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後宮よりこっそり出張、廃妃までカウントダウンですがきっちり恩返しさせていただきます!  作者: キムラましゅろう


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また必ず

お読みいただきありがとうございます!

「まだお熱がありますわね」 


「すまない……」


「謝られる必要はないですわ。熱なんて誰でも出しますもの」


「……でもイズミルは滅多に発熱しなさそうだな」


「確かに!最後に風邪を引いたの何年前だったかしら?」


「ふっ……あはは……」



二人で星空を見上げた次の日、チビグレアムは熱を出して寝込んだ。


色々悩み、考えすぎた疲れが出たのだろう。



「熱が出ていても解呪をすれば良かったのだ……」


ベッドの中でチビグレアムが弱々しく言う。

イズミルは首を横に振った。


「解呪の儀は何が起こるか分かりませんから、万全の体調で臨まなくてはいけませんわ」


「そうか……でもイズミルに申し訳なくてな……」


「どうしてですの?」


「早く大人の俺に会いたいだろう?」


「あら、わたくしはお小さいグレアム様が大好きですのよ?それに大人のグレアム様はこんなにしおらしくわたくしの言う事なんて聞いて下さいませんもの。体調が悪くても大人しく寝ていてくれないのです。大丈夫だとか言って、すぐに執務室へ行こうとするのですよ。だから今のお利口さんのグレアム様で良かったのですわ」


「俺は仕事人間なのか」


「まぁ…王が勤勉なのはとても良い事ですけれど。

国王があくせく働いて国民はのんびりする…そのくらいでいいのだと、よく大人のグレアム様は言っておられるんです」


そう言っていた時のグレアムを思い出し、イズミルは思わず微笑んでいた。

それを見た小さなグレアムが言う。


「イズミルは本当に俺の事が好きなのだな」


「はい。九歳の頃に初恋を抱いてからずーっとお慕いし続けておりますわ」


「今の俺と変わらぬ頃から……でもどうなんだろう。この場合、俺の初恋の相手もイズミルという事になるぞ」


「えっ?」


思いがけない発言に、イズミルは目を丸くする。


「俺は今まで女の子を好きになった事はない…その……イズミルが、初めて好きに…なった人だ……だから俺の初恋もイズミルになるのではないか……?」


「そ、そ、そうなりますわね……」


イズミルの頬が淡く朱色に染まる。


それを見て、チビグレアムは水を得た魚のように揶揄った。

自身の照れを隠すために。


「なんだ、イズミルは大人なのにこんな事くらいで恥ずかしいのか。顔が林檎みたいに真っ赤だぞ!」


イズミルは手で頬を押さえながら言い返す。


「グ、グレアム様だってお顔がトマトみたいに真っ赤ですわっ」


「こ、これは発熱のせいだっ!」


「ウソばっかり!」


年の差夫婦でわーわーと楽しそうに賑やかにするのは良いが、結局グレアムの熱が完全に下がるまで三日を要した。





そして快癒したその日の朝。


グレアムは皆にこう告げた。


「今日、解呪する。そのつもりで準備をしてくれ」


「承知いたしました」


ランスロットをはじめとする側近の皆が、小さき王に礼を執った。



解呪の場所はかつてイズミルが王室規範の解呪を行った会議室でとなった。


グレガリオが解呪の為の魔法陣を作成する。


グレガリオの助手や側近達が慌ただしく動いていた。


その様子をチビグレアムとイズミルは椅子に座ってぼんやり眺める。


ふいにグレアムが言った。

前を向いたまま、イズミルの方を見ずに。



「………イズミル」



イズミルもグレアムの方を見ずに返事をする。



「はいグレアム様」



「俺が消えてしまっても、忘れないでくれ」



「忘れません。それに、グレアム様は消えたりしません。このわたくしが断言いたします。大人のグレアム様の中に貴方がいるのです。わたくしはこれからも、ずっと貴方のお側におりますわ」



「うん、そうだな。ありがとうイズミル」



ランスロットがグレアムの側に来て告げる。


「陛下、ご準備が整いました」


「うむ。わかった」



グレアムが椅子から立ち上がる。


イズミルも続いて立ち上がった。



「陛下、その円陣の中央にお立ちくだされ」


グレガリオが言う。


「ここか?」


指示された場所にグレアムが立った。


「術が発動したら、元のご自分に戻るのだと、呪いの力を無効化するのだと強く念じて下され。それだけで解呪はすんなり行える筈じゃ」


グレガリオの説明にグレアムは頷く。


「承知した」



「では陛下、早速始めてよろしいですかな?」


「少しだけ待ってくれ。皆、聞いて欲しい」


グレアムはランスロットをはじめとする側近達に声をかけた。



「俺が呪いに掛けられたせいで多大な迷惑をかけてすまなかった。でもこんな俺を嫌な顔ひとつせずに支えてくれて本当に感謝する。でも苦労した文句を言いたいならそうだな……大人の俺に言ってくれ!」


その言葉にランスロットが答えた。


「かしこまりました。では大人に戻られました陛下にネチネチと苦情を申し上げますね。……久しぶりに八歳の貴方に会えて懐かしくもあり、大変嬉しゅうございました」


「うむ」


「陛下、大人に戻ったら酒でも呑み交わそう!」


「酒か!そうだな、それもいいな!」


「可愛い陛下にお仕え出来て、光栄でした」


「ありがとう!」



皆が口々にグレアムに言葉を掛けた。



その一つ一つに、グレアムは返事をする。



やがてグレアムが告げた。


「よし、いいぞグレガリオ。始めてくれ」


「では、失礼して……」



グレガリオが術式を口ずさむ。


途端に魔法陣から光が放たれ、ぐるりと円陣の形に光の柱のようになる。


グレアムはその中にすっぽりの包み込まれた。 



「……っグレアム様……」


幼いグレアムの顔を目に焼き付けようとイズミルが一歩前に踏み出す。


グレアムが光に包まれながらイズミルの方を見た。


そして微笑みを浮かべ、イズミルに言う。


()()()、イズミル。また直ぐに会おう」


「はいっ……また必ず、必ずお会いしましょう……」


光の柱は段々とその輝きを増してゆく。


どんどん光の中が不明瞭になり、グレアムの姿が霞んでゆく。


「グレアム様!」



「イズミル……大好きだ」



グレアムがそう言った後、一際眩しく光が放たれた。


あまりの眩しさに目が眩む。


もはや直視できなかった。


ただ光の向こうにいた小さな人影が、


大きな影に姿を変えてゆく様を感じ取る事が出来た。



――グレアム様、どうか術が上手く作用されますように……!

どうか無事に、無事に……!



イズミルは心の底から祈った。



やがて光は勢いを弱めてゆく。


天に目掛けて伸びていたような光の柱も徐々に姿を消して行った。



そして………



光が完全に消え失せた円陣の中央に、



二十八歳のグレアムが立っていた。



誤字脱字病酷すぎる……

_:(´ཀ`」 ∠):ゲフンゲフン

申し訳ございませぬ……

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