第3話 自由主義と自己責任
例えばそこに、しっぽの生えた、獣人とでもいうべき女がいる。
例えばそこに、自分の身長の二倍くらいはあるハンマーを持った男がいる。
例えばそこに、ローブを着て杖を持った老人がいる。
「は...はは」
思わず笑い声が出る。
しかし喧騒にかき消され誰にも気づかれない。
本当に本当に別の世界に来てしまったんだ...
幼いころ遊園地で着ぐるみを見た時のような、感激。
「いや...そんなことよりも、今は村人装備のまま野垂れ死にする現状を打破しないと...」
知識、曰く冒険者や商人がこの町の職業で多いらしい。
冒険者...本来なら商人ルートまっしぐらだが、一銭もないから手っ取り早く稼げる(らしい)冒険者一択なんだよ...
別に、面白そうとかわくわくするとかそういうのは...
多少はあるよ。
そもそも一度死んだ人生、堅実に生きるなんて悪手だと思う。
そうやってワクワクしながら冒険者組合へ向かった。
★冒険者組合、入り口★
酒の匂いやら血の匂いやらで濃厚な人ごみを抜ける。
文字は読める。不思議な能力ではあるが、気にしていても仕方がない。
登録と書いてあるところに進む。
人間の受付嬢がいた。
「どうされましたか?」
と、事務的な声をかけてくる。
「はい、冒険者受付をしたくて...」
「そうですか。見た限りでは武器、防具はないようですが、村からの出稼ぎということでよろしいですか?」
「はい」
「それにしても、武器の一つもないとなると薬草採集や雑務しかありませんが」
「構いません」
「そうですか。それでは冒険者登録に入ります。規約を読んでください。字が読めない場合は100Gで読みますが...」
「読めます。大丈夫ですとも」
1銭、1Gもない状況でそれをやられたら困る。
規約自体は特に問題はなかった。
少し抜き出すのなら、
*冒険者が死亡または負傷をした場合、いずれにおいても組合は責任を負わない
*冒険者にはランクがありそれを目安に行動することを勧めるが、格上の依頼を受けても問題ない。もちろん失敗した場合は契約金は返却されない
など、自己責任という言葉はよく見かけた。
「はい。読み終わりました。同意します」
「では、水晶判定を行います」
そういって関門でも見た水晶をだす。
「はいかいいえで答えてください。今までに冒険者登録をおこなったことはありますか?」
「いいえ」
「以上です。それでは能力表を配ります。能力値は他人に見られることはありません。参考までに、右側に20歳の能力値平均が書かれています」
これだけなのか…
何かあっても自己責任、一切合切
「はい。ありがとうございます」
では早速...
レベル...1(平均30)
魔力...1(平均100)
物理攻撃力...17(平均100)
な、なんですと...
前話のあとがき3日に一度投稿と書きましたが、最初のうちは毎日投稿です。
ええ、最初からそのつもりでいましたとも