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2.始まりの前

 ミスティック学園は一学年100名程度がABCの3クラスに分けられる。王族、高位貴族の順、に割り振られてたら絶対別のクラスで周囲も男爵位で楽だったのに…実際は入学前のテストの成績順。

 合否を分ける入試ではなく、単純に学力レベルを測るためのテスト。

 凡庸を目指す私は、テストに全力なんて出さない。目指せ平均点だ。


 ゲームでは確か王子も宰相の息子もそして悪役令嬢もAクラス。騎士団長の息子は脳筋でCクラス。

 ちなみに聖職者の息子は一つ下なので関わるのは来年。幼なじみも登場するのは来年以降、町中で再会するシナリオだったはず。



 で、私が早めに学校に来てわざわざ教室の方に来たのは、教室に集まった後入学式が行われるホールに移動、というわけではない。

 直接ホールに移動してもいいのだが、それぞれの教室にはクラス割りと座席表が貼り出されているので先にチェックしに来たのだ。

 …王子も確認しに来てたのかな?

 一斉に確認となるとなんとなく、王族、高位貴族の人たちが確認するのが優先されるので、事前にくるのは、男爵、子爵位が多いのに。


 そんなに難しくないテストだったから、Aクラスなら平均80点以上な感じと当たりをつけて、私は70点ぐらいになるよう回答した。Cクラスは得意不得意が教科ですごく差があるタイプ。


 そんなことを思いながら、Bクラスの前で名前を探す。



 何度も探す。

 見落としてないか探す。



 なんでないのー!


 全員の名前を何往復もするけど、アンネ・デュボワーの名は載っていない。


 まさか、Bクラスに入れていないなんて…


 問題簡単すぎたんだ。みんなもっと成績がよかったんだ。そうだよね、満点だって何人かは出そうな感じだったし、貴族の子たちは昔から勉強してるんだからもっと出来がいいんだ。

 だよね、家庭教師の先生がすごく褒めてくれてたから、勘違いしてたんだ私。

 あの程度できるのは、普通のことだったんだ…


 思い上がっていた自分に内心で叱咤しながら、Cクラスに向かう。

 同じように早めに来た生徒たちが、自分の名前を見つけて騒ぎ始めている。


「よかった!Bクラスに入れた!」

「ちょっと難しかったよな~」


 満点とるのがってことですよね。

 確かにちょっと引っかけのような癖の強い問題が混じっていたので、満点はあまりいないのかも。どこまで近付けたかで順位が決まったのだろう。

 平均70点なんて低すぎて話にならない。もうちょっとちゃんと答えればよかった。


 落ち込みを隠さずにとぼとぼ歩く私に周囲も気の毒そうな目で見やる。

 残念な子を見るような視線には気づいているが、しゃっきりとはできないままCクラスの名前を確認する。


 …オーギュスト・グランドルフ

 やっぱり騎士団長の息子もCクラスだったか。


 ……あれ?

 私の名前がない??


 もう一度端から確認する。


 なんで?何度も確認するけど見つからない。


 え?まさかAクラス?

 そんな馬鹿な!あんな簡単なテストで手を抜きまくって回答したんだよ。

 何かの間違いに決まっている。

 あれでAクラスなんて、イベントの強制力が強すぎる。


 頭を抱える私に周囲はますます腫れ物に触れる感じになる。


「そんな落ち込まなくてもいいのに。お前行って慰めて来いよ」

「な、慰めるってどうすれば…」

「…可愛いのに、残念な感じだなぁ」



 おい誰だ、残念って言ったやつ!

 遠巻きにされ、こそこそ言われているのにいつまでもこうしている訳にはいかない。

 腹をくくってAクラスを見に行こうとしたところで、上級生?と思しき生徒から声がかかる。


「そろそろ入学式が始まるから確認はその辺にして、みんなホールに移動するようにー」


 貴族だらけの学校でこんな雑用みたいなことする人がいるのかと驚いたが、おそらく生徒会的なやつだろう。

 たしか2年生の後半で生徒会に入ったら、入学式を手伝うイベントがあった。これもその一貫といったところか。


「そこの可愛いお嬢さんも、いつまでも落ち込んでないで。僕がホールまでエスコートしようか?」


 さらさらした金髪を靡かせ、白い歯がキラッと輝く先輩の甘い言葉に周りにいた女生徒のきゃあという声が響く。

 確かに先輩の顔立ちは整っており、こんなイケメンに甘いことを言われたら13歳の女子なんぞ、あっという間に夢中になってしまうだろう。


「…お気遣い頂きありがとうございます。私はもう大丈夫ですので、そちらの方をエスコートして差し上げてください」


 入学初日にイケメン先輩のエスコートなんて、悪目立ちにとほどがある。イケメン先輩は攻略対象じゃないから、破滅フラグには関係ないかも知れないけど、凡庸からさ大きく外れるルートを選択したくない。

 幸いイケメン先輩の甘い空気にあてられたのか、顔を真っ赤にした女生徒が震えていたので、そちらに注意をふる。


「それでは。失礼いたします」


 淑女として、裾を摘まんで一礼し背を向けると、ホールに向かう人波にまぎれる。

 背後で何か聞こえた気がしたが、振り返りはしない。



 気を確かに持って、長過ぎる校長の話の途中で倒れないようにしなければ。

 入学式のイベントはまだまだこれからなのだから。

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