イズミルの決意
後宮で起きたあの凄惨な事件で
いずれ廃妃される身となったかつてのイズミルは、
狂妃ダンテルマと自分はどこか境遇が似ているなと思っていた。
夫である王に必要とされず、
本当は出て行けと言われているにも関わらず後宮にしがみつき続けた。
ただ一つ違ったのは、ダンテルマは憎しみの為に、
イズミルは恩返しの為に後宮に留まったという事だ。
しかしイズミルは思うのだ。
もしジルトニア事変が起きずグレアムに恩義を抱く事がなければ、自分もダンテルマのようになったのではないかと……。
愛する人に見向きもされず、しかもその人の心には自分ではない他の女性がいるのだ。
そしてその女性との間に子をもうけ、幸せな家族の姿を見せつけられる。
その時の悲しみや胸が掻き乱される苦しみは如何許りか。
もしイズミルもダンテルマと全く同じ立場になった時、憎しみや恨みを募らせずにいられるだろうか……
そんな事を悶々と考えていた時、
幼い頃から侍女として仕えてくれているターナがキッパリと言った。
「何を馬鹿な事を。姫さまの性格上、いつまでもそんなウジウジとしておられる訳がございませんでしょう?もし恩返しという目的がなかったのなら、姫さまは後宮が閉じられる時にさっさと出て行って新しい人生を見つけて謳歌されておられる筈ですよっ」
ターナの言葉に目を丸くして耳を傾けていたイズミルが少し考えてこう言った。
「……それもそうね」
確かに自分なら、少なくとも恨みつらみを抱いて呪いのトラップや王家の規範に嫌がらせをしたりはしない。
愛されなかった寂しさを胸に、その辛さを人生経験として昇華させただろう。
ターナの言う通りだと、イズミルは納得してスッキリとした。
もしだったらの過程ばかりを考えていても仕方ない。
グレアムに掛けられた呪いの残酷さ……
殺意は無いとしても恐ろしいまでの悪意を感じる。
これまでは廃妃となって王室を去る身である自分が踏み込んではならないと思っていた。
だがしかしイズミルは妃としてこの国で、グレアムの側で生きると決めたのだ。
ハイラント王室、当代の王妃として、もはやこれを放置してはならないと思った。
ーーダンテルマの残留思怨を浄化しなくては……。
イズミルは見つかったという隠し部屋の調査を
自身で行えるようにグレアムへと願い出た。
まぁ当然、グレアムの答えは……
「だ、駄目だ駄目だ駄目だっ……イズミル、キミは何を言っているんだっ」
であった。
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今回は短めでごめんなさい。゜(゜´ω`゜)゜。




