
LV 9
HP 108
MP 112
STR 102
VIT 161
AGI 111
DEX 100
INT 100
MND 100
ユニークスキル 急所突き
「お、おう。 動きは中々様になってるんじゃね? じゃあドロップ品を拾って次へいこうぜ」
僕はドロップ品のエネルギー石を17個拾ってバックパックへ入れ、泊里(マリ)に続いてダンジョンの奥へと進んでいった。
そこで遭遇したノミネズミの群れも殲滅し、ゴブリンゾーンへ到達した。
ちなみにノミネズミの殲滅ではレベルは上がらなかった。 恐らく先のスライムで上がったから次の必要経験値にまで達しなかったためだろう。
ゴブリンの集落付近には初心者と見受けられる冒険者達がいた。 教官の指導の下で戦闘実習をして、丁度終わったところのようだった。
「落ちているエネルギー石の数から思うに、倒したゴブリンの数多くね? 今の実習じゃ、こんなに倒すのかよ」
「そうだよな。 8人パーティで、24匹とかおかしいよね。 恐らくこれは練習ツアーなのかもしれないね」
「練習ツアー? なんだそれは」
「ああ、ほら、冒険者になってからも護衛をつけて討伐の練習をするツアーのことだよ」
「なんだ、それじゃ実習生じゃなくて資格のある冒険者ってことじゃねーか。 そうなると狩場荒らしみたいで嫌な感じだな」
「ん? リアルダンジョンでもそんなんがあるのか?」
「ああ、あるぞ。 ほらお前がやったスライム殲滅とかもそうだ。 後からくる実習生とか困るだろ?」
「ええっ! どうしよう」
「まあ、今回はダイジョブさ。 午後からの実習予定は入っていなかったみたいだし、この分岐路を通って来るとは限らないからな」
「マリ、お前そんなことまでチェックしてたのか」
「ああ、一度揉めてる現場を見たことがあるからな」
「そうか、それで僕らはこれからどうする?」
「これじゃ、ゴブリンは当分スポーンしそうにないから、奥へいくか?」
「ここの奥って何が出るんだよ。 それだけでも教えておいてくれないか?」
「教えてもいいけどな、ま、お楽しみってことで。 そんな強くないから大丈夫だって」
そんなわけで僕らはゴブリンの集落をパスして奥へと進んでいった。
そしてなぜか僕は先導させられていた。 マリにその方が楽しいからと強要されたのだ。
そして進むこと十数分、何かが僕へと突撃してくるのが見えた。 僕は反射的的に横へ逃げて、剣を突き出した。
バシュッ
手応えがあり、イボイノシシはその一撃で絶命した。
「なんだ、イボイノシシか。 ビックリしたよ」
「お前、つまんねー奴だな、少しは狼狽えろよな。 一発で倒しちゃうって期待はずれだぜ」
「マリ、お前っていい性格しているよな」
「おう、ありがとうな。 お礼はゲームで僧侶を一回やってくれればいいぞ」
「……」
その後、イボイノシシは5回襲ってきたが、すべて反射的に倒すことができた。
その間レベルは1回だけ上がった
そして、さらに進むことさらに10分ぐらい 広場に出たので注意深く辺りを見渡すと、奥にオークの集団がいるのが見えた。 どうやらオークゾーンらしい。
「オーク様が団体でいらっしゃるようですが、マリさんどうします?」
「なにふざけてんだよ。 チャンスだぞ。 オークのエネルギー石は約1万円近いって聞くぞ」
「いやでもさ、精々相手できるのは一人で3匹までってところじゃない? マリは何匹ならいけるの?」
「倒したこともないだろうに、お前はすげー自信だな。 ……俺は一匹だな。 お前の自信が本当なら二人で4匹までなら何とかなるってこった」
「でもさ~、どう見たってあそこには10匹近くいるじゃん。 これってどうすんのさ」
「石でも投げて、一匹ずつ釣ってこいよ。 それでいけるんじゃね?」
「そんなことできるのかな~」
「俺はできるって聞いたぞ。 まあ最悪逃げりゃいいじゃねーか。 アイツ等足遅せえしよ」
「じゃ、釣りまかせた。 泊里君、頑張ってくれ」
「クッ、しかたねーな。 とりあえず任せとけ」
そんなわけで泊里君が、オークゾーンで釣役をすることになった。
僕とマリは、オーク村の近くの岩陰に隠れた。 そこからは10m程先にオークが12体いるのが見え、上位種は居ないようだった。