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135.  種とエムレザー

 中級ダンジョンを攻略していく方針になったはいいが、問題はどこからスタートするかだ。 それに貯めているエネルギー石も処分したい。 エネルギー石については最早どの位の金額になるのか考えるだけでも面倒だ。 恐らく全部は引き取れないぐらいの量なんじゃないかと思う。


「ところで鈴木さん、中級ダンジョンは何処から攻略を開始するのが望ましいのかしら?」


 今まで寡黙だったレイナさんが話し出した。


「そうですね。 ダンジョンクリーニングもお願いしたいから、取りあえず地理的に重要だがイレギュラースポーンの問題で一時封鎖されてしまっている1232中級ダンジョン、通称、武蔵ダンジョンからお願いしたいね。 それが終わったら、重要な中級ダンジョンを順次お願いしたいのだが」



「わかりましたわ。 でも少し猶予をお願いできないでしょうか。 わたくしたちも色々と個人的な事情がありますので、しっかりとけじめをつけてから(のぞ)みたいと思っているのです」


「それはもちろん大丈夫です。 早急に対応したい事態になりつつあるようですが、今は未だ緊急事態というわけではないからね。 それに調べさせてもらったが君たちはあの”疾風の白狼”の?」


「はい、そうです。 なので活動休止を宣言しておかないと多方面に迷惑がかかるはずなのです。 それに実家にも報告が必要ですし、相談しておきたいこともありますので」


「ああ~。 そういえば君たちは無断で家を飛び出して心配をかけたのだったね。 しっかりと家族に説明してから備えてくれたまえ。 あと相談というのは? ダンジョン関係だったら私でも力になれるのだが……」


「ね~、レイナ。 あの黄色い種については態々(わざわざ)ミレイの伝手に頼る必要はなくない? 鈴木さんに頼んじゃえば?」


「そうね、レイナ。 そうしてもらえるといいかな。 ヨシ君もマリもそれでいいわよね」


 黄色い種の弾丸化についてはミレイさんに頼ることにしていたのだが、言われてみれば今の僕らには、鈴木さんという強力な伝手がある。  それにミレイさんの実家は、大臣や自衛隊関係者のお偉いさんがいるのだ。 直接実家にお邪魔して説明する、ってなことはできるだけ避けたい。 


「も、もちろんOKです。 種については鈴木さんに相談するんでいいよ。 これについては既にミレイさんに任せていたからね」


 僕の了解が得られたと思ったミレイさんは、アイテムボックスから例の黄色い種1000個程をフルーツバスケットに入れて鈴木さんの前に置いた。 エミリの目が一瞬きらりと輝いた気がしたが、これは流石に食べれない奴だ。 種が食べられないことは分かっているだろうが、フルーツバスケットに入れたら確かにお菓子のようにも見えてしまう。


 鈴木さんは僕をちらりと見てから、ミレイさんに視線を移して確かめるように話しかけた。


「これが君たちの言う黄色い種なんだね? ならこれはダンジョンドロップ品なのかい?」


「ええそうです。 この種はハジケホウセンカという強い魔物から獲得できるダンジョン武器なのです。 一人で倒すのはなかなか困難、いえ、今ではそれも可能かもしれないかも。 とにかくレベルの高いダンジョン武器で比重もかなり重いのです」


「成程ダンジョン武器ですか。 それにしても小さいな。 ……もしかしてこれは、弾丸になると言いたいのかい?」


「それは私の土魔法で加速できます。 離れた位置から土魔法で打ち出せばかなりの威力になるのです。 ただし土魔法のみでは初速が小さいので、至近距離では威力がでません。 ライフルの弾丸にすれば至近距離でもかなりの威力が期待できて、もちろんその分離れた位置ではもっと威力がでるはずなのです」


「つ、つまり。 この黄色い種の弾を使えば、土魔法持ちが活躍できるようになるし、今まで効果的でなかった狙撃や砲撃もできるようになるということか。 なるほどそうか、これで近代的な戦闘ができるようなるんだね。 それで君たちの頼みというのはこれを銃弾として使えるようにしてほしいということなのかい?」


