エンジェル、茜、好きだぜbaby !
茜、好きだぜ!!
俺は茜を巧みに操作しながら風を味方に走り抜けていた。ただいまクールに快走中。この近辺は慣れた道の連続だ。
人が踏み込まない抜け道も、頭の中には地図の如く完璧ちゃんにインプットしているからね。フフフフ。後ろ、左、右、前。見当たらないし危険な香りが匂わない。母ちゃんと弟子志望のガキどもを巻きまくってやったぜ。
「アハハハハ。俺を捕まえようなんて1000年早いわ。ブァッハハハ!」
俺は小さな公園、カナリヤ公園に辿り着いた。小高い場所にあるベンチに女が1人と男が3人いた。
女は沢木茜だ。俺の幼なじみの愛しいエンジェルでマイ・ハニー、許嫁。
男は隣の高校のバカな不良達だった。
「やめてください!!」
「デートしようぜ、いいじゃねぇかよ」
「迷惑です!!」
「良いじゃんかよっ、デートが駄目ならさあ、チューしようぜ」
「本当に止めてよ!」
「チューが駄目ならさ、おっぱいを見せてよ」
「手を離してよ!!」
「気が強い女は好みなんだよ。おっぱいを見せてくれないならさ、おっぱいを触らせてよ」
「いやだって!! やめてください!! やめろよ」と茜は叫ぶと鞄を胸元に抱えて防御をした。
「おっぱいが駄目ならさあ、お尻を触らせてよ」と茶髪に染めたリーダー格の不良少年A君が茜のお尻を触ろうとした。
俺は不良どもの後ろに10メートル近くまで忍び寄ると茜をかっ飛ばしながらベンチまで走らせ、そのまま茜を不良少年Aに激突させた。
「痛い! てめえ、この野郎、誰だよ、クソが!!」と少年Aは脹ら脛を擦りながら俺を見上げた。脹ら脛は急激に腫れていった。
「俺は俺だよ。茜のおっぱいやお尻は俺のもんだ」
「ちょっと、悠平! あんた何を言ってんの! バカじゃないの」と茜の奴、真面目に本気で怒ったよ。
「なんだと!? ふざけやがって! シメるぞコラ」と少年Aは俺に脅迫をしてきたので俺は仕方なく笑ってやった。
「アハハハ。俺をシメるなんて800億年早いわ。アハハハ。ナメんなバカ」
「悠平、なんでここにいるのよ。何やってんの?」と茜が安堵した顔を見せて俺に言った。
「茜、話は後だ。ちょっとさ、これを頼むよ」と俺は茜の傍に行き茜のベルを鳴らしながら茜に茜を手渡した。
「なによーっ。まったくもう」と茜はむくれながらも茜のハンドルを支えて持ってくれた。優しいね。
「てめケラー! なめんじゃねーよ、ケラー!」と紫色のズボンを履いた不良少年Dが、すきっ歯から空気を漏らしながら言った。
「なんだケラ! アハハハハ。先ずな、前歯4本を入れてから話せ」と俺は言いながら茜を後ろに隠して不良少年AとDにメンチを切った。
「てめえよう、俺たちが誰か判ってんのかよ!?」と3人目のアホな不良少年Kは自分のデカ鼻に指を入れて鼻くそをほじりながら言ったので、俺は失礼な態度にキレれてKの右肘を強く蹴ったら、Kの人差し指が6センチ近くまでめり込んでしまった。
「ぶへーーっ!! 痛い、 星がいっぱいだぁ! ねぇねぇ、あれってさぁ、ハレー彗星かな? エドモンドさんが発見した晴れ姿。ウヘヘへ」とKは猛烈なまでに鼻血を流して空を見上げて泣いていた。あまりの激烈に幻覚が見えているようだった。
「てめえ、ふざけんな。何しやがるんだ」と脹ら脛を擦り続けながら不良少年Aは怒鳴った。
「うるせー」と俺は言い返した後に回し蹴りでAの脹ら脛を蹴った。弱いところを狙うのがコツでもあるのだ。卑怯だって? 知るか、そんなもん。戦いに情けはいらんの。
Aはスッ転んでベンチに頭を強打すると気絶した。
「お星さまがチラチラ見えどぅー、みえどぅよー」とKが言って鼻血を流しながら空を見上げていた。戦闘不能状態だ。ベンチに腰を下ろして遠くを見つめていた。
