14. スポーン
オークを倒したミレイさんは、僕とオークファイターの隙を窺うようにして慎重に近づいて来た。 僕は防戦一方であるものの確実にオークファイターの攻撃を凌ぎ続けている。 そこへミレイさんが加わり、2対1での戦闘になった。
僕に夢中になっているオークファイターは、近づいてくるミレイさんには気づかない。 その隙を見計らってミレイさんがオークファイターへ剣を打ち込んだ。
ガシン。
剣は見事にオークファイターの胴体に命中した。
しかしオークファイターの装甲はかなり固いらしく、あまりダメージを与えられていない。 それでも攻撃されたことに気づいたオークファイターは、ミレイさんへ牙を剥き剣で攻撃を仕掛けてしまった。
キーン。
ミレイさんは怯まずにその攻撃を見事に受け流した。
明らかに腕力が上のはずのオークファイターの攻撃を、技で捌いてみせたのだ。
見事だ。 ミレイさんの本当の実力を垣間見た気がした。
僕も負けてはいられない。
すぐにミレイさんに気を取られているオークファイターの死角へと回り込んだ。
そして気づかれないようにチャンスを窺い、ここぞという場所へ剣の突きを繰り出した。
ズン。
剣はいとも簡単にオークファイターの脇下へ深く突き刺さり、その一撃でオークファイターは致命傷を負ったのだった。
オークファイターを倒した僕は、戦況を確認するために周囲を見渡した。 教官2名はまだオークファイターと戦っていて予断を許さない状況のようだ。 2名の実習生の内1名はオークと互角で、あと1名は怪我を負いながらもオークの攻撃を防具の性能を活かして何とか持ち堪えている。
僕とミレイさんは怪我した1名に加勢し瞬く間にそのオークを片づけると、続けて残る実習生と戦っていたオークも軽く始末してしまった。 これで残りは教官達が相手しているオークファイター2匹のみになった。
僕は教官Bに加勢することを選択し、そのオークファイターに攻撃を開始した。
教官Bは優勢に戦ってはいたが、後衛職として支援に入っていた教官なので、攻撃を回避しながら隙を見て攻撃するという、どちらかといえば消極的なスタイルの戦いを繰り広げていた。
そこへ更にミレイさんが加勢したことで3対1になり、例の如く死角へ回り込んだ僕の突き攻撃によりオークファイターは砕け散った。
その後は消化試合となった。 教官Bが教官Aをアシストして、最後のオークファイターを危なげなく倒したことで戦闘は終了した。
<レベルが上がりました>
<レベルが上がりました>
<レベルが上がりました>
<レベルが上がりました>
<レベルが上がりました>
<レベルが上がりました>
僕は自分のステータスを確認した。
LV 8
HP 108
MP 112
STR 102
VIT 152
AGI 111
DEX 100
INT 100
MND 100
ユニークスキル 急所突き
オークとオークファイターを倒したことによってレベルが大きく上がった。
特にオークファイターに止めを刺したことが大きいようだ。 経験値はパーティにも入るが、止めを刺した者にはランダムに経験値ボーナスが入るのだ。
戦闘が終わると教官Bは、すぐに怪我をしたF君に駆け寄って治療魔法で治療を施した。
「君たち、大変すまなかったな。あんなタイミングで魔物がスポーンするとは思わなかったよ」
スポーンとは、魔物がダンジョン内で現れることである。 ダンジョン内では魔物が消え去った後、暫くしてスポーンすることは普通なのだが、今回のように即スポーン、しかも上位種がスポーンというのは大変珍しいケースだ。
こんなイレギュラーなことが起こるので、初級ダンジョンとはいえ油断ならない。 いかなる時でも万全な備えが必要なのだ。