「ええそうです。 見た目と違って凄く重いのでそれ専用の設計も必要ですし、まっすぐ飛ぶようにするためにフルメタルジャケット弾にしてもらう開発が必要だと思うのです」


「なるほど、……わかった。 今ではダンジョンで使う銃器の開発は止まってしまっているが、レベルの高いダンジョン武器を弾芯にした武器の開発を依頼したいということだね。 それでその種?なんだが、沢山手に入れているのかい? それは我々にも供給してもらえるのかい?」


「鈴木さん、無制限の供給は無理です。 その種を使ったダンジョン武器の弾芯は回収して再利用してほしいのです。 一般に供給できる数は、とりあえず……」


 ミレイさんが僕を見たので、軽くうなずいて置いた。



「とりあえず、1万個で様子を見させてください。 それをリサイクルしながら使う方向でお願いしたいと思っています」


「お、おお。 そんなにですか。 それだけあってリサイクルも可能となれば、……かなりの戦力アップが期待できるね。 それで聞いておきたいことが2つあるんだが」


「何ですか? 私でお答えできるなら」


「まず、その種をドロップする魔物のレベルと、これから供給を増やしてもらえるかどうかの2点かな」



「魔物のレベルは210付近だと聞いています。 あと供給体制は、私達の活動方針に依ります。 今の時点では4万個までは供給して良いのかもしれません。 ヨシ君、それでいいわよね」


 僕は軽く頷いた。 4万個というと、僕らが今持っている黄色い種の総数から1万を引いた数だ。 僕達にはレベル402のユニークホウセンカからドロップした斑模様の種もあるし、黄色い種は足りなくなったら取りに行ける見込みもある。 4万個なら問題ない数だ。


「ははは、君たちには驚かされるよ。 それ程の数を用意できるなら今後ダンジョン攻略の主流は狙撃になりそうだね。 うん分かった。 銃とフルメタルジャケット弾の開発は優先事項として進めておくよ。 結果が出たらできるだけ早く報告をいれるよ。 それからこの種はサンプルとして使っていいのかい?」


「はい、そのつもりです。 研究用として用意したものです」


 鈴木さんは、その黄色い種を大事そうに抱えて、ビデオに収めたうえでアイテムボックスへ収納した。 これで鈴木さんとの打ち合わせは終了かなと思ったところでマリが話題を変えて来た。


「俺も一つお願いがあるんだが。 いいか?」


「マリ君、お願いとは?」


「エムレザーの件だ。 俺たちの装備に使っているエムレザーは超高級品なんだそうだ。 まあレベル150のレッドカウやブラックカウからのドロップ品なんだから当然だがな。 それらがある程度の枚数供給できるし、 レッドカウとプラックカウのを2枚貼り付けた防具はレベル170からドロップしたダンジョン武器も歯が立たんそうだ」


「ほほ~。 それは凄いな。 そのエムレザーも我々に供給できると?」


「ああ、今でも、合計で300枚程度なら供給できるぜ。 加工方法とかは俺の叔父に聞いて貰えばいいかな」


「それも大変助かる話だね。 その超高級エムレザーを装甲車に貼り付ければ、そして種を使った狙撃を行えば、まるで戦車を使ったような、昔の戦争のような攻略が可能になるんだね」


「ああ、そういうこった。 俺等も一般の攻略部隊の安全を願っているからな」


「はは、一般の攻略部隊か。 まあ君たちに比べれば攻略部隊も一般の範疇なのかもしれないが、……それにしても武器や防具の供給は大変助かるよ。 それにオーブもだなんて、これは頼り過ぎな気がするね」


「攻略部隊が効率的に攻略を進めることが出来れば、僕達の負担も減りますからね。  ということで、これからも僕達を守ってくれるようお願いします」


「ああ、もちろんだ。 それでそのエムレザーは何処に?」


 僕はアイテムボックスに保管してあったレッドカウとブラックカウのエムレザーをそれぞれ150枚ずつ取り出して渡しておいた。 これらも鈴木さんは丁寧にビデオに録画しながらアイテムボックスに保管した。

