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プロローグ 18歳 ②

この話し書くの辛い

「ぃゃぁぁぁ」


俺はなにかの音で覚醒した。目を開けるとそこには父がいた。父は俺の頭を撫でながらこう言った。

「はっはっ……は。元気そうで……何よりだ。愛しの息子よ」

いつものようにみんなを元気にしてくれる声で話しかけてくれている。

いつものようにみんなを安心させてくれる優しい目で見てくれている。

いつものように家族を支えてくれた大きな手で撫でてくれている。

いつものように俺が憧れたみんなを守れる逞しい体で俺の前にいてくれている。

………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………

いつもと違って父の胸から赤黒くなった鉄が生えている。




「いゃあぁぁぁぁあ」

母の悲痛の叫びが聞こえてくる?聞こえてくない。聞こえてるはずなのに聞こえてこない?目も見えるはずなのに見えない。視界が歪み、目から何かがたれてくる。理解を拒絶しようと頭が動く、だか目は鉄から耳は父の声と母の声をとらえる。理性が理解し本能が拒む。これを知っては心が壊れると本能が叫ぶ。しかし父の姿と母の声が地獄に近い現実へと引き込んでいく。


「父さん?え?え?な、なにが?え?」

「はっ……はっは。俺は大丈夫だ。だからアスケラを連れて逃げてくれ。これが俺の最後のお願いだ。」


父は子供に言い聞かせるように、だけど男に託すように優しく強く言ってきた。


「はっ?は!?どうして最後とか言うんだよ?俺わかんないよ!目を覚ましたらこんなんなってて。大丈夫だって……みんなでこれからも生きていこうよ。俺畑するようになるから、父さんと母さんの言うこと聞くから最後とか言わないでくれよ……お願いだからこれからも家族一緒にいてくれよ……」


声が震えて、目から涙が溢れるのを感じる。どうしてこうなったと考えても分からない。何も分からない。ただ父が俺たちを逃がすために死にに行こうとしているのだけ分かる。ただ父は優しい笑

顔のままこう言った。


「ごめんな……こんな愛情を上手くあげれない親でごめんな。そうだ、これだけは伝えたいって……思ってたんだ。お前が俺たちを嫌っても、どんなに自分を嫌っても俺たち家族はお前を愛している。辛いお願いばっかりだけど最後に1つこれから生きてくれ」


もう何も声が出なかった。喉と目が焼けるように熱くただいろんな感情が暴れ回っているのがわかる。

「はは……はっ。やっぱり初めからもっと直接的に言ってたら良かったな。俺の人生は間違えだらけだよ」


父は泣いていた。初めて泣いていたところをみた。なぜ泣いているかは俺には分からなかった。父が何も譲る気はないことがわかった。ただ俺は呆然と立ち尽くしているだけだった。


「サルビア……あとは任せた」

「わかったわ……この子だけは絶対守ってみせる」

いつのまにか近くにいた母がそう言った。


「やっぱり……最高の嫁だよ」

母は俺の手を握り森へ走った。


「ギャハハハハ!自分を犠牲にしやがった!お前らの方が勝てる確率高かったのにこんな雑魚を守るために死にに行きやがった。ギャハハハハ!まあもういいか。家族遊びも見飽きたしもう死ね」


そう灰色の何かは空中に鉄を作りこっちに飛ばしてきた。カーンっと鉄と鉄がぶつかった音が聞こえた。

「俺の目が黒い間は……俺の家族には……手を出させない!!」

「さっさと死にやがれこのゴミが!」


俺が最後にみたのは灰色のなにかと対峙する父の大きな背中だけだった。


それから森に入り少しした茂みの中に入り母は俺に言った。

「今から言うことをちゃんと覚えて王様か騎士様に伝えてね。魔人が復活したということそれにより魔王の復活が近いということが分かること、それと魔人といわれるものは瘴気を隠すすべがあること……そして漆黒の剣と銀の賢者が四天王に殺されたこと」

俺の頭は理解を拒絶しているはずだった。だが最後の一言だけはどうしても聞き捨てならなかった。

「えっ?えっ?え?どうして父さんも母さんも死んでることになるんだよ!?どうしてだよ!答えてくれよ!!」

「母さんもあいつと戦いにいくからよ。あの人だけ置いていけないじゃない」

母さんは泣きそうな表情でそう言った。

「父さんも母さんも生きてくれよ!!俺もシルビアも置いていくなんて絶対に許さないからな!」


俺はガキのように叫んだ!ただ心が叫ぶままに。

母さんは困ったような、それでいて辛そうな顔をしながら抱きしめてきた。肩が冷たい。俺の涙か母さんの涙か分からないけど冷たい。


「ごめんね。2人を残して死ぬ親でごめんね。生きてる間に愛情をきちんとあげれなくてごめんね。こんな親とも言えない親でごめんね。辛い思いをさせて私たちのことを嫌ったかもしれない、私たちといるのが楽しくなかったかもしれない。だけど最後だからこれだけは聞いて私たちのもとに生まれて来てくれてありがとう。ずっとずっと大好きよ。ジアにも私たちの想いを伝えて」


否定したいのに。大好きだって!楽しかったって!だけど声が出てこない伝えたくても声が震えて出てこない。

俺を魔法陣から出てきた暖かい光で包み込む。

「これから今まで以上に辛いことがあるかもしれないけど、お願い、生きて」

その言葉を最後にして俺は森から姿を消した。



書きながら自分も泣いてしまった。

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