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132.  潜伏

 オーブを使ってステータスが上がっているものの、それだけではトゥルーコアタッチができるとは限らない。 もしできたとしたらスキルオーブは関係なくて、オーブと食べた効果が聞いたということになる。


「それでは、今の状態で鈴木さん、コアに触ってくれますか?」


「あ、ああ。…………うん。 何も感じないな。 次はスキルオーブを使うということになるのかな」


 まあ思った通りだ。 オーブ食が条件でないとすると今後はスキルオーブを使いまくることになりそうだ。 スキルオーブは一つ1億5千万円だ。 それまでにステータスをすべて1000にするために普通のオーブを243個使っているので5億円を超える投資を行っている。 公費で賄うとはいえ責任は重大といえるだろう。


「ですね。 で? どうします? 希少スキルを試してみます? それともまず普通の魔法スキル関係から試していきますか?」


「普通に考えれば、攻撃魔法や知力など、この中級ダンジョン由来のスキルオーブは関係しそうにないんだが、もし希少スキルが関係しているとなると大変なことだ」


「えっ? でも僕達はもう100個以上希少スキルが期待できるスキルオーブを持っていますよ? お買い上げいただけるなら、100個位なら融通できます。 1000個となると、ちょっとご遠慮したいですけど」


「わ、わかったよ。 ならお願いするとしよう」


「ええと。 アイテムボックスと思われるスキルオーブがありますが。 それを使ってみます?」


「アイテムボックス? なぜそのスキルオーブがそうなのかは今は聞かないことにするよ。 ……そ、それにしてもアイテムボックスか。 確かに嬉しいが。 いいのだろうか」


「ええ、元からプライベートダンジョンでは、アイテムボックスのスキルオーブと頑健のスキルオーブが多くドロップしましたからね。 問題ないはずです」


「わかったよ。 ではお願いするよ」


 鈴木さんは、僕からアイテムボックスと思われるスキルオーブを使ってみた。 思い切ったことに食べてみせたのである。 これには僕らも驚いてしまった。



「ま、まさがスキルオーブを食べるなんて。 ああっ! 僕でも食べたことがないのにずるいっ!」


「あ、ああ。 やった。 覚えた。 覚えたぞ。 アイテムボックス8だっ!」


「……」


「うぉっほん。 ではコアタッチを試してみることにしよう」



 そして鈴木さんはコアに触れたとたんに驚愕した表情を見せた。


 あ、あれ? もしかしてビンゴだった?




「こ、この感覚は。 ……これがトゥルーコアタッチの感覚なのか」


「よかった。 成功したんですね。 これで鈴木さんの名前が全世界に報告されたわけですね」


「おめでとうございます。 トゥルーコアタッチ条件の範囲を大分狭めることができましたね」

「おめでとー」

「おめでたいぜ」

「鈴木おじさん。 おめでと~。 これでエミちゃんと同類なのね」

「おめでとうございます。 私達もこれで任務から解放されそうですね」



「あ、ああ。 だが、希少スキルオーブであるアイテムボックスを取得する必要があるとするとかなり大変だね」


「でもそれは、とりあえず日本に限れば僕達がいるからかなり楽な方だと思います。 それにしても今のところ考えられる十分条件は、ステータス全て1000。 オーブとスキルオーブを食べている。 そしてアイテムボックススキルを取得しているということですね」


「……」


「条件として食べることが確定なら、これからオーブは食べ物として定着しそうですね。 そのパイオニアはエミリだね」


「ええ~。 エミちゃんはパイオニアなの? 開拓者なの? 物理学賞とか貰えそうなの?」


「なんで物理学賞なんだよっ! 貰えたとしても平和賞じゃないかな。 まあでも後は鈴木さん達でこれ以上の検証を進めてもらえればと思います。 今あるスキルオーブは貸し出すので検証で使った分だけ費用を貰えればと思います」


「それはありがたい申し出だね。 でももう少しお願いできるなら、普通のオーブも分けてもらえないだろうか。 これだけ多量にオーブを使うとなると流石に市場価値に影響をあたえそうなんだ。 それにトゥルーコアタッチに希少オーブが確定となると、メンバーを増やすために使わせてもらうことになるかもしれないよ」


「ええそれは問題ないです。 僕らを解放してくれるならそれに越したことはないです。 それに、僕らはこれからスキルオーブを獲得してスキルのカンストを目指すつもりですから、普通のオーブは随分と余るはずです。 スキルオーブの件も、……そうですねこれからも僕らを護衛したり政治の魔の手から守っていただけるなら、ある程度は協力できます」


「ええ~? まだあの魔物狩りをやるの?」


「カナさん。 あれだけスキルオーブが取れるんだからやっておこうよ。 急いだらほんの2、3日の辛抱じゃないか」


 まあ、その2,3日がキツイといえはそうなんだけど、急ぐ必要もないからそれほどでもないはずだ。 定期デスト期間の勉強と比べると寧ろ楽なぐらいだ。



「嫌なら、カナさんは休んでいても……」


「い、いえ。 それは出来ないわ。 嫌だけど果たさなければならない義務からは逃げないわ。 ただ、ちょっと今すぐは、しんどいかも」


「ま、とりあえず夕飯時だし、ポータブル強化ガラスをこのコアルームに設置してから、プライベートダンジョンへもどりますか~」


 僕らはプライベートダンジョン経由で6963中級ダンジョンの入口のゲートまで転移し、そこから会議室へと向かった。 そして会議室の中でもう一度プライベートダンジョンへ入った。


