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第一章    2

前回は部屋を出ただけで終わりましたが…。


           

自室を出たイズミルは、

人知れず後宮から出るために侍女の案内で

隠し通路の一つを歩いていた。

隠し通路自体は何度もお世話になっているが、

国王の執務室や側近の控え室に繋がるこの通路を使うのは初めてである。


いつの時代のどんな妃が造らせたのかは

定かではないが、

この城には後宮より秘密裏に通された

隠し通路がある。


その存在を歴代の王達はもちろん知らされていない。

通路は主に侍従や侍女達の控え室、

メイドや下男の詰め所、厨房や洗濯室、

そして医務室などに繋がっている。


おそらく内々に城中(じょうちゅう)の情報を得るのが

目的だったのであろう。


城で勤める者達の情報網はバカに出来たものではない。


とくに侍従や侍女の

「ここだけの話」と称された暴露話には

国を根底から揺るがすほどのものもあるのだ。


各部屋には覗き穴を巧くカモフラージュした

絵画が飾られており、

通路側から部屋の中を覗き見る事も出来る。

さすがに国王の執務室や宝物庫など、

著しく警備の厳しい所には通じていないが。


ハイラント王国後宮、千年の闇が窺い知れる…。


しかし在るものを活用しない手はない。


成人するまで後宮を出る事が許されなかったイズミルが城内の事を知るには大いに役立ってくれた。


お気に入りは侍女やメイド達の

ティータイムの雑談だ。


どこそこの貴族のお家の内情から男女の睦言、

城内の派閥関係や街で評判の菓子店の名前まで

多岐にわたる。

おかげで様々な知識を得る事が出来た。

そのせいでイズミルが耳年増になったと、

ターナは嘆いていたが…。


イズミルが大国ハイラントの後宮に入ったのは

9歳の時で、

当時まだ王太子であった現国王グレアムの第三妃としての後宮入りであった。

三番目の妃というからにはもちろん上に

二人の妃がいた。

二人ともイズミルより9歳年上のグレアムと

年齢的に釣り合いの取れた妃であった…。

当然、幼いイズミルとは形だけの婚姻であり…。

妃というよりは妹のように扱われていた印象があった。


その後、とある事件をきっかけに後宮が解散となり

二人の妃は姿を消したが、

当時行く当てのなかった幼いイズミルは

そのまま後宮に留まる事を許された。

その時から肩書きだけは第三妃のまま、

なので白い結婚歴10年目である。


(公の場に姿を現さず、

 お飾りの妃として8年も経てば、そりゃあ人々から忘れられても仕方がないわね…)


そんな事を考えているうちに漸く隠し通路の行き止まり、表に出る扉の前に辿り着いた。



結局未だ後宮から出る事叶わず…。

いくら後宮が伏魔殿といえど、奥が深過ぎ(物理的に)でしょ…。

しかし次回こそはいよいよ外?表?に出られそうです。

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