────は?
無事に新入生代表の言葉を終わらせ、堅苦しい形式の入学式を終えた。
私のクラスはSらしい。20クラスもあるの?と思ったが、どうやら違うみたい。
この学校──聖櫻学院高等学校は、テストの点数が全てだ。
入試含め、各定期考査で上位20名以内に入るとクラスSと呼ばれるヒエラルキーの頂点クラスに所属となり、それに伴い様々な特典が貰えるらしい。
例えばカフェテリア無料とか、温室や巨大図書館などの使用権、1番でかいのは学費免除だろう。
更に3年間Sクラスに所属し続けると、国内トップクラスの大学への相当額の学費補助が貰えるらしい。
まぁ、入れ替わりが激しいので年にクラスの半分いればいい方らしいんだけどね。
ちなみに、学年末考査(1年は入試)で1位の人は学年代表と呼ばれ、1年間クラスSに所属となるらしい。まぁ、学年トップがトップのクラスにいないのはどうかと思うもんね…。
他にも色々あるが、今すぐ必要な知識ではないのでここでは一旦割愛する。
引用:スクバに入っていた学院案内。
しかし、聞いたことあるんだよねー、学院名もそうだし、システムもそうだし、私の制服は見たことないけど、男子制服はめちゃくちゃ見覚えがある。
でも別に母校とか近所の学校という訳でもない。ここ、全生徒寮生活するしかないくらい交通も買い物も不便すぎる山奥だからね。
電波?一応生きてる───というか、ガラケーかこれ?懐かしいな!
なんだろう、なんだろうと頭を抱えていると、隣から凄い視線を感じた。
「────あのー…」
「Σ(っ゜(エ)゜;)っヒッ!あ、その、ごめんなさいっ!自己紹介、順番で…」
「えっ!?あ、ありがとう、教えてくれて」
やばいやばい、全然聞いていなかった。
…なんか、この人にも顔文字見えた気がするけど、気のせい、だよね…?
凄く無難に挨拶をしたが、周りからの歓声が凄かった。
…そんなに女子貴重か?貴重か。唯一の女子だもんな。
せっかくだからサービスと思って笑うと、教室内が静まり返った。なんで?
「じゃあー…次、西」
隣から立ち上がる音が聞こえる。おお、さっき親切に教えてくれた子だ。西くんと言うのか。
「にっ、西諒太郎です、<font size="5" color="black">よろしくお願い致しますっ!!</font>Σ○┓イテッ!」
「に゛っ───────!?!?!?」
色んな意味で叫ばなかったことを褒めて欲しい。
西諒太郎。
なにを隠そう、私がオタクになった全ての始まりである青春群像劇「Prave!」の主人公である。もう聖書ですよ。聖書。
Praveは造語で、『祈る』の意味を持つpray、『勇気』の意味を持つbraveを組み合わせた。ちなみに『べた褒め』の意味を持つraveも隠れている。
諒太郎は160に満たない身長と、大きい目を初めとした男らしくない顔、あまり低くならない声。それらから中学時代までいじめを受けていた。
そんなやつらと離れたくて必死に勉強し、この聖櫻にトップで入学した。
…あれ?まぁ、私(というか姫愛ちゃん)が満点取っちゃったから2位なのか。申し訳ない…。
そして、明日行われる部活紹介にてこの学校に似つかわしくない軽音楽部に魅せられ、その日のうちに入部する。
ボーカルが出来るメンバーがいないからという理由でボーカル&ギターになるが、その才能を開花させ、少しずつ本来の明るく、快活な性格へと変化していく。
成長していく諒太郎と、それを彩る個性的な先輩たち、そしてプロレベルのライバルたち──週刊少年誌での連載にも関わらず、たくさんのイケメンが登場するこの漫画は女性人気が高く、アニメはもちろんゲームや舞台、キャラソン等幅広くメディアミックスされてある。更に物語後半に出てくる軽音楽部の大会は、出版社公認で実際に行われている。開始5年は作者さんも審査員にいたらしい。
聖櫻の軽音楽部は諒太郎以外歌下手な設定だけど、キャラソンでは普通に上手いよ!さすが声優さんだよね!!
ちなみに私は何故か乙女ゲーム化された時に、ライバル校の部長である椎葉真晴────通称ハル様(そう呼んでるのは私だけ)に一目惚れし、かれこれ15年以上片想いを拗らせている。
うっ、自分で言っててダメージ受けた。あれからもう15年か…。
よくよく見たら、担任もメインキャラである軽音楽部顧問·中後正尚である。
制服も、学校も、独自システムも。
全てPrave!のものだ。
情報を統合して、1つの可能性に行き着いた。
────これって、もしや、もしかして…
私、『Prave!』の世界にトリップしてるってこと!?!?!?