The Dull World
目覚める。
白い空間。
人工物も、人の喧騒も、風の流れも、一切が感じられない。五感で異常な空間だと感じる場所だ。
視界を埋めるのは、どこまでも続く白い地平と白い空、そしてその狭間の地平線。
その曖昧な境界から、人影がこちらへ向かって来るのが見えた。ゆっくりとこちらへ向かって歩いているようだ。
遥か彼方にいたはずのその人影は、気付けば目の前に立っていた。
俺と同じぐらいの年の見た目をした少年だ。この空間に相応しい白い肌、白い髪、白い服。しかしその瞳だけは、黄金の輝きを内包していた。
「やあ」
「質問がある」
出会い頭に、間髪置かずに俺は言った。
「せっかちな奴だな、キミ」
白い少年は苦笑を浮かべる。
「ここはどこだ?」
「そうだな、天国とか黄泉の国って言えば、分かりやすいかな?」
「…やっぱり俺は死んだのか」
「ああ、残念なことにね」
不思議と驚きはなかった。
気を失う前の光景がフラッシュバックする。怒声と悲鳴が鳴り響く薄暗い場所。大切な人間を失う恐怖と、その人の泣き顔。恐怖から脱した安堵と、襲う激痛。
「自己紹介がまだだったね。ボクは神様だ」
自分が立っているのがこんな場所じゃなければ、信じるわけがないような言葉だ。そもそも現代日本に死後の世界を信じる者がどれほどいるだろうか。
「死んだのは残念だろうけど、キミは運が良かったよ。生まれ変われるチャンスをたまたま掴めたんだからね」
「出来るんなら、生き返らせて欲しいんだが」
「すまないけど、それはできない。ボクはだいたい何でも出来るけど、その世界のルールは破れない。色々混乱してるだろうけど、今キミには二つの選択肢がある。一つは、このまま元の世界の掟に従い消滅する。もう一つは、豪華特典付きで異世界転生だ」
「異世界転生?」
いきなり飛び出した突拍子もないワードに、思わず聞き返してしまった。
「うん。聞いたことないかい?異世界」
「単語自体は知ってるが……そんなものあるのか?」
「ある。キミが望むなら行くことが出来るよ」
自称神の表情は相変わらず計り知れない微笑みを讃えている。
「キミがいた世界とは違う摂理に支配された世界さ。もちろん文化や言語も全く違うだろうから、そこはボクが対応しておくよ」
どうやらこいつは俺が異世界とやらに行くことを承諾すると、微塵も疑っていないようだ。
話だけ聞くと新手の詐欺か宗教勧誘といった有様だが、状況が状況だけに話を聞くしかない。一先ず情報が足りないため、こいつもっとから引き出さねばいけない。
「何が目的なんだ?運良くって言ってたよな。てことは俺を作為的に選んだわけじゃないってことだ。お前に一体何のメリットがある?」
「何って言われても…まあ強いて言うなら、神様だからかなぁ。不遇な人間に対する救済措置だよ。キミが救われる人間第1号さ」
「神の気まぐれってことか…」
気まぐれを起こしたタイミングで偶々死んだのが俺だった、ということだろうか。
「まあとりあえず行ってみよっか」
「…は?」
軽い口調で放たれた一言に、一瞬思考が置いていかれる。どうやらこいつは長々と説明するのが面倒臭くなったようだ。そんな顔をしていた。
「ちょっと待てっ!唐突すぎないか!?もっと聞きたいことが山ほど……」
「はい、じゃあコレ持って。キミの気になってることとかはだいたい書いてあるから」
俺のセリフを遮って渡されたのは、分厚い一冊の本だった。
「それじゃあいってみよー!3、2、1…」
三つ立てた指を折りながら、満面の笑みでカウントダウンする神を俺はなんとか止めようとするが、
「待てっ、急に言われても心の準備が…」
「ゼロ!レツゴー!」
説得虚しくカウントがゼロになる。
神の黄金の目が輝き、閃光と静寂と暗転が同時に訪れた。
初めて小説書きましたー
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