土下座するから赦してくださいヾ(・ω・`;)ノぁゎゎ ~マーガレット視点~
いざ続編へ!!
マーガレットは薄暗い牢の中にいた。
留学先の国が経営している学園ではこの日、学園主催の夜会が開かれていた。その際にこの国の未来の王によって断罪されてフラワー国王女にして唯一の後継者たるマーガレットは投獄された。
「───うふふ、うふふふふふふ」
学園内にある牢の中で鈴を転がしたような笑い声が響いていた………………マーガレット王女殿下の笑い声である。
口元に備えられたら羽扇を握りしめる手は完全に力の入りすぎで白くなっていた。( ´ρ`)
「仮にも……そう、仮にも宗主国の跡取り姫たるわたくしの婚約者を勝手にも名乗ったばかりが不当極まりない……恐ろらく調査もまともにしていないであろう罪状でわたくしを投獄、処刑を求めるなど……うふふ」
まったく………どうしてくれようかしら?
(*´ω`*)ふふふ
(;゜д゜)←?
「───あら?」
「………………」
そこにはクソバカ王太子が恋人と言っていた令嬢が牢の中にいるマーガレットを見て硬直していた……。
(あら? ……………この方は、確かあの王太子殿下がわたくしのありもしない婚約を破棄して新しく婚約を結ぶと言っていた…………恋人の方?)
不思議に思い首を傾げれば王太子殿下の恋人────ツジムはビクリと震えて恐る恐るといった風情でマーガレットに話し掛けた。
「王女殿下様………大丈夫ですか? お気を確かに持ってください!! すぐにこの牢を開けますので一緒に逃げましょう!!!」
「??」
何故……あのバ……王太子の恋人が、わざわざわたくしを牢から出そうとするの? ああ……そういえばこの方自身は恋人であることを否定していらっしゃいましたわね。
それも、力いっぱいに。
ついつい怒りでその時の記憶を遥か遠くに投げ捨ててしまっていたがマーガレットはツジムの一生懸命牢の鍵を開けようとしている様子を見てその時のことを思い出せた。
「貴女はあの時の…………何故、わたくしを助けようとなさるのですか? この国は絶対王政………王とその血筋に連なる王族の命は唯一絶対のはず……幾ら常識的に世間一般から見てもあの方のほうがおかしいとはいえ逆らうなど貴女がただでは済みませんのに………」
ツジムはその言葉に顔を歪めて泣きそうになった。その表情に、言ったマーガレットの方が驚く。ごく当たり前の、普通に思ったことを言っただけなのに………何故、彼女はそのような顔をするのか?
(………何か、事情があるのかしら?)
あのバカ王太子ならばやりかねないと思った時、ツジムの小さな呟きが、マーガレットに聞こえた気がした。
「……………たん、…………………は」
「え?」
「嫌だったんです、繰り返されるのは。もう、二度と見たくなかったんです…………それに、あの男の妻になんて、成りたくなんて無い………」
「…………」
何が、とか。二度とは、とか………気になる単語があったがそれよりもマーガレットはツジムの浮かべる表情の方が余程気になった。言葉よりも有弁に告げるその憎くて仕方が無いとでもいうような────苦しそうに歪めたその顔が。
「────貴女のご実家は男爵家、なのよね? こう言ってはなんだけど……王太子の婚約者になるには最低でも伯爵位からでなければならないわ。例え……王太子殿下が何を言ってもそう簡単に男爵家の貴女を婚約者になんて出来たりは………」
しない。と最後まで言えなかった。ツジムが悲しげに首を横に振い、出来るかも知れないんです……とどこか疲れたように言った………。
「────私は、男爵家の庶子として公にはなっていますが本当は私、お父様の子供では無く。本当は……お父様の実の兄とその妻の子供なんです…………」
「?」
現男爵家の当主の兄?
………そういえばあの家を継いでいるのは次男で、嫡男は自分の妻を連れて出て行ったと聞いたことがあった。つまり、ツジムは嫡男夫妻の子供ということか。しかし………それならば何故、現男爵の庶子という扱いになっているのか?
