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記憶のない僕が君に出来ること  作者: 宮日まち
2章 ココロの移り変わり
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-青山翔太と言う人物-

 暇だ。ゴールデンウィークに優真を誘ったら終盤しか空いてないらしく、その日まで暇な時間を過ごしていた。親の金で高校に通ってるからバイトだって小遣い稼ぎ程度だし、中学の時の友人なんていない。誰と遊ぶことも無くゲーセンに入り浸る毎日。ゲーセンでやるゲームと言えばメダルゲーム。最初は金がかかったが上手くいけばメダルを沢山ゲットでき、それ以降はそのメダルで遊べるためお金がかからない。相当運が良いか本当に上手いか、俺はどうやら運が良い方みたいだ。

 話は変わるが俺は中学の頃、いじめられていた。いじめってのは集団で生活する上で少なからずあるもんだ。精神年齢が低いから、誰かを陥れたいんだろう。俺はいじめを受けても学校を行くのを辞めなかった。他人に負けるのは構わない、でも自分には負けたくない。そんな綺麗ごとを言い続けられたのはいじめを受けて一年経った頃までで、俺の心は荒んで行った。なんで俺ばっかりこんな目に合うんだって。自分が嫌になった。何でこんな話をするかって?今でも俺はいじめられていたことを引きずっているからかもな。


 さて、今日は待ちに待った合コンの日。色んな学校の高校生が集まって飲んだり食ったりして、最後には誰かとお近づきになる。俺だって人並みに恋人がほしいってもんだ。俺はこの春から生まれ変わったんだ。俺を知っている人間はいない、この学校で新しい友人だって出来た。じゃあ次に作るのは決まってる、恋人だ。

 そう思って気合いを入れて来たっていうのに、俺の唯一の友人である筒井優真は遅刻だ。

「なーんか遅れてるやつが居るけど、時間だし先に始めてるか!じゃあ、第一回合同コンパ始めまーす。」

 パチパチ、盛り上がりにかける拍手が終わり一人ずつ自己紹介をしていく。年齢は様々で学年も違う。最後に俺が自己紹介した後に、優真が遅れてやって来た。その優真が自己紹介をして初めて俺は彼の年齢を知った。どこか大人びている気はしていた。でもまさか十九歳だとは思わない、俺よりもまさか四つも上だなんて。


 俺は高校に入学する時に決めたんだ、自分の性格を表に出して行くって。いじめられていた時に感じたのは面白い奴は一定のポジションが与えられるってこと、だから俺は面白い奴になろうとしている。意味も無い話をして相手の気を惹くことで俺の存在価値を見出す。そんな生活を一ヶ月続けると、前の席の優真が俺の話を毎回ちゃんと聞いてくれることに気付いた。正確に言うと、優真以外は俺の適当な話を聞いてくれる奴は少しずついなくなっていった。俺は変わったつもりでいたけど根は変わっていなかったのかも知れない。それか他の奴が友達なんて求めていない奴らばかりだったのか、まあ考えても仕方が無いことだけど。

 後から考えて分かったのは、面白いやつは周りから面白いことを求められて次から次えと面白いことをしなきゃならない。面白くなくなったら終わりだから。そういう辛さも味わっていたんだなって。


 優真はどこか他の人と変わっている気がする、どこか客観的で自分に興味が無い様なそんなやつ。でも俺の話をちゃんと聞いて受け答えしてくれるところとか一緒に居て落ち着く、そんな所に惹かれたのだろう。自分の性格を表に出すって決めたのに、面白いやつになろうとしたり俺は矛盾ばかりで、何に対しても真っ直ぐな優真が眩しく見えた。


 いじめられていた奴は隠していても性格に滲み出ている、そんな話を聞いたことがある。社会に出てもそういう所を付け込まれるって。俺はそんなのは真っ平御免だ。過去は過去、現在(いま)現在(いま)なんだ、何度も自問自答する。過去の俺を否定するために。


 俺が本当に欲しかったのは心から気を許せる親友。上辺だけの友達や、金だけを求めてくる恋人なんていらない。親しい友達が出来れば素敵な恋人だって飛んでくるに違いない。

 優真は俺のことをどう思っているのか、時々不安になる。俺が一方的に友達だと思っていて、彼に絡んでくる奴としか思われていない可能性だってある。俺は話すのが上手くないから必死に世間話をしたり、練習がてらこうやって合コンを開いてコミュ力を上げようとしている。

 優真や俺にとっても初めての合コンなんだけど。遅れてやってきたこいつは、何も緊張していないのか堂々と目の前の女の子と会話してやがる。もしかして女慣れしてんのか?可愛い顔して大胆なやつだなあとか思っていると、その優真が俺の肩をポンと叩いてきた。

「青山、黙ってちゃ彼女が暇になっちゃうぞ。」

 それを聞いた俺は前を向くと、ドリンクをストローで飲みながら頬杖をつき、つまんなそうにしていた。既にそれぞれがペアになって歓談中なのに俺が黙っていたからだ。俺としたことが女の子を暇にさせるなんてあってはならないこと、すぐさま彼女に笑顔で話しかける。彼女はやっとかと言うように顔を上げ俺の顔を見る、ロングの黒髪が綺麗にケアされているのが特徴的で顔も平均以上、体型は細めでスラッとした印象だ。彼女にするならこういう子が良いってラインを超えてきてる。なんで俺は黙ってたんだと後悔しながらも、挽回しようと話題を振りまくる。

 会話はキャッチボールだ。初対面の人に対して一方的に話すのはナンセンス。会話の中で落ち着く、楽しいと思わせたら勝ち。外見や話の中で彼女の内面を探り、良いと思ったら素直に褒めていく。あまりにも自分が思っていることとかけ離れた褒め言葉を使うとボロが出る、俺はそんなことを考えながら彼女との距離を縮めていった。


 合コンも終わり、前の席にいた真理ちゃんとも連絡先を交換出来たし満点の出来だ。真理ちゃんと仲良くなれるかはこれからの勝負。今日の勝負は連絡先をゲット出来た時点で勝ちみたいなもん。

 お開きになって、地元に帰るため駅に向かおうとしたら優真に呼び止められた。何を言うのかと思えば..。

「青山、下の名前で呼んでいい?」

 友達なんだからいいに決まってるだろ?優真と肩を組んでその日は帰った。翔太と優真、親友になる第一歩を踏み出した、少なからず俺はそう思っていた。

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