 今後の僕等の方針としては、できるだけ要請された中級ダンジョンのクリーニングと攻略を進めてイレギュラースポーンを抑えること、そして転移できる場所を増やすことだ。 その間にできるだけオーブやスキルオーブ、種や超高級エムレザーを獲得して、ダンジョン攻略部隊の拡充を計ることになる。 


「あっ! そういえばエネルギー石はどうしよう? 高出力のが3000個以上あるんだけど」


「ええと、それって、レッドカウやブラックカウ、 そしてアンフェアイソギン、ハジケホウセンカのドロップ品よね? ということは1個あたりの期待値は600~4000万ぐらい?」


「……金額を考えると恐ろしいから考えないようにして、そのまま神降(かみおり)さんに託してしまおう。 もう僕等は財政について考えなくてもよさそうだな」


「お前、そんな計算もできね~のか? 3000個で一つあたり600万以上だと、 う~ん18億円以上ということじゃねーか。 うぁっ、すげー大金だな」


「……マリ、桁が間違ってないか? ……まぁどのみち非現実的過ぎてそんなのもどうでもいいけどね」


「……お、お父様大丈夫かしら。 いくら何でもこんな短期間でそのような金額を用意できるのか心配です」


 レイナさんが本気で心配している。 この短期間で日本全体が年間に獲得できる量を超えてしまっているはずなのだ。


「いやいや、取りあえず預かってもらうんでもいいのかなと思うよ。 それに一番強敵だったユニークホウセンカのエネルギー石はトンデモないだろうしね」


「ん? ユニークホウセンカ? シミュレーターに登録されていたアイツか。 吉田君、あれって実在したのか? レベル402って本当だったのかい? するとそれも種をドロップしたとかは……」



 あ、あああ。 やってしまった。 シミュレーターにはユニークホウセンカも登録済だったんだった。 こ、これはどうしよう。 



「え、ええと。 ………………すみません。 秘密でお願いしたいですが、実は奴も種を落としました。 ユニーク魔物なので今後ソイツの種の入手は出来ないです。 だから種は僕達で使うことにするので、その存在は公表したくないです」


「そ、そうか。 まあそんなレベルのダンジョン武器は、君たちの他に使いこなせないだろう。 それにその種を使わなければならない機会は想像がつかないし、考えたくもないね」



 鈴木さん恐るべし。 ちょっとした隙から僕等の実情がバレていってしまっている。 もう僕達が秘密にしていることは、僕のユニークスキルの一部と、レイナさんのユニークスキル、そしてステータスの限界突破についてのみじゃないだろうか。 まあダンジョンドロップの武器とかも十分には教えていないが僕等も十分把握しているとは言えないのでその辺は誤差だ。



「ありがとうございます。 とりあえずその種も10個だけ渡しておくので銃器の開発をお願いできないでしょうか」


「う~む。 それは今はちょっと微妙かもだね。 ………君たちの戦力を上げるだけの理由になってしまうからね。 それでも大分君たちには借りがあるから、交渉してみる価値は十分あるだろう。 その10個のサンプルは取りあえず預かっておくよ」 


「よろしくお願いします」



 それで鈴木さんとの話し合いは終了した。 別れ際に僕等を護衛してくれる部隊の責任者を紹介された。 小泉三佐というA-1ランクの方だ。 三佐というと海外で言うとことの少佐で、数百人の部隊を指揮するようなかなり偉い人だ。 


 さて、これからはそれぞれの私用を片づけた後でいよいよ中級タンジョンの攻略ツアーを始めることになる。 ダンジョンを多数攻略するとプライベートダンジョンを介して転移できる箇所が増えることになる。 その場合に護衛の方たちを置き去りにしないためにも小泉さんには僕達の事情をある程度話しておくことになった。

申し訳ありません。 ストックが無くなりつつあり、スランプなので投稿ペースはさらに落ちてしまっています。 

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