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13/202

13.  オーク

 ミレイさんは出だしこそ遅れを取ったが、ゴブリンの集団に接敵する頃には僕と同じく先頭を切っていた。


 そしてゴブリンとの本格的な戦闘が始まった。

 正直言ってゴブリンは弱い。 攻撃してきても余裕で(かわ)せるし、こちらが攻撃しても特に回避しない奴だから雑魚だ。 

 僕はゴブリンの攻撃を簡単に躱して速攻で2匹倒した。

 ミレイさんも同じく2匹倒し、他の2名は1匹ずつ倒して、あっけなくゴブリン討滅戦は終了してしまった。


 <レベルが上がりました>


 僕はレベルアップした。

 パーティ戦でも一定レベル以上の魔物を倒し、周囲に敵対する魔物がいなくなれば経験値が入る。  

 この場合のパーティとは、止めを指した者がそう認識している者達の集団だ。 少なくとも僕はゴブリンに止めを刺したし、脱落してしまっていた2名もパーティの仲間と考えている。 つまり脱落者2名にも経験値は入ったはずだ。



「ステータスオープン」


 僕は心の中で念じてみた。


 LV   2 


 HP 108

 MP 100

 STR 100

 VIT 100

 AGI 111

 DEX 100

 INT 100

 MND 100

 ユニークスキル 急所突き


 そしてゴブリンがダンジョンへ吸い込まれるように消えて行き、エネルギー石と1枚のエムレザーをドロップしたので、僕らはそれらを回収しようとした。



 その時、異変が起きた。



 僕たちが倒したゴブリン達の死骸のあった場所にそれぞれ小さな黒煙が立ち始めたのだ。


 ヤバイ!

 これは動画で見たことがあるパターン、つまり魔物が出現する兆候(ちょうこう)だ。 

 今まさにその非常に稀な事が起ころうとしている。


 僕は皆を振り返ったが、気づいているのは僕とミレイさんだけだった。 そしてミレイさんは固まってしまっている。


「トイレ!、トイレ!、トイレ~~!!」


 僕はあらん限りの力を振り絞って絶叫した。


 教官たちも他のメンバーも僕の絶叫に反応し、ただちに事態を把握してくれた。 

 危機を感じ取った教官Aと教官Bが僕らの方へと向かって来ようとしている。

 だが魔物の出現の方が早い。


 現れた魔物はオークだった。 オークが6匹、しかもそのうち3体は剣を持っている。

 すなわち上位種のオークファイターが3体も含まれていた。


 通常種のオークについては僕らの装備の防御力でも問題なく対処可能のはずだ。 しかしオークファイターとなると話は別になる。 まともに攻撃を受けたら低品質なエムレザー製の防具では、怪我する可能性が高い。


「君たち、下がりなさい!!」


 教官Aが僕たちに大声で指示を飛ばしたが、既にオークたちは僕たち実習生にターゲットを定めて襲いかかろうとしている。

 

 僕にはオーク一匹が敵意を向け、ミレイさんにはオークファイター一匹が敵意を向けている。

 他の2名にはオークファイターとオークがそれぞれ2体ずつが敵意を向けていて、その二人はあまり強くない実習生なので大変危機的な状況といえる。


 ミレイさんは僕の言葉によるアシストで一瞬だけ我に返ったが、オークファイターが歯を剝きだして威嚇したことで、またも固まってしまっていた。 

 僕は僕に敵意を向けるオークを無視して、そいつを引き連れたまま、ミレイさんとミレイさんに敵意を向けているオークファイターの間に割り込んだ。


 ガッキン


 ミレイさんに向けてオークファイターが剣を振り下ろしたが、僕がそれを剣で受け止めた。


「トイレ! そっちのオークをお願い!」


 僕は固まっているミレイさんを至近距離から応援してあげるとともに、オークの相手をお願いした。

 

 オークファイターの攻撃を僕は剣で受け止め続けている。 もう一匹の通常オークも棍棒を振り回して、時々僕に攻撃を命中させていたが、エムレザー製防具の防御力のお蔭でダメージは少ない。 僕の応援とお願いで我に返ったミレイさんは、僕に攻撃を仕掛けているオークの棍棒攻撃を剣で受け止めてくれた。


 ガキン、キン、キン、ガン


 僕は防戦一方だが確実にオークファイターの攻撃を(しの)いでいる。

 凌ぎながら見た周囲状況は、オークファイター2匹に教官2名が一匹ずつ相手しており、他の実習生は一匹ずつオークを相手しているようだった。 その実習生の1名は教官が来る前にオークファイターにやられて怪我を負っている状態だ。 明らかに優勢なのはオークを相手しているミレイさんだけだ。


 バシュッ。


 そして優勢だったミレイさんは、相手のオークを剣で切り裂き倒してみせた。

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