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118.  実害なさそう

 ドロップ品を回収後、すぐに残る1匹のノーマルのホウセンカを排除して第16区画を完全に制圧した。 そして例の如く今後についての話し合いの時間となった。


 魔物はレベルが高くなるほど新たにスポーンしてくる時間は長くなるので当分の間は安心できる。 僕はアイテムボックスEX経由でテーブルや椅子を出して休む環境を整えた。

 僕は今回の戦利品のユニークスキルオーブと、スキルオーブ、短槍、黄色い種、(まだら)模様の種を数個テーブルの上においてみた。 その瞬間、彼女達に顔に緊張が走った。


「ええと、スキルオーブは今まで通り使っていくとして、先ずは種をどうするかですね。 ミレイさん、これって土魔法で使えるんですよね?」


「ええ、使えるわ。 弾丸のような感じかな。 30m以上離れた敵には最大威力の弾丸をお見舞いできるわ。 土魔法のレベルが上がったから効果範囲が多少長くなったみたいで長く加速できるからそれだけ威力が増したのよ」


「じゃあ、緋色のナイフに頼らなくてもいい感じですか? ナイフはエムレザー加工に必要になるし、今は手に入れられない状況だから結構貴重なんだよね」


「確かにね。 お返しするわ。 ただ、切る攻撃には必要そうだから3本だけは手元に残したいの。 そして黄色い種のことなんだけれど」


「どうしたのさ」


「アイテムボックスへの保管はいいのだけれど、頻繁に取り出すにはカウンター制限がネックになるの。 だから常時20個は外へ出して持ち歩くことになりそう。 そしてお願いなんだけど、その黄色い種の半分ぐらいは私に預からせてもらえないかな」


「あ、ああ。 僕が持っているよりもその方がいいね。 全部渡しておくよ」


「い、いえ。 それは困るわ。 さっきも言ったけどカウンターがゼロになったら困るから、半分は持っててほしいの」


「おっけー。 それよりも黄色い種って、土魔法使い専用武器ってことになるのかな。 これって公開して供給すれば土魔法使い以外の僕達でもライフルのような遠隔武器で使えるようになるかな?」


 ミレイさんは少し考えた。 僕が考えるよりも複雑な話だっただろうか。 


「ええと、それは……。 ダンジョン武器以外の武器は一般的に免許と登録が必要だから、すぐには使えないわ。 それに、弾丸は横回転をかけないとまっすぐに飛ばないはず? そのための弾頭や薬莢(やっきょう)、専用の銃の開発も必要だし、ダンジョン省の許可とかも色々大変そうだけど……」


「そうか、すぐには無理なのか……」


「いえ、すぐには無理だけれど、事情を話して交渉してみることにするわ。 とりあえず私に任せておいて頂戴。 1000個ぐらいを研究機関に渡して開発してもらうのがいいと思うの。 この開発に成功すれば戦闘が楽になるもの。 けれど……」


「うぁ~。 私達は銃を持ち歩くことになるの?」


「カナ、お前には火魔法という恐ろしい遠隔攻撃があるじゃねーか」


「そんなの関係ないわ。 銃って何か近代的でカッコイイじゃない」


「……」


「カナの要望はともかく、武器としては土魔法使い優先で配ることになると思うわ。 しかも銃も土魔法使い優先に配布されることになるかも」


「ん? どいゆうことだ? ミレイ、俺にも分かるように説明しろ」


「まず火薬が問題ね。 ダンジョンの中では火薬の燃焼反応速度が遅くて思ったよりも弾に威力が出ないわ。 それでも銃で打ち出される弾丸は初速は速い。 それに対して土魔法は始め遅くても距離に応じて速度があがるから終速度は高くなるの。 つまり組み合わせれば、威力は格段に上がるんじゃないかと。 そうなれば限られた数のダンジョン弾丸を有効利用するためには、効率的に使える者が優先ということになるはずじゃないかしら」


「でもさ、1万6千個もあるんだ。 数は十分じゃないのかな」


「そんなの冒険者数に比べると十分とはいえないわ。 一人1000個位持ちたいとなれば、全世界の土魔法使いの数だけみても、恐らく全員に配るとしたら不足なんじゃないのかなと思う」


「ミレイ、そこで交渉ということね。 ある程度の数を供給するから私達に優先的にダンジョン弾丸と専用銃を使わせてほしいと」


「じゃあ、ここを周回して数を補充しておけばいいじゃねーか」


「い、いえそれはちょっと。 それに本来の目的は、土魔法用のナイフの補充だったはず。 ナイフの補充が弾丸の補充に変わってしまったけれど、今は数的にはもう十分よ」


 それまで大人しく聞いていたレイナさんが口を出してきた。



「そうですわね。 本来は休息のためにプライベートダンジョンに入ったはずですが、攻略を頑張ってしまいましたね。 この辺で一旦本筋へ戻す必要があるのだわ」


「なるほど、だけど、このユニークスキルオーブの扱いだけは決めておく必要があるんじゃないかな」


「……」 


「ユニークは上限突破に必要だけど、今の僕では上限突破は出来ないみたいだから、誰か使ってみない?」


「ユニークは駄目。 流石に角とか生えたら嫌なのよ。 マリちゃん、そうマリちゃんよ。 ヨシ君のステータスが上がらないなら、次はマリちゃんのステータスを上げた方が戦力アップにならない?」


 言われてみればパーティの中ではマリが少し弱めだと感じる。 ならばもう一つユニークを使って限界突破でステータスを強化してしまっても良いかもしれない。 僕はミレイさんの主張に従ってマリにソレを差し出した。


