はじまりはじまり
麗らかな春の陽気で俺の心もホカホカである。
厳しい…ほんと、厳しい冬が終わって無事大学生になることが出来たこの春。今の俺の手の上にはワサワサと“ビラ”が積もっていってる。
「あ、君、新入生なんでしょ?よかったらテニサー来てねー」
すれ違いざまに渡される“ビラ”。大学生になって2週間。毎日もらうハメになっている。
まったく、エコの精神はどこにいったんだ。食堂に向かう数分の間に沢山もらってしまったビラを手にして、食堂内に入り友人は何処かとさがす。
「臣ー、こっち、こっち。」
明るい茶髪に染めたやつが窓際で俺を呼んでいる。奴は桜庭 翔、どこのアイドルだっていうぐらいの童顔でイケメンなやつで、俺とは高校からの腐れ縁だ。同じ大学に進んだとはいえ学部が違うから放課後ぐらいしか会うことはない。
「うわー、まった大量にもらってんなぁ。なんで断んないの?」
俺の手をみて翔は言う。
「仕方ないだろ、一度断わりきれなくて受け取ったら連鎖してみんな渡してくるんだから。」
まだ中身の少ない鞄をおろしながら答える。そういえば、こいつは要領もいいんだった、とビラを受け取ってなさそうな翔をみて思う。
「まー、俺入るサークル決めてるしぃ。お前と違うんだわ。」
「どこ入るんだ?」
「オーケストラ!ほら、俺高校吹奏楽部だったし?、そのまま楽器続けようかなっておもってさぁ。こないだ、新歓行って見たんだけど雰囲気いいし、楽器も貸してくれるっていうから入ろかなって思って!」
にっこにこしながらでかい声で話す翔は無駄にテンションが高い。
「ふーん。で、どうしたんだ今日は、急に放課後暇?とか聞いてきたりして。」
テンションの高さについていく気はさらさらないため、さっさと用事を済ませることにした。昔からこいつが調子に乗った時にはろくなことがないからな。
「臣さー、俺とオケの新歓いかない?ぜってー楽しいってー。サークル入ろうぜ!」
案の定だ。
「お前、俺が高校三年間帰宅部だったの知ってるだろ?音楽とか音符すら読めない。お前一人で行ってこいよ。」
めんどくさい、自分でも音楽の才能なんて無いのはわかってるから断る。
「いやぁー、この間行った時女の子しか来てなかったんだよね。寂しいし、臣、行くぞ!」
ガタッ、と立ち上がりざまに向かい合って座っていた俺の横にあった鞄を掴み取った。
「あっ、お前っ、ちょ、かえせ‼︎」
「やっだよーん。こいつは人質?いや、ものじちだ!返して欲しくば、俺とオケの新歓に行ってくれ!」
鞄をフリフリしながら可愛いセリフを可愛くない男が言う。
言い出したら聞かないこいつの性格はよくわかってるし、若干女嫌いの気があるこいつには女の子の多い空間は居心地が悪いのだろう。
「仕方ないな…今日の新歓はついてってやるよ。だが、入るかどうかは俺が決めるからな?ほら、鞄返せよ。」
手を差し出して俺の鞄を奪還せんとしたら、翔はいきなり鞄を放り出してガッツポーズを作った。
「やりー、臣やっぱやっさしーやつだわー。」
喜んでるやつを見ながら溜息をつくしかない俺だった。
さてさて、初投稿になります。
仕様等わからないことが一杯ですが、頑張っていきます。
ゆっくりお付き合いいただければなぁ、と思います。