そしてツジムは自分のことをポツリポツリとマーガレットに語り出した。
私のお父さんは商人をしていました。
お手伝いさんがいたのを覚えているから、そこそこ裕福な暮らしだったと思います。
お母さんは体が病弱で………よく季節の移り目には体を壊していました。でも、お父さんもお母さんもとてもとても優しかった………。
でもそんな穏やかな生活は長くは続かなかったんです。
私が六歳になった頃です。
突然、お父さんが働いていた商団がお父さんをクビにしたんです。お父さんは商団の中でもかなり上の地位にいたみたいなのに………でも不思議なことにお父さんは商団の皆さんに文句は言いませんでした。
………むしろお父さんの方が申し訳なさそうな顔をして団長さんに謝っていました。
団長さんがくれた退職金を頼りに、私達家族は遠い村に引っ越しました。お母さんは長旅で体を酷使した所為でよく寝込むようになりましたけど……それでもお母さんは優しく笑って私の頭を撫でてくれたんです。
お父さんは村の人達の手を借りて畑を耕し始めました。慣れない手付きで畑を耕すお父さん。疲れているだろうに、家に帰ってきたら私とお母さんのもとに来ていっつも今日の畑の様子や村人とどんな話をしたのか教えてくれました。
ある日、お父さんがポツリと言ったことがあったんです。『せめて……この国を出ることが出来れば手立てはあるものを………ようやく、商人として出国出来るはずだったのに………』………この言葉の意味は当時の私には分かりませんでした。取り敢えずお父さんはこの国を出ようとしていたみたいだというのが分かったくらいで……。
村に移住してから半年後、それはやって来ました……。
国王陛下の勅命だという近衛騎士の人達が私達の家にやってきたんです。近衛騎士の人がいうにはお父さんは国王陛下に逆らった罪人で指名手配されていると言ったんです。お父さんとお母さんは近衛騎士達の隙を突いて私を連れてそのまま村から逃げました。お父さんは追っ手がくる前に私とお母さんを近くにあった教会に預けました。
教会は権利を持たない代わりに国の支配を受けない特別な場所。お父さんは苦々しい顔で言いました。
『お前達はこのままこの教会で奴らをやり過ごせ。教会ならば幾ら国王でもそう簡単には手出し出来ないはずだ………』
『あなたはどうなさるのですか?』
『指名手配されているのは俺だけだ。俺はなるべく遠くに逃げてなんとか奴らをやり過ごす………出来れば巻き込みたくはなかったが………アイツに連絡を入れてみる。だからそれまで教会辛抱してくれないか?』
『………』
『おとうさん?』
暗い顔で沈黙するお母さんに、私は多分、不安気な顔でお父さんを見ていたんだと思います。お父さんは『大丈夫だ。……行ってくる』と言って教会の神父様に何か話をしてから行ってしまいました………それが、お父さんの姿を見た最後でした………。お母さんは私をキツく───抱きしめながら何度もごめんなさい、ごめんなさいって謝って………。
お父さんが居なくなってから体の弱いお母さんはある日、急に倒れてしまいました。ものすごい高熱を出して………神父様の連れてきてくれたお医者様が言うには心労と長旅の疲れが出てしまったのだろうと言っていました。でもお母さんはそれからずっと起き上がることもままならない程弱っていきました。
お母さんは何時も涙ながらにごめんなさい、ごめんなさいって高熱に苦しみながら私とお父さんに謝って──────それから三ヶ月後でした、教会にお父さんが捕まったという知らせが届いたのは………そして、近衛騎士と名乗る人達が教会にやってきたのは………。
近衛騎士達はお母さんに国王陛下の下に来いって言いました。お父さんを助けたかったら国王の下に来て身を寄せろって………さもなくばお父さんを処刑するって………お母さんは泣きながら神父様に私を預けると近衛騎士達について行ってしまいました。最後に『私があなたの母様でごめんなさい。あなたはお父さんと一緒に幸せになって』って言って───。
「それで………貴女のお父様とお母様はその後、どうなされたの?」
黙り込んでしまったツジムに、マーガレットは静かに続きを促した。
当時を思い出して唇を噛み締める痛々しいツジムの様子に、そっとさせたとも思うがマーガレットはフラワー国の跡取り姫としてツジムの話を聞かない訳にはいかなかった。
ツジムは大きく息を吸ってゆっくり吐くと少しは落ち着いたのかまた語り出した。
「…………最終的に、お母さんはお父さんと一緒に処刑されてしまいました。後から教会にやってきたお父様───叔父様のお話によると国王陛下はお母さんが好きで、でもお母さんは心労と病気ですっかり体が痩せ細ろえていて国王陛下はお母さんをお母さんだと気付かなかった………うんん、お母さんだと思いたくなくてお母さんと結婚したお父さんと一緒に処刑したと言っていました………」
「────は?」
今、彼女は何と言った?