「ま、また俺が使うことになるのか?」


「まあいいじゃないか。 でも次からは彼女達の番だと思うし」


 マリは疲れたような顔をして催眠術にかかったようにユニークスキルオーブを受け取って握り潰そうとした。


 くにゃっ。


 ところがそのユニークスキルオーブは潰れなかった。 つまりマリを拒否したのだ。 属性スキルオーブが他の属性スキル持ちを拒否するように。


「なんだこりゃ? 使えんぞ?」


「こ、これはどういう事なんだろう? もしかしてこのユニークスキルオーブって属性タイプ? ミレイさんどう思います?」


「ええと、属性タイプかもしれないし、そうでないかもしれない。 この5人の中で誰が使えるかは不明なスキルってことなのかもしれない」


「じゃあ次はミレイさんが試して見てください」


「ええっ? それは、なんで? ……じゃんけんで順番を決めてはどう?」


 またじゃんけんか~。 じゃんけんは一見公正にみえるけれど僕のAGIとかのステータスだと見切れちゃうんだよな。 まあいいけど。 


 そしてじゃんけんが始まり、僕は一番先に負け抜けてあげた。 これで彼女等の誰かが使うことになるはずだ。


「ヨシ君、残念だったわね。 それじゃあ使って見せてよ」


「えっ? なんで? 僕は負けたよね」


「だからよ。 負けた者がユニークスキルオーブを使うのよ」


「えっと。 勝った人が使うって決めなかったですか?」


「……それは、普通のスキルオーブの話だわ。 ユニークスキルオーブの方は新たに、……だから、じゃんけんのルールはリセットされたのよ。 これは常識よ?」


「いや、常識ってなんだよっ! ……ふぅ、まぁいいか。 どちらにしてもこれってロシアンルーレットみたいなもんだし、それを誰が先にやるかどうかの話だしね」


 そう言って僕はマリから虹色模様のユニークスキルオーブを受け取り、握り潰そうと試みた。 食べてみたい気もしたが、もし食べられなかった場合、彼女達に僕の唾液がついたオーブを渡すことになる。 それは、……今回は避けてあげた方がよさそうだ。


 くにゃっ。


 けれど僕にもそのオーブを使うことはできなかった。


「ははは。 使えませんでしたね。 次はだれが?」


 次にじゃんけんで負けたミレイさんが使おうとして失敗した。

 そして、レイナさんの番が回ってきて、オーブは潰れて使えてしまったのだった。


「……」 


 目を閉じて暫く無言だったレイナさんが覚悟を決めて話し始めた。



「ええと、私はユニークスキル、風の加護を取得しました。 その影響なのか風魔法スキルにx50がついてしまいした。 これってどうしましょう」


「そ、それはまた強烈な。 か、カナさんでなくて良かったです。 風魔法なら防御支援系だから、僕達には実害なさそうです」


「よ、ヨシ君。 私の火魔法は実害あるというの?」


「いや、そういうわけじゃなくて。 カナさんもわかるでしょ? 火魔法の場合は、下手すれば自爆魔法になっちゃうじゃないですか」


「……それはそうだけど。 まあいいわ、でもレイナおめでと~。 これで私も遠慮せずに全力で魔法が使えるわ」 


「レイナ、おめでと~。 カナは、自重を覚えた方がいい気がするわ」


「おめでとう。 レイナ、お前のウインドバリアを見てみたいぜ」


「おめでとうです。 レイナさん、実験は事前に、そして計画的にお願いします。 それに角が生えなくてよかったです」



 そしてレイナさんの風魔法の実験が行われた。 ウインドバリアは本当にバリア化して、透明な個体の壁のようになった。 そしてその壁は僕の緑色の剣の攻撃をも弾いてみせた。 さらにそのバリアは熱線遮断効果もあるようで、カナさんの全力範囲火魔法を完全にシャットアウトさせていた。


 バリアの厚さは約2m程もありレイナさんの許可がないと進めなくなるのでバリア内から一方的に剣の攻撃を仕掛けることは困難だ。 それに対してウインドバリア内から火魔法も放てるし、ミレイさんの種攻撃も治療も可能だった。 外からの攻撃は物理も雷系以外の魔法も防ぐが、中からは遠隔攻撃は可能だが近接攻撃は不可という具合だ。  ウインドバリア展開後でもそのバリアを通過できるかはレイナさんの意思次第というところがなんとも都合が良すぎる気がする。


 これによって僕らの防御力は恐ろしいほどに上がったことになった。


 その後スキルオーブを使い、レイナさんは限界突破したので追加のオーブも使った結果、皆のステータスは以下のようになった。

 


ヨシ、 ステータス all 4000

    アイテムボックス15、体力9、筋力15、頑健20、俊敏15、器用13,重量9、

    看破6、回復3、知力8、雷魔法9、

    急所突き、ダンジョン生成、ダンジョン内探知、アイテムボックスEX。


マリ、 ステータス all 2000

    アイテムボックス16、体力8、魔力7、筋力4、頑健12、器用1、

    知力6、水魔法14、

    看破EX。


ミレイ、ステータス all 1000

    アイテムボックス14、筋力4、頑健11、俊敏8、器用4、重量5、治療5、

    知力3、土魔法13。


レイナ、ステータス all 2000

    アイテムボックス14、筋力2、頑健14、俊敏5、器用4、看破2、

    知力6、風魔法9 x50、

    風の加護。


カナ、 ステータス all 1000

    アイテムボックス17、体力12、魔力8、頑健15、器用6、重量1

    知力8、火魔法16。



 全員がINTを高める知力増強スキルを獲得している。 何と言ってもレイナさんの風魔法が抜きんでている。 やはりユニークスキルの効果は大変高いと言えるだろう。 

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[一言] プライベートダンジョンの変化理由が判明してないのに、そのドロップありきの供給は不安があるな
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