 鈴木さんは直ぐに2D版VRルームへと移動し、今回の成果について報告しにいった。  僕達は任務から解放されたので、鈴木さんには悪いが早めの夕食を取ることにした。 夕食の時間は楽しい。 可愛い女子達に囲まれて美味しいものを食べるのだ。 それに今日はもう働かないつもりなのでお酒だってOKだ。 ただお酒が入ると体が熱くなってしまい、つい上着を脱ぎたくなってしまうのが問題だ。 当然エミリは僕の裸、といっても上半身だけだが、を見慣れているので騒ぐことはない。


 そこへ鈴木さんがVRルームから戻って来た。 何やら疲れた顔をしている。 まあそれが仕事なのだから仕方が無いところだろう。


「おっ、ご飯を食べたんだね。 というかこれは宴会?」


 そこへレイナさんが絡んだ。


「ささやかなディナーパーティと言ったところです。 鈴木さんもご一緒します? 条件調査の成功祝いです。 このぐらいならいいでしょ~?」


「い、いや。 止めておきます。 ささやかであっても夕食とお酒をいただくとなると、贈収賄の可能性もあるんだ。 普通の料亭とかなら費用を出して領収書を貰えば問題ないんだがね」


 レイナさんはニコニコしながら続けた。


「全く堅物ですね~。 そんなことじゃ女子にモテませんよ~」


「あはは、モテなくてもいいさ。 いやモテたら妻に殺されるかも」


「ええっ! 鈴木さんって妻子持ちだったのか~」


 久々に僕の驚き声に、レイナさん達もビクっと反応した。 驚いたことに鈴木さんも同様だった。 まあミレイさんみたいに事前に耐性持ちでない限りそうなることはある程度予想はついていた。


「ぐっ、わ、僕に妻がいるということが不思議だったのかい? でも子供も欲しいんだが未だなんだ」


「なるほど、今は一生懸命に励んでいるってことかな~」


「え、ええとだね」


「でもあんまり仕事に頑張り過ぎると、熟年になって離婚されますよ~」


「ヨシ君、それは大きなお世話じゃないかしら。 そもそも貴方は……」


「ちょ、ちょっと待ちたまえ。 今はそんな話で時間を潰すわけにはいかないと思うよ。 先程報告してトゥルーコアタッチ条件を伝えたところ、すぐに次の候補者数十名をこちらへ派遣することになったんだ。 早く逃げないと君たちも面倒事に巻き込まれるよ?」



 一気に酔いが醒めた。 これは良くない。 だが考えて見ればこの場から逃げることは容易い。 プライベートダンジョンのコアルーム経由で2986初級ダンジョンへ転移すればよいのだ。


「ええと、ここからは2986ダンジョンへ直ぐに逃げられますけど?」


「ああ、……あちらで対応すればいいか」



 そう言っている間に、会議室に設置してある外部マイクが騒音を拾った。 どうやらAI船舶が到着したらしい。 随分と対応が早い。 でも僕らがここで夕食を取り始めて1時間は経過している。 その間に事態が動き出したのかもしれない。


「す、すぐ逃げましょう。 というか”対応”ってなんですか?」


「忘れたかい? スキルオーブとオーブの受け取りだよ。 厳密に個数を数えて録画する必要があるんだ。 30分はかかるだろう」



 ということで、僕らはすぐに2986初級ダンジョンの入口へと退避し、そこの会議室でオーブの引き渡し作業を開始した。 鈴木さんに委ねたスキルオーブは、2986ダンジョンと6963ダンジョンで獲得したものを組み合わせて全部で80個ほど、普通のオーブは2000個を録画した上で譲渡した。 鈴木さんはそれを自身のアイテムボックスへ大事に仕舞いこんだ。 そしてプライベートダンジョン経由で、鈴木さんを中級ダンジョンへと送り届け、僕らは2986初級ダンジョンの会議室へと戻ったのだった。


 トゥルーコアタッチの件は鈴木さんに任せておけば国内関係は大丈夫なはずだ。 だが、外国でトゥルーコアタッチ条件を追い求めている輩は僕らを追ってくる奴らがいないとも限らない。 ならば、ほとぼりが冷める――中級ダンジョンの真の攻略者が多数出る――まで、どこかへ潜伏するのがいいだろう。


 そして僕達は話し合いの結果、2986初級ダンジョンの中に入ることに決めた。 外部情報は遮断されてしまうが、2986初級ダンジョンの中で、この前キャンプした袋小路の小部屋に引き籠ることにしたのだ。 入口は狭いので鉄製の何かで塞ぐのは簡単だ。 そして僕らはセーフティテントを設置し、その隠し部屋からプライベートダンジョンへ入る予定だ。 外よりもステータスに利が出るダンジョン内の方が断然安全だからダンジョン内で引き籠るのが理に(かな)っている。


 2986初級ダンジョンへ入り、そのまま走って例の小部屋に入った。 時間は夜の8時ごろ、まだ寝るには早いが今日も疲れてしまったので、各自個室に籠るか2D版VRルームを利用するかでその日を過ごした。

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