この国の国王は、家を捨ててまで夫と逃げた惚れた女性が、痩せ細ろえて容姿が違っていたから夫ともども処刑したと、そう言ったのか?
「────貴女の叔父様とやらは貴女方ご家族が大変な思いをなさっている間………何をなさっていたのかしら?」
( ´ρ`)ふふふ……
優雅に笑ってこそいるが、羽扇を握るその手はもはや白を通り越して赤くなり始めていた。
「叔父様達も私達家族を気に掛けてくれてはいましたが下手に動くと国王陛下に目を付けられるし、長い間見つからなかったから………もしかしたら国外に逃げ切れたのだと思っていたそうです。でもお父さんが近衛騎士に捕まって、お母さんも捕まった話を聞いた叔父様は何とか国王陛下に二人をか解放して欲しいと嘆願したみたいなんですけど聞き入れてもらえなくて………二人が処刑された後、叔父様の下に近衛騎士から逃亡している最中にお父さんが書いた手紙が届いたそうです。お父さんは手紙が叔父様の下に無事に届くように色々していたみたいで……その所為で手紙は二人が処刑されるまで叔父様の下に届かなかったみたいで………」
叔父は言っていた。
私のことはお父さんとお母さんが必死に隠してくれたから国王陛下にはバレていない。でも万が一の為に叔父の元に庶子として入り、婚姻可能な年齢になったら婚姻を理由に他国に逃がすと。
叔父の庶子にした理由は養子だともしかしたら国王陛下に感づかれる恐れがある。ツジムの容姿は可憐な華姫と名高かった母親にそっくりだった。もしかしたら国王陛下の目に留まってしまうかも知れない。
「だから叔父様は私を庶子として学園に入るまでは屋敷内で保護し、学園に入る際もギリギリまで入学を延ばしました。学園は十歳から十八歳まで在籍しますが、令嬢の場合は婚姻可能な十五歳になれば婚約を理由に私をそのまま出国させる手筈だったそうです」
「………」
法治国家ではなく絶対王政を摂っているこの国ではそれが限界だったのかも知れない………。教会も、罪人として手配されていなかった母子を保護は出来ても国を越えさせるには完全に信徒としての成約を受けさせなくてはならない。そうなれば俗世から解放されるとはいえ夫婦は離縁し、心身共に神に捧げなくてはならなくなる。娘のツジムは当時は六……いえ、七歳にはなっていたのか? 成約は成人のみしか受けられない。つまり、もしツジムの両親が教会の保護を受けたいのならば夫婦は離縁してツジムは孤児院に入ることになったであろう。
「私の婚約話は私が国を出る為の嘘なので、私は出国したらお母さんの実家に行くことになっていました。……お母さんの実家はお母さんが病気でお父さんと一緒に亡くなったと国から受けているから私の存在を疑うかも知れない、そもそもお母さんの死因事態を疑っていたみたいですし……」
それでも僅かな可能性にその叔父とやらは掛けていたのだろうとマーガレットは察した。随分と人任せで運任せな杜撰な計画だとも思ったが………。
(いくら絶対王政制を執っているとはいっても流石に酷過ぎません? いくらなんでも無茶苦茶すぎますわ……)
王のやっていることを誰も止めないなんておかし過ぎる……この国は王弟が執務に携わっていたはず。王族として王を諫めなかったのか? 父王からは優秀な人物と聞いていただけにどうしても違和感がぬぐえない……。それにツジムの話を聞いて彼女があのク……王太子の婚約者に成れるかもしれない理由が分からない。
「叔父様が言うには元々我が家の爵位は侯爵だったようなんです。国王が、お母さんを城に召し上げられない上にお父さんと一緒に逃げたのを理由に爵位を男爵まで下げたんだそうです」
「……………………」
もはや、マーガレットは何も言えなくなった……。自分から夫婦共々逃げたから爵位を男爵まで下げた? たったそれだけの理由で?
