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第1話 三人の不思議な子どもたち

 ゆらゆらゆらめく大地に降り立った戦士達の足跡は、巨大なビル街の奥に消えていった。巨大なビル街は何だかさびれていて、愛し愛されるものの姿なんて無かった。


 その日の夕暮れの中、太陽が巨大な煎餅のように大きくなった頃、爆音が鳴り響いた。オートバイだ。都市の一角からオートバイの大群が、走り出てきた。だが、そのオートバイには、誰も乗ってはいない。無人オートバイだ。


 機械文明の崩壊は、まだ来ていなかった。さみしげな小鳥がビルの角にとまっている。無償の愛なんて言葉を並べたポスターが、街のいたるところに貼ってある。人はいるのだろうか?

 

 あの子達は公園の森の中に住んでいた。森はフェンスで囲まれていて、まるで動物園だ。

 鳴き声が森から聞こえる。猿の鳴き声だ。ウサギも、タヌキもいる。森の中央にはピラミッドが建っていた。黄金のピラミッドだ。キラキラ光っている。

 

 中から三人の子どもが出てきた。三人のうち二人は、不思議な水晶球を持っている。大きさは、約直径5センチ。(ピンポン玉を一回り大きくしたくらい)半透明で、中にはうっすらと機械が見える。


 ライオンが子ども達の横にいる。

 子ども達は水晶球をライオンに近づけた。ライオンは唸っていたが、やがて眠ってしまった。ライオンの腕をよく見ると、機械仕掛けであった。首も顔も、鉄で出来ている。猿もそうだ。機械仕掛けだ。ウサギもそうだった。


「僕らの目的は何だろう?」

 

 三人の子どものうちの一人が言った。少年だ。彼の名はアルマ。昔の言葉で、「魂」を意味した。年齢は十歳くらい。青いパーカーを着て、黒いズボンを履いている。


「まったく……忘れたの? これからは私たちだけで、ちゃんと生活していかなくちゃならないわ」


 もう一人の子が腕組みしながら言った。同じく十歳くらいの少女だ。彼女の名はセチア。髪の毛はピンク色。赤い民族衣装を着ており、右の袖には昔の文字で、「和」と書かれていた。彼女だけは、水晶球は持っていない。


「俺は、もう腹減ったぜ。すぐに食い物を探しに行こう」


 太ったもう一人の子が言った。彼の名はポックス。彼は半分ロボットだった。肌は緑色がかっている。服も緑色のジャージだ。

 三人はどんどん森を進む。途中、池があった。アルマとセチアは、大ジャンプで通り越した。

 ポックスは勢いをつけて飛んだが、結局、池の中で転んでしまった。


「いてぇ! かんべんしてくれよ」


 アルマとセチアはクスクス笑った。


 進行方向は北だ。そっちには砂漠がある。子ども達は砂漠に辿り着いた。アルマが水晶球を掲げると中の機械が光り、砂が勝手に掘り起こされていく。まるで幽霊か何かが砂を掘っているようだ。──水がシャーッと噴き出した。三人とも水をすくってごくごく飲んだ。

 砂を掘り起こして、水が出てきた後から、カエルがピョンと飛び出した。緑色でヌメヌメとしている。それは機械仕掛けじゃなかった。アルマ達は笑った。嬉しかったのだ。


 ビルに貼られている古いポスターは剥がれて、強風で空中を舞っている。砂漠の周囲には大きなビルが五棟ほど建っており、誰もいない。


 アルマ達は先を急いだ。二つの自動販売機が、少しだけ砂漠に埋もれるように立っている。ポックスが水晶球を掲げると、コーラがガランと出てきた。誰が自動販売機の中の飲み物を取り替えているのだろう。コーラは新しかった。

 空き缶はフェンスの外に投げ捨てた。すると、無人オートバイがやってきて、勝手に機械の手が出てきて拾って帰っていった。

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