「てめえー、ケラ!! 俺が相手だ」とスキッ歯の不良少年Dは飛び掛かってきた。
「キングコブラ拳!!」と俺は叫ぶと両手を重ねてからDの背後に回り込んで思いっきりお尻に浣腸を10回連続でした。
「ぎょえ〜!」とDは叫んだところで俺はボディーを強く殴った。
「ああ〜ん…ぐるじい。ぐるじいよお…」とDは股間を押さえながらうずくまって吐きそうになった。
「おえ〜っ、ぐるじい」とDの涙とヨダレと鼻水が壊れた蛇口のような勢いで垂れ流していた。
「必殺キングコブラ拳!! その1、飛翔の拳だ。受けてみろ!!」と俺は怒鳴ると、うずくまっているDの両方の鼻の穴に指を入れて、俺の心の名曲『赤鼻のトナカイくん(リミックス・バージョン)』を最後まで歌ってあげた。
Dは悶えていた。動きを完璧に封じ込めたので1発だけ強く腹を殴った。
「あわわわ…ぐるじいよお」とDは絞るような声を出して言うと、白目を剥き仁王立ちのまま意識を失くしてしまった。
ベンチに頭を強打して気絶する者。
ベンチに座って情緒不安定になっている者。
立ち尽くしたまま意識を失う者。
キングコブラ拳は先手必勝、反則の急所への攻撃もOK、危険な技も積極的に仕掛ける独自の拳法へと進化を遂げました。アハハハ。ナメんなよ。
ただし、通信講座で学んだ本格的な『無時丘派のサンダー拳』はまだ出していないので俺の実力はこんなものではない。
無時丘派・サンダー拳とは、2004年に無時丘鮫五郎さんが編み出した拳法で、2年前にドキュメンタリー番組『鮫五郎の怒り』が放送されてから、子供から大人まで一気に爆発的な人気となり、社会現象となって入門者が急増した伝説の武術のことである。
俺は母ちゃんにお願いして通信講座で2013年から5年間学んでいるんだ。
俺は無時丘派・サンダー拳、5段の腕前なんだよ。凄いだろう。いつか披露してやるよ。ナメんなよ、無時丘派・サンダー拳を。
キングコブラ拳と無時丘派・サンダー拳を会得した俺に喧嘩を吹っ掛ける奴はマジで馬鹿だよ。
だけどよ、1つだけ違和感があるんだよなあ、無時丘鮫五郎さんの顔や姿が、テレビでも言っていたけどもよお、写真や映像がほとんどあまりないみたいなんだよなあ。通信講座の教科書には似顔絵しか載っていないんだ。
一説には無時丘鮫五郎さんは実在しない架空の人物なんじゃないのか、と最近では騒ぎ始めているんだよね。通信講座では教材にDVDがあってさ、教えている映像があるけども、サンダー拳は複雑かつ技が豊富なので、映像の中で担当する先生方が7、8人はいるんだけどさ、無時丘鮫五郎さんだけは映らないんだよなあ。
「悠平、あんた学校サボったんでしょう?」と沢木茜ちゃんが話した一声がこれだよ。助けたのにさあ。
「茜だってよ、昼過ぎからこんな所でナンパされてるんならサボりじゃないのかよ?」
「私の学校、今日は午前までしかないの」
「俺の学校はよ、午後4時近くまで絶賛授業中でーす。アハハハハ」
「悠平、サボってばかりいたら、単位取れなくなるよ。テスト近いしさあ、勉強も追い付かなくなるよ」
「勉強? 勉強苦手なんだよなあ」
「良い学校に行ってるのにさあ、勉強が苦手な訳ないじゃん」
「最近、内の学校なんだか荒れてきてんの。2組、3組、4組、5組、6組でさあ、転校生が来たんだけど、5人とも不良なんだ。明日、俺のクラスにも転校生が来るみたいだし、不良が来るんじゃあねえのかなあ?」
「悠平の優京高校には確か番長も居るみたいだよねえ?」
「2年生が番長らしい。俺がその座を奪うけどね」
「止めなさい」
「嫌だね。ところでコイツら何なの?」
「駅から、ずっと付きまとって来たのよ」と茜はオブジェ化した不良を睨みながら言った。
「よし、判った。コイツらは任せとけ」と俺は言ってスマホで電話を掛けた。
つづく
ありがとうございました!