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122.  クリーニング

 ミーアンキャットの群れを殲滅し終えた僕らは、この中級ダンジョンのダンジョンコアルームを目指して移動を開始した。 暫くすると次の魔物の群れに遭遇した。 トロイカディアと呼ばれているトナカイのよう奴で、角が大きく水魔法を使う奴だ。 レベルは60付近であるので雑魚なのだが……。


「ちょっと待て! 一匹だけレベル162の奴がいるぞ。 気を付けろ」


 マリが警告を発した。 僕は軽く討伐してやろうとしていたのだが、その言葉で思い止まった。 先のスーパーミーアンのように苦戦するのは面白くない。 それを見てミレイさんがつぶやいた。


「ここにもイレギュラースポーンの魔物がいるのね。 流石に異常な気がするわ。 これって……」


 ミレイさんのつぶやきに呼応するようにカナさんがレイナさんに問い掛けた。



「ねえレイナ、このダンジョンって実はヤバかった? やっぱイレギュラー進化が進んでるんかな?」


「カナ、言葉使いに気を付けてね。 そうねぇ、イレギュラー化が進んでいるとなると、危険ダンジョン一歩手前なのかもしれないですね。 一度殲滅してしまわないと安全な中級ダンジョンに戻すことはできないわ」


「殲滅するってなら、俺は構わねーが。 このダンジョン内の魔物を全てってことか? イレギュラーがいる群れだけ討伐するってってことか?」


 レイナさんはマリの質問に対して頭を振って答えた。



「マリちゃん、イレギュラー化が進行し始めた場合、止める手段はダンジョンクリーニングしかないと言われています。 つまりダンジョンの魔物を一旦殲滅させるということになりますね」


「僕はどっちでもいいけど……。 面倒だからクリーニング?していいんじゃないかな」


「俺はクリーニングに賛成だな。 群れに上位種がいるかどうかを見て、居なかったらそのまま殲滅すりゃいいし、居た場合は一旦シミュレーターで練習だな」


「え~面倒だな。 僕としてはとりあえず突っ込んでみて……」


 ミレイさんがそんな僕にため息を付きながら呆れたような顔をした。



「ダメよ、二度と危険な目には遭いたくないわ。 そうでなければこのダンジョンは諦めて他のダンジョンを攻略すべきだと思うわ」


「ミレイさんにしては消極的だな~。 でもまあ危険な目に遭いたくないのは僕も一緒かな」


「では、マリちゃんの案で殲滅開始ということでいいかしら?」



 そういう事でダンジョンクリーニング――ダンジョン内の魔物を一掃する方針になった。

 先ずはトロイカディアを殲滅を開始した。 事前にシミュレータで試したところ上位種はノーマル種と性質が同じで、それを強力にしたような相手だった。 ミレイさんの土魔法は使った途端に感知されて無効化されてしまうので、カナさんとレイナさんの火風の複合魔法で焼いてもらった。 


 そしてこの階層では、他に6種の魔物がいたが全て殲滅しておいた。 ちなみにその6種の内5種にイレギュラーな上位種が混ざっていて、中でもレッドウルフは12匹もの上位種が混ざっていたのには驚きだった。 もちろんシミュレーターで事前に試してから戦ったので安全に倒せたことに違いはなかった。 ついでだからマップと魔物生息分布も作成しておいた。 このダンジョンには正確な地図もない位だったので後でボランティアで公開する予定なのだ。


 第4階層全てを回り、魔物を殲滅させた僕らはダンジョンボスに挑んだ。 幸いにもそのボス――サバンナオーガはノーマルでレベル108の単なる雑魚だった。

 ボスモンスターの討伐後コアルームに入り、タグ認証用の装置で冒険者タグに記録を残した。 それから例のコアタッチ儀式――ダンジョンコアに素手で触ってお祈りする儀式――を行っておいた。 このコアタッチが何を意味するか不明だが、前回同様にコアタッチした瞬間に頭に何か入って来る感覚があった。


 これにてこのダンジョンでの目標は達成された(正確には帰還して攻略証を得ること)ので直に帰還を開始した。 第4階層はダンジョンクリーニングが完了しているので、第3階層のダンジョンクリーニングも行ってその日は終わった。 ちなみに第3階層のイレギュラー化は8種類中2種類だけだった。


 プライベートダンジョンの中でゆっくりと過ごし、翌朝第2階層へと戻りダンジョンクリーニングを開始した。 第2階層は分岐路が多く広くて入り組んでいたが、カナさんの誘導は的確で半日ほどでクリーニングを完了できた。 そして第1階層へと移動してそのままクリーニングを続けた。 第1階層は第2階層よりも分岐路が多く広かったのでやはり半日を要し夜になってしまった。 このままダンジョン管理センターへと戻ることも考えたが、プライベートダンジョンの中の方が快適ということでその日もプライベートダンジョンに宿泊して体を休めたのだった。


 翌朝僕らはダンジョン管理センターへと向かうためダンジョンの入口付近まで戻ってきていた。 そして入口付近に多くの反応が探知に引っかかった。


「え~と、もうダンジョンの入口付近だよね? ここから先に20近い反応があるけれど、これって冒険者かな?」


「ヨシ君の探知って、人と魔物の区別はわからないの?」


「至近距離なら、ミレイさんとカナさんぐらいなら区別できます」


「どういうこと? 私達は魔物とかじゃないんだけど。 探知じゃなくて、見れば分かるとかの落ちなの?」


「ええと、魔物じゃなくて魔性の女……」


 ミレイさんが久々に剣に手をかけるが見えた。 

 これだけパーティで一緒に行動してもまだ冗談が通じないのか~。 ちょっとがっかりだけど、これからも時間を掛けて辛抱づよく教育していく必要があるということなのかもな。 僕は真面目だけど、彼女達はもっと真面目過ぎる気がする。


「あ、いや。 探知では大きさだけが少し区別できるんです。 つまり人の大きさと同じ魔物は人とは区別できないってことです」


「じゃあ、私とカナのサイズは区別できるということ?」


「も、もちろんですよ。 10m程まで近づけば違いはわかります」


「それって視認できる距離より近いわね」


「え~と、その。 ”噛み付き小石”とかの魔物は小さいことが分かれば特定しやすいですよね。 それに見えざる魔物だって見つかるかもなんですよ」


「見えざる敵って、そんなのがいる訳……」


「ミレイ、私達は相当数の新しい魔物を発見しています。 今後そういうのもいるかもですね」


「そ、それは怖いね」


「……」


「で? 俺たちはこれからどうするんだ? このまま進むってことでいいのか?」


「この先に20名程の冒険者がいるということですね。 こんな辺鄙な場所のダンジョンに何故そんな人数が来ているのかが問題ですね」


「レイナさん、彼らはこのダンジョンをクリーニングしに来たんじゃ?」


「流石にそれは無いと思います。 いくらあのコーちゃんさんでもダンジョンクリーニングが必要なダンジョンに私達を立ち入らせる訳にはいかないはずです。 それをやったとしたら任務怠慢では済まされない行為です。 それに近くにいたハミンちゃんさん?も止めなかったですからね」


「……」


「レイナ、いずれにしても彼らに会うことは避けられないんだから行っちゃいましょう。 ソイツ等が多少ガラが悪い奴らでも、ダンジョン内でならステータスが高い私達を害することはできないわ。 もちろんダンジョンから出たらステータスの効果が無くなるから気を付けないといけないけれどね」   


 カナさんが結論を出してくれた。 確かにその通りだ。 僕らはこのまま進むことに決めた。

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[一言] 無敵ってことは殺しても動揺しないってこと? それとも無力化できるから?
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