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森の聖域(第1章)  作者: 佐藤さん
1/1

全ての始まり


皆さん初めまして。今作はおよそ3〜4章まで続く作品です。

皆さんは神様を信じますか。私はこれといった神様を信仰しているわけではありませんが、守られつつある日本の伝統は美しいなと感じております。

つまり、神様のいる、いないはそこまで重要ではなく、たとえ架空であったとしてもこれをきっかけに人と人との結びつき、人と自然との関わり合いが良好になるのでは無いのかなと感じます。

今作はまさにテーマがはっきりとしている作品です。やや国語の教科書みたいで退屈かもしれませんが、是非お楽しみください。


ある日の午後、私は宛もなく車を走らせていた。どんよりとした曇天で、今にも雲がのしかかってきそうな天気であった。職を離れ、ぶらりと人生をただ散歩せざるを得ない私にとっては、何だか心地良く感じた。

車はそのまま森の中へ。何かに誘われたかのごとく、私は運転を続けた。どんどん森は深くなってくる。好奇心に駆られた私は、スピードを殺しつつ、しかし迷わず中へ車を走らせた。

ふと横を見ると銀色の毛をまとったオオカミのような生き物がちらりと見えた。

「何だ、あれは?」と気を取られたのも束の間。 私の車は目の前の大木に衝突した。衝撃が全身に走る。スピードを殺していたからすぐ動くだろうとバックしようとしたが、車は全く動かなかった。

仕方がなかったので、私は車を降り、ぶつかったところを調べてみた。確かに車は凹んでいるのだが、これくらいで車が全く動かないということがあるのだろうか。不思議に思った私は、ぶつかった大木をまじまじとみた。

縄のようなものが、木全体を縛っており、木にはよく解らない文字が掘ってあった。ただ、あまりにもこの木が立派過ぎるので、私は10分くらいずっと見惚れていた。

そして車に戻ろうとした瞬間、ビューっと鋭い風が吹いた。その風は私をさらに森の深いところへ連れていこうとしているように感じた。私はその風に連れていかれるように、足を進めた。歩いていると霧がどんどん濃くなってくる。風は一向に止む気配がない。好奇心でいっぱいだった私の心もさすがに不安や恐怖が芽生えていた。さらに一瞬風が強く吹き、私の体はやや強引に押し出された。するとそこには、石碑があり石碑の周りには刀が刺さっていた。石碑の前には、先ほどの銀色オオカミがおり、こちらを見つめている。

しばらくするとオオカミがこちらに向かいノシノシと歩いて近づいてくる。私は喰われるんじゃないかと思い、後ずさりしようとするが何故か体が動かない。オオカミはすぐ目の前に来て、私のにおいを嗅ぎ始めた。

「ヤバい!」オオカミの口が開いた瞬間、「ここに何をしに来た?」と言葉を発した。キョトンとした私は聞き返す。するとオオカミもう一度何をしに来たのかを聞いてきた。不思議にもオオカミが喋ったことにはそこまで驚いていなかった。喰われなかった安堵の方が強かったのであろう。

「特に目的があって来たわけではありません。早く帰ろうと思ったのですが、車が動かなくて。」何故かオオカミに敬語である。

「車?」オオカミの牙がこっちを向いている。どうやら車が何か解らないらしい。まあ当たり前である。私はオオカミを車の場所へ案内した。意外と距離は短く、私とオオカミはすぐ大木のところにたどり着いた。

「あーあ、神様に傷を負わせやがって。」

「えっ?」私はオオカミの方を向く。

「この木はいわば神様の団欒よ。それを傷つけたんだ。神様は怒ってそいつに金縛をかけたみたいだな。」といって車の方を見る。

「どうすれば怒りを鎮めてくれますかね。」と聞くとオオカミはやや呆れた顔で言った。

「これだから人間は。。神様の好物をお供えすればいい。そうすりゃあ神様の機嫌も少しは良くなるだろう。近年この森に拝みにくる人間がいなくなってしまってな。神様もさすがに腹を空かせてるだろう。だからとりあえずは、神様の好物である酒、塩、魚、果物をこの木にお供えするんだ。いいな。」

私は「はあ。」と震えるように返事をした。ただこのミッションは是非クリアしたいと感じた。車のことも心配ではあったが、何よりしばらく食べ物飲み物を口にしていない神様を思うと心が苦しくなった。何も知らなかったとはいえ、うっかり車をぶつけてしまった自分自身にも責任を大きく感じていた。オオカミさんは、森から出ることは出来ないが、少しくらい協力してやると言ってくれた。

私は神様の好物を探しに行く旅が始まろうとしていた。しかしこの旅は、私の想像をはるかに上回る壮絶な旅となるのである。

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