(あっっっりえませんわよ! そんなこと!? 横恋慕した相手が夫と逃げたから夫の実家の爵位を下げた? そして何年もし・つ・こ・く追いかけて夫の方を指名手配にした? そして捕まった夫を助ける為に名乗り出た妻の方は痩せ細って容姿も変わっていたから夫共々処刑した? な・ん・な・ん・で・す・の・そ・れ・は?!)
だが何となく周りの貴族が動かなかった理由が分かった。恐らく、怖かったのだ。侯爵家をあっさりと男爵位にまで下げる国王。そして何年にも渡って横恋慕した相手を追いかけたと思ったらまたあっさりと夫と共に処刑したその身勝手さも。
王弟が動かなかったのは恐らく下手をすれば被害が拡大するとそう思ったからだろう。
(ツジム様の言った王太子の婚約者に成れる………こういうことでしたのね。恐らく、彼女は王太子が王に掛け合って彼女の実家を元の地位である侯爵家に戻すかも知れないという………確かにそうすれば、彼女は王太子の婚約者に成れますわね………)
だが果たしてそれだけで済むのか……。マーガレットはツジムからの話を聞いて何とも嫌な予感がした。
「王太子殿下は私との婚約話を纏める為に近衛騎士を連れて城に向かいました。今のうちなんです! 逃げ出すのは! 今を逃したらきっとあの王太子は王女様を……!!」
パチンとマーガレットは手のひらに羽扇を打ち付けた。
「─────話は理解かりましたわ。ならばこのような所に何時までも留まる必要は無いですわね……お前達!!」
「「「「「は!」」」」」
Σ( ̄□ ̄)!
ツジムの前に、いったいどこにいたのかと言いたいほど煙のように現れた男達。明らかに隠密といった人達がマーガレットの呼びかけでザッと膝を突く。
「話は聞いていましたね? 今すぐこの牢から出てツジム様と共に我が国に帰国します。あちらが文句を言おうが構いやしません。わたくしを怒らせたのです。それ相応の報いを授けます!!」
「「「「「御意!!」」」」」
( -_-)ん?
ツジムはマーガレットの言葉に疑問を感じた。
「あ~の~王女様? 今私も連れて行くと聞こえたんですけど…………気の所為ですよね?」
「気の所為ではありませんわよ? ツジム様。貴女もわたくしと共にわたくしの国へ帰るのです!」
(っ´ω`c)
(;゜д゜)
気の所為ではなかったようだ。
「えぇぇぇぇ?!」
「おーほっほっほっ! 良いでは無いですか。元々貴女、わたくしを連れて逃げようとなさっていたのでしょう? ならば最初となんら変わりありませんわよ」
il||li (OдO`) il||li
絶対違う。とツジムの顔は語っていた。
隠密と思しき人の一人がマーガレットを牢から助け出す。他の人達は………何時の間にか居なくなっていた。
「それはそうと………ツジム様? 貴女はわたくしを助け出したら何処へ逃げようとなさったの?」
「え? ぇええっと……叔父様の領地に向かおうと思っていました。叔父様は万が一にも国王関連で何かあった時の為に私が逃げられるように手段を考えてくれていたんです。叔父様には叔母様との間に息子さんがいらっしゃるんですけど、その人がお母さんの実家のある国に留学していて……最近何とか私が国を出てもおかしくない婚約者(仮)を探してくれたんです。ですからその方を通じて出国してしまおうかと………」
「あら、そうなの? でも大丈夫よ。わたくしの“影”に掛かればこのように警備もヌルければ頭もユルい者共の治める国からなぞ、一人や二人や三人程度を連れて抜け出すことなど雑作もありませんわ!!」
ん? 一人や二人や三人………??
( -_-)んん??
この日を境に、この国から男爵家の当主とその妻と庶子、そしてなによりノモ=カロオ王太子殿下が婚約破棄し、学園内の牢に投獄していたフラワー国マーガレット王女殿下が居なくなったという知らせが学園と王城内を駆け巡った。
続く!