表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

130/202

129.  Max

 戻った会議室の中ではエミリのための勉強会が開かれていた。 攻略のための知識をマリや疾風の白狼の面々が教師となり教えていたのだ。 攻略知識などは通常オンライン授業で習うことなのだが、エミリにとって疾風の白狼の女子達は憧れの人達だ。 その憧れの人達に教えてもらっているので身の入り方が違って捗るので時間が限られている僕らに必要なことだった。 

 鈴木さんは片隅でVRゴーグルを付けて何かの会議に参加しているようだった。 時々見せる厳しい顔つきを気の毒に思いながらも、僕らのために頑張ってほしいと思っている。 


 皆忙しそうだったので会議室に立てかけてあったポータル強化ガラスにプライベートダンジョンを出して中に入ってみた。 するとマリが付いて来た。


「思ったよりも帰って来るのが早かったじゃねーか。 残業は終わったってか?」


「ああ、終わったよ。 成果はバッチリだ。 思うんだけど、僕ってかなり優秀な方なんじゃなかな。 勉強はそこそこだけど」


「……ああ、おめーは優秀だな。 それで何の成果が出せたんだ?」


「ふっふっふ。 聞いて驚くなよ? プライベートダンジョンが変質したんだ」


「ああ、変質したな。 それで?」


「あ、いや。 元に戻ったんだ。 第16区画にアンフェアイソギンが居たんだよ」


「な、なんだと~! お、お前、まさかそれをこんな短期間に、しかも一人で解決したってのか? ……お前って実は優秀な奴だったんじゃねーか」


「……え、ええと?」


「あ、いや。 お前は本当に凄い奴だ。 今の調査で一番困りそうなところをサクっと解決してくるとは恐れ入ったぜ」


「……」


「それで元に戻ったってことは、希少オーブも獲得できるってことか?」


「ま、まあそういう事さ。 一応アンフェアイソギンをサクっと倒して、希少オーブがドロップすることまでは確かめたよ。 ここの会議室で作ったプライベートダンジョンでも恐らく第16区画にアンフェアイソギンがいるから、今はそれを確かめようとしているってことだよ」


「なるほど。 わかったぜ。 確かめてから皆に報告ってことか。 それなら俺もちょっと付き合わねーとな。 それでその後で2986初級ダンジョンの入口まで送ってくれるか? 叔父に連絡したら頼んでおいた防具ができてるって事らしーから取りに行きてーんだ。 張り切って頑張ったら短期間で出来ちまったらしい」


「2986初級ダンジョンの入口なら、送ってあげなくてもコアルーム経由で星印1つのゲートを(くぐ)るだけで一人で行けるよ? でもまぁ討伐を手伝ってもらえるんなら助かるよ。 一緒に第16区画で暴れようか」


 僕とマリは、そのままコアルームへのゲートを潜り、そこから第16区画へ入った。 もちろん僕の思った通りそこにはアンフェアイソギンが居た。


「おお~。 確かにイソギンだな。 じゃあやってしまおうぜ~」


 僕とマリは手分けしてアンフェアイソギンの討伐を開始した。 マリも討伐経験者なので十分戦力となっている。 そして奴らを30分程で倒し切り、ついでに第15区画のレッドカウも倒しておいた。 その結果、得られたスキルオーブは9つだった。


 僕とマリでそれらのスキルオーブを使ってみた。 その結果僕のステータスは以下のようになった。



 LV 100


 HP   4000 + 280%

 MP   4000

 STR  4000 + 300%

 VIT  4000 + 400%

 AGI  4000 + 300%

 DEX  4000 + 340%

 INT  4036 + 160%

 MND  4000


 スキル:  体力14(ON)、筋力15(ON)、頑健20(ON)、俊敏15(ON)、器用17(ON)、知力8(ON)、回復魔法3(50/50)、アイテムボックス20max (10/10)、看破6、重量9(OFF)、雷魔法9、

 ユニークスキル:  急所突き、ダンジョン生成、ダンジョン内探知、アイテムボックスEX。


 やはりスキルオーブの種類も元に戻っていた。 そして僕には使えないスキルオーブがあった。 それをマリが使ったところ頑健が上がったとのことだった。 僕は体力と器用、そしてアイテムボックスが2回上がり。 アイテムボックスもカンストしてしまった。 アイテムボックスについては、数字の後にmaxがついているところが頑健とかのスキルと違うところだ。 

 マリは、頑健と、体力、筋力、そしてアイテムボックスが上がり、僕と同じようにアイテムボックスはカンストした。 マリと僕が使えないスキルオーブがあったので、それはアイテムボックスのスキルオーブで間違いないだろう。


 ドロップ品を回収してから、コアルームへと戻り、そのまま2986初級ダンジョンの入口へと出た。 僕も防具を見たいから一緒について行こうと考えたのだ。

 そして最早お約束の事態が起きた。


「アギャッ」

「ふぎゃ」

「ぐふっ」

「おふっ」


 女子達4名と鈴木さんがダンジョンの入口に突っ伏していた。



「え、ええと。 何故そこに?」


「ま、また叩き出されたってことなのね」


「皆は会議室の中でお勉強中とか会議中だったんじゃないの?」


「そうでしたね。 わたくし達が勝手に入ったのが悪かったようです」


 レイナさん達は突っ伏した状態から立ち上がり、少し気まずそうにしながらも僕を見ている。



「でも、何故僕のプライベートダンジョンに入る必要が?」


「それは、……もちろん快適ですから。 それに美味しい食事も取れますし」


「まさか、鈴木さんも?」


「あ、ああ。 私も少しストレスを発散したくて、シミュレーターを使用させてもらおうかと思ったんだよ」


「な、なるほど。 でも勝手に入るとこれからもこんな目に会う事になりますね」



 そこへ例の如く職員の方がやって来た。 その職員の方へは今回も鈴木さんが対応してくれた。 

 

