第7話 商談もどき
「さて、まずは自己紹介だ。私の名前はエリィ。薬剤師兼開発者だ」
「俺の名前はルートです。職業は冒険者です」
「ふむ、そうか。冒険者か」
何かを考えるエリィ。
しかし
「まあ、後ででいいだろう。店は閑古鳥が鳴いていしゆっくりしていけ」
「閑古鳥ですか...」
「ああそうだ。冒険者組合は国営だから税金を払わない分ポーションを安く売れる。私が新しい商品を開発したとしても冒険者組合に真似されればそれで終わりだからな。原材料は国に提出しないといけないから...困ったものだよ」
「へえ。ポーションの作成は誰でもできるのですか?」
「私が君に教えようとしているのは誰でも作ることができる。高級なものは魔力がないといけない」
「俺には高級な方は無理ですね」
「魔力と言ったって微々たるものだよ。20もあれば十分だ」
「無いんですよこれが」
「そ、そうか。まあ、魔力を貯蔵することも出来るからな。10くらいなら2日でたまるだろうよ」
「どうやるんです?」
「それはお買い求めいただこうか。少し高いが永久に使えると思えば...高いけどな」
「何日もためて一気に使えば最強じゃないですか?」
「そう上手くもいかないんだよ。魔力貯蔵庫に魔力をためすぎると魔物が出現するんだ。スライムとかならいいが上級魔物が出現したら悲惨だよ。別々にしても共鳴が起こるからね...100までとされているんだ」
「そうですか」
「少し話過ぎてしまったな。そろそろ作成に入ろうか。まず...必要なものはスライムの体液、薬草、それと火。混ぜて熱する。これで終わりだ、簡単だろう」
「確かに簡単ですね...どれくらい熱するんです?」
「沸騰するまでだ。まあ実際にやってみな」
と、台を指す。
「火はどうすれば..」
「ああ、君は本当に魔法が使えないんだね。なかなか稀有だが…まあいい。ではいくよ、火魔法 発動 火 終了」
おお、これはすごい。何もないところから火が付いた。
では早速ポーションの作成を始めましょうか。
★★
「さて、品質としては最高の最低級ポーションができたわけだ。下の上だな、中の下とほぼ同じだよ」
まあ、上出来というところかとエリィは言った。
「何から何までありがとうございます」
エリィに何の意図があるのかわからないけれど、しかし見ず知らずの俺を助けてくれたわけだ、良い人なのだろう。
「良いんだよ。私だって教えるのは好きなのだ。さて、少し頼みがあるんだがね。まあ、気を楽にして聞いてくれれば良い」
「できる範囲なら何でもしますよ?」
すると、紙を俺に渡してきた。
「ここから北にずっと進むと、パリィ村がある、そこに私の妹がいるから手紙を渡してほしい、と言っても今ではなく、もし君が冒険中に行く機会があればという話だがな」
「ええ、承りました。もし機会があれば必ず届けます」
「ふふ、頼もしいな。しかし君も冒険者の新参だろう?行くのはかなり先のことになると思うがね」
「新参も新参、つい最近ここに来たばかりです」
「ほお、やはり駆け出しか!これは応援しなくてはな。どうだ?このポーション、私のところに納品するか?」
なぜか嬉しいそうに言うエリィ。
「そんな…エリィさんが損をするだけではないですか」
売れないから困っているといってるのに、さらに増やしても仕方ないはず…
「気にすることはないんだよ」
俺が気にするんだがな。?
「あ、ではこれではどうです?調合はエリィさんにしてもらって、その代金はできたポーションの半分。もう半分は組合に納品する」
「そうしたら私は得するだけではないか!」
「そもそもエリィさんは商人でしょう。なんでそんなに損にこだわるんです?」
「別に損にこだわってるわけじゃなくって…私の場合は十分な貯蓄もあるし、これをやっているのも趣味みたいなものなのだよ」
「はぁ、まあでもこちらとしてもエリィさんにやってもらった方が良いんですよ。私がやっても大して良質なポーションが作れるわけではないんですよ。そのフラスコやら火やらを調達するのも今の金銭環境じゃ不可能ですしね」
「ふむ、まあ、私は暇だし、それをやるのもやぶさかではないよ」
「じゃあ、決まりですね」
そうして、エリィとの商談がまとまったのだ。