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傍観主でいさせてくださいっ!〜最強設定トリップ夢主は貞操を守りたい〜  作者: Sio*
貞操が掛かってなきゃ憧れてたシチュエーション(文化祭編)
15/30

言うこと聞きましょうか



「注目を集めるならみんな知ってる曲がいいですよね〜」



自分で言い出した満足度。

それを高めるにはみんなが知っていて、楽しめる曲目がいい。

そう考えた私は、編曲担当の柊崎先輩をお昼に誘った。

ちなみに今日のお昼は魯肉飯。スパイスがちょっと苦手なので抜いてもらってるが、ほろほろお肉と味がよく染み込んだ煮卵が絶品だ。デザートにエッグタルトもついてきた。

対する柊崎先輩は限定10食の大人様ランチ。人気メニューであるオムライス、カレーライス、ハンバーグ、パスタに和風玉ねぎドレッシングのミニサラダ、みんな大好き具沢山コンソメスープと盛りだくさんなのにワンコインで頂けるという破格のメニューだ。

……凄い量なのに、なんで太ってないのこの人…。と思ったが、肺活量が命の管楽器は腹筋バッキバキなんだった。

以前透真先輩のを触らせてもらったが、本当に綺麗に割れててびっくりした(その際先輩は羞恥でか赤くなってぷるぷる震えてたかわいかった)。



って、そうじゃなくて。話を戻そう。手早く済ませた私たちはいつもの温室で(本来柊崎先輩は入れないんだけど許可もぎとった)とりあえず私が考えている曲目を先輩に伝えた。



「パッヘルベルのカノン?定番すぎじゃない?」



「私の先生、演奏会で必ずリクエストされるくらい人気なんですって。もちろん普通もいいですけど…」



構え、奏でる。私がヴァイオリンを始めるきっかけのゲームで演奏された、カノンのアレンジバージョンだ。

元々華やかで綺麗な曲だが、それを更に華やかに、煌びやかにしたメロディ。それでいて原曲を壊さない。私はこのアレンジがめちゃくちゃ好きだった。

この曲データが欲しくて、既にゲームを持っていたにも関わらず、ハード違いの同タイトル限定版を買った。後悔はしていない。ちなみにゲーム本体はプレイしてない。追加要素のある最新版をコンプしてたからね。

それをどうしても弾きたくて先生にお願いをし、知り合いの作曲家に耳コピしてもらって練習した。

今でも息抜きに弾くから暗譜も完璧だ。



「へぇ。いいアレンジ。それをこの編成で、か…」



「出来ます?」



「面白い。やるよ」



たった1回弾いただけで採譜してしまっている。本当にこの人凄いな!?

なら、と他のパートも弾く。ひとつはピアノだから再現は難しかったが、このアレンジバージョンを元に作ると言ったので、期待していようと思う。



「あと個人的にニールセンの弦楽四重奏曲第1番第3楽章やりたいです」



「ほう、結構ニッチなところだな」



「もう本当に好きで!!演奏するのが夢だったんです!!」



「ははっ、なら入れていいだろう。これなら俺休めるし」



「んで、1曲は私のどハマりしてたゲームのサントラなんですけど…」



「ほうほう」



再度私の奏でた音をその場で採譜する。凄いなこの人!?

ピアノはハミングしてたら伝わった。まじか。



後は────



「はー、冬っぽい曲なら浮かぶんですけどねぇ。夏っぽいってなんでしょう」



「1曲は欲しいよなぁ。ヴィヴァルディの夏はだめなのか?」



「良いんですけど、他の季節に比べて知名度低いじゃないですか。楽しませるにはやっぱりみんな知ってる曲にしないと」



「あー、それもそうか。吹奏楽ならいくつか明るめの楽しい曲浮かぶがなぁ」



互いに唸りながらパラパラと参考になりそうな部の楽譜を捲る。

その時、微かに歌声が聞こえた。



聖櫻には合唱部やコンクールはない。もし、歌うとするなら───



「おい、真宮?」



その歌声に導かれるまま、私は温室の隅にある噴水のオブジェへ向かった。

そこに居たのは、ギターを構える諒太郎だった。



「……よ、よし、」



勢いよく息を吸い込むと、甘く、しっとりとした歌声とメロディが響き渡った。





この曲────

原点にして頂点、1番最初に発表・発売されたにも関わらず、沢山のPraveファンを魅了し、15周年記念に行われたキャラソンランキングでぶっちぎり1位を獲得した伝説のアニメOPテーマ「Pray」じゃないか!!!!!!!!


Praveの由来である「Pray」をタイトルにしたことからこの作品のテーマソングであることは明白だろう。


イントロのキーボードとボーカルの甘やかでしっとりしたメロディから、各パートが合わさり手を振りあげたくなるアップテンポに変わるそのギャップ、歌詞もPraveを象徴しているかのような胸を締め付ける、熱い言葉の数々が散りばめられている。


もちろん私も、本命はハル様といえど、この曲は大好きだ。

落ち込んだ時、泣いた時、怒った時、笑った時、嬉しかった時。

必ずこの曲を聴いていた。


あの日々を思い出し、私は思わず涙を流した。



「それが〜、…が〜?うーん、高いな…ん?」



あ、やばい。諒太郎と目が合った。

私は咄嗟に柊崎先輩と逃げた。



しかし、やっぱり諒太郎は歌が上手いな。

担当の声優さんは、元々バンドのボーカリストとして有名な人で、これをきっかけに声優業にも力を入れている。今では数多くあるアイドル物の常連さんだ。



ぐしぐしと目を擦りながら落ち着こうと紅茶を飲む。ふぅ。



「なぁ、あの曲知ってるのか?」



「え?」



知ってるっちゃー知ってる。だがあの曲はPraveオリジナル曲だ。つまり軽音楽部以外は現時点では知らないはず。

私は首を横に振った。



「じゃあ、その涙はなんだ」



「これは…色々、込み上げてきたものです」



歌詞に込められた想い、曲に込められた想い、全てが合わさって、涙腺を直撃した。たしか初めて聴いた時も泣いたなぁ。



「そう、か……」



「軽音楽部は会長が作詞、東妻先輩が作曲て聞いたので、多分あれもオリジナル曲です」



「っ、!?」



────そういえば。



「柊崎先輩、作曲出来るって言ってましたよね?」



「あ?ん、まぁ、一応?」



「作りませんか、夏っぽい曲」



「────作る?」



「軽音楽部が全てオリジナルなら、こちらも1曲だけでもオリジナルをやってみては、と思った次第です」



柊崎先輩は頭に手を当て、考え込む。

音楽バカでプライドエベレストの先輩だ。

あの曲が同じ学生のオリジナルと知れば、乗ると思う。

しかし、期間が短い上に編成が限定的だ。自分の能力をよくわかっているから引き受けるか悩んでるんだ。なら、もう一押し…!



「わかってます、作り出すのは難しいと」



「────報酬は」




「────叶えられる範囲で言うこと聞きましょうか」



「乗った」



え?こんな約束して平気かって?

再度言うが柊崎先輩はただの音楽バカだ。まじで女に興味が無い。ホルンが恋人とか言ってる。たしか名前は──『フレデリカ』、だっけか。

もちろんそういう願いなら断るし。叶えられる範囲でって言ったからね!



「専門的に音楽やってない人に作曲で負けられるかよ……」



一応あの人、神童と呼ばれる程の実力者だったんだけどねぇ。





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