 マリはそこからAI自動車をチャーターして武具店のオジサンのところへ向かった。 その際ブラックカウからドロップしたエムレザーをオジサンに渡すようにマリにお願いしておいた。 ブラックカウのエムレザーはレッドカウからドロップしたものと同等レベルの品質のはずだが、レッドカウのエムレザーとブラックカウのエムレザーは色合いが少し違っている。 つまり性質が異なる可能性があるのでオジサンに確かめてもらいたかったのだ。


 鈴木さんと僕、そしてミレイさん達とエミリは2986初級ダンジョンの会議室へと入った。 そしてプライベートダンジョンを生成して中へと入った。


「やっぱ会議室より、こっちのほうが快適よね~」


「あ、あのですね。 僕はスキルオーブ集めの残業をしたかったんだけど……」


「ヨシ君。 あまり焦らなくても何とかなると思うわ? これは私の勘なのだけどね」



 う~ん。 カナさんの勘か。 でもこれって快適に休みたいための口実に使ってないか?  



「カナ、貴方。 目が泳いでいるわよ? 貴方は嘘が下手ね」



 なるほど、カナさんは嘘つくと目が泳ぐのか。 ということは休みたい口実だったってわけだな。 お父さんを(たぶら)かす時もそういう感じなのか? まあ酔わせてしまえば嘘かどうかなんて分からないのかもだが。


 そんなことを思いながら、ふと皆の様子を見てみたが、元気なのはエミリだけで他は皆疲れているのが丸わかりだった。 今は仕方ないかもしれない。 会議室で寝泊りなんて悲しすぎるし、今から宿へ移動するなんて非効率なことはしたくない。 今日は僕の快適空間で休んでもらおう。 だがその前に……。


「ええと。 皆疲れているようだから残業は止めておくね。 だけど重要な報告をしなきゃならないことがあるんだ。 是非聞いてほしい」


「……」


 皆の動きが止まった。 僕は変なことを言っただろうか。 それにしては皆が緊張して僕を見ている。


「あの~。 何で皆、黙り込むんだ?」


「それはね。 重要とか言われると、恐ろしいからなのよ。 今日はもうコアルームのゲートの件だけでお腹がいっぱいだわ」


「それで重要な報告とは一体何なんだい?」


「あ、ああ。 コアルームのゲートほど重要じゃないかも。 簡単に言ってしまうと、このプライベートダンジョンの魔物が変わってしまった原因がわかったってだけさ」


「えええっ? それ本当? 本当なら凄いじゃない。 どうやってわかったの?」


「ええとそれはね。 レベルから分かったんだ」


「……ごめん。 意味がわからないかも」


「ええとね。 僕のプライベートダンジョンの変質には、ダンジョンの影響が関係していて……」



 僕はプライベートダンジョンが元に戻るまでの一部始終を説明してあげた。 そして僕にもマリにも使えなかったスキルオーブをアイテムボックスから出してみせた。


「これはアイテムボックスのスキルオーブです」


「なんだって? 君はスキルオーブの種類が何なのかを知ることができるのか?」


「いえ、単に僕とマリが使えなかったスキルオーブだからアイテムボックスのスキルオーブだとわかったんですよ」


「スキルオーブが使えない? そのような事例は属性のスキルオーブでしか知らないな?」


「今僕のプライベートダンジョンの性質からすると恐らく属性スキルオーブではないです。 まあ確実ではないですけど」


「でもなぜアイテムボックスのスキルオーブだとわかったのかな?」


「それは僕とマリのアイテムボックスがカンストして、アイテムボックス20maxになったからです」


「20maxって?」


 興味をもったカナさんが聞いて来た。 女性陣は本当にアイテムボックスに敏感だ。



「他のスキルが20で限界に達するけど、maxって付かないよね。 たぶんアイテムボックスは本当にこれで限界なんだと思う」


「つまり君たちのアイテムボックスはレベル20に達してmaxが付いたといことなんだね。 それはつまり、他のスキルは何かしらの条件でレベル20を超える可能性があるということ……」


「まあ、そういう事なのかもですが、その辺の謎は……、今は追及したくないですし、ややこしいので秘密でお願いします。 それに今は、……ええと、プライベートダンジョン変質の話です」


「あ、すまない。 そうだったね。 それで、そのアイテムボックスのスキルオーブ、……凄く貴重なものだが、それで一体。 あっ! トゥルーコアタッチ条件に希少スキルの取得が関係しているかを調べることができるということか!」


「ええその通りです。 そしてもう一つ。 この際だから変質前のプライベートダンジョンでもスキルオーブ集めをしておきたいです」


「なるほど。 それはそうだね。 うむ。 だが、スキルオーブ集めは明日からだね? そして準備ができたら、……私で検証してみるということなんだね」


「もちろん最初からそのつもりだったですよね」


 ということで僕らの次の日の予定は決まったのだった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