彼女は意外と……
「なぁに?また来たの?」
「だってご本人に直接お訊きするのが一番いいと思いますもの」
「貴女ねぇ、これは一応勝負なのよ?」
「でも折角ご本人と接する事が出来るのに、それを使わない手はありませんわよね?」
「……それもそうねぇ。え?そうなるのかしら?」
「ふふふ」
このところ、イズミルは度々隠し部屋に居るダンテルマの元へと足繁く通っていた。
正確に言うなれば、
ダンテルマの残された魂の一部に会いに行っている……だが。
最後であり最悪であると本人が言っている呪詛の在りかを紐解く為の手段として、イズミルはかつてダンテルマが書いた私信を調べている。
その中で分からない事がある度に、こうやって直接本人に訊きに来ているのであった。
「という訳で「どういう訳よ」また質問にお答えくださいませ」
途中で横槍がはいったが気にせずそう告げ、
イズミルはグレガリオ所蔵のダンテルマ直筆の手紙を開いた。
「この、『貴方の最愛の二人の恋人、孤高の騎士も深窓の令嬢も…』とありますが、この意味がよく分からなくて……恋人は騎士と令嬢のどちらかなのでしょう?二人、というのは?」
イズミルのその問いかけに、ダンテルマは端的に答える。
「ああ、それはその手紙を宛てた人物が両刀使いだからよ」
「両刀使い……?」
訊き慣れぬ言葉にイズミルは首を傾げた。
「異性も同性も両方愛せるって事♡」
「あ!なるほど!合点がいきましたわ」
謎が解けてスッキリした顔をするイズミルが持つ手紙を見ながらダンテルマは言った。
「それにしてもよくそんな物が残っているわね。まさか数百年後に私が書いた手紙がこんなにも多く残っているなんて驚きよ」
「わたくしの恩師アルメラス=グレガリオがダンテルマ様の大ファンなのです。師匠は貴女の手紙や私物とされている物のコレクターでもあるのですわ」
ーー師匠、ちゃんとアピールしておきましたわよ。
と、イズミルは心の中でひとり言ちた。
「へぇ。狂妃と言われ、最悪な逸話ばかりの私のファンなんて、かなり変わっているのねぇ」
「師匠はいつも、ダンテルマ様はチャーミングだと言っておられますわ」
「ふぅん」
ダンテルマは愛人達以外にこうやって、好意を寄せられる事が少なかったのだろうか、満更でもなさそうに少し照れた様子で顔を背けた。
ーーやっぱり。意外と素直な方なのよね。
イズミルはダンテルマと接するようになってそんな彼女の一面を見るようになっていた。
実際、彼女は質問した事に全て答えてくれる。
意地悪をしたり、嘘の答えを言ったりズルをする様子もない。
かつて規範の書の一部を取り出す為にイズミルが開けたユニコーンの封印箱は愛人の一人である魔術師が教えてくれたのだとか、
大金を渡して、異国までその封印箱を買いに行って貰ったのだとか、王室規範に仕掛けた様々な呪詛もその魔術師に教わりながら施術した事などを色々と語って聞かせてくれた。
もともと魔力量の多かったダンテルマ。
必要な知識さえ教えて貰えば直ぐにそれを自分で施行出来たらしい。
ーーでもそれって、口で言うほど簡単な事ではないと思うわ。
魔力を高め、整え、術式を正しく理解して唱える。
どの呪詛や封印術も、薬物を濫用するような人間に扱えるような簡単なものではない。
その考えが頭に浮かんだ時に、
イズミルはある答えに辿り着いたのだった。




