最後まで、抗ってやる…!
「なんか、いつもより気合い入ってんなー」
「負けたら正式に真宮の引き抜きが決まったんだと。あんな才能の塊、渡したくないだろ」
「あぁ、それに────」
「「「あの魔窟に入れたくない」」」
「ってな!部長、めっちゃ気合い入ってたなーwww」
「柊崎もな。本職ホルンなのになんだあのピアノは」
「1年コンビの熱もな!あの3人仲良しだし」
「「「俺たちの女神を奪われたくないな」」」
山奥とはいえ茹だるように暑いこの時期。
柊崎先輩は本当に3日で仕上げ、しかもクオリティはかなり上がっていた。そらもう驚くほど。
私へのお願いは────できれば、断りたかったが、周りからの援護射撃もあり、泣く泣く承諾した。
だってそれが勝つために必要とか、プレッシャーとかいうレベルじゃないですからね!?!?!?!?
柊崎先輩をはじめ、部長、秀くん、宗くんと私のためにより一層練習に取り組んでいた。
部長や透真先輩のこと考えてる場合じゃない。
再度気合いを入れ直し、時間も忘れて楽譜とヴァイオリンに向き合った。
「真宮、明日からの練習はこれ着ろ」
「え」
手渡された袋には、みんなとお揃いの男子制服一式が入っていた。
思わずなんで?と部長を見ると、軽く溜息をつきながら私の足を指さした。
「ジャージ。…本番もそのまま出る気か、みっともない」
「────おっしゃる通りです…」
椅子に座って弾く時、バランスを取りやすいようにと大股開きでいたため、この短い丈のワンピースでは絶対パンツが見えると思って部活の時は半ジャーを履いていた。
演奏用に長い丈のスカートやスラックスがあればと思っていたが、そんなこと想定されてないワンピースなのもあってどうしようと悩んでいたところだった。
「1人だけ浮くことも無くなるだろう。使うといい」
「ありがとうございます、何から何まで…」
「いや、いい。女子のか弱い体で無理させてるんだ。少しくらい手伝わせてくれ」
そう頭をぽん、と撫でる。
─────手、起きやすい位置なのかな。
好意を持たれてるとは思うけど、こう、毎度撫でられてるとどちらかというと妹扱いな気がしてきた。
多分そうだ。私、上の兄弟いないのに妹っぽいと職場で言われてたからそのオーラが出てて可愛がりたくなるんだろう。なんだぁ。そう考えれば納得。
頭撫でられるのは好きだから、このままされるがままになっとこ。
「─────っと、今日言われたところ、気を付けろ」
「あ、はい!練習しておきます!!」
なんか、一瞬機嫌悪そうだったけど、気のせいか…?
平日は練習や生徒会の仕事、休日は街での演奏。
そんな忙しい日々を過ごしていたら、あっという間に当日が来た。
──────最後まで、抗ってやる…!




