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黄金と緋色の国の友達

二話目です。登場人物の国の設定や風習などは私の想像の産物です。ほら話を楽しむような感じで楽しんでいただけたら幸いです。名前を考えるのが地味に楽しいですね。

とぼとぼと力なく人気のない道を歩いていると急に世界が明るくなった気がして顔を上げた。

「友達になろうよ!」

そのストレートな言葉にもびっくりしたが、それよりも祭〈マツリ〉を驚かせたのは、目の前の人物の服装の派手さだった。

金地に赤で紋様を刺繍した上着に、真っ赤なズボン。

袖口にはレース飾り。

胸元には金細工のブローチ。

眩しい、眩しすぎる。

ついでに言えば、祭は彼のことを知らない。

びっくりしてすぐには返事できずにいる祭の様子に気を悪くするでもなく、目の前の人物はニコニコこれまた眩しいキラキラした笑顔を見せている。

「う、うん・・・・・良いよ。」

ようやく頷いた祭に、

「ありがとう!!!よろしく!!!」

目の前の人物は更に眩しい笑顔を見せた後

「僕の名前は・・・!!」

ようやく自己紹介してくれたのだった。



目に眩しい彼はパラシオス、と名乗った。

正確には

ペドロ・フェデリーコ・エンリーケ・ハビエル・カルロス・パラシオス・デ・ノラスコ

という長々しい紹介をされたのだった。しかも一区切りごとにポーズを決めて。

光が金糸に反射して眩しいし、どこからどこまでが名前か名字か分からず呆然としていると

「とりあえずパラシオスって呼んだらいいよ。」

とあっさり言われた。

最後のノラスコが名字らしい。

「それ以外は全部名前。幸せになれるような名前をたくさん付けて、その中で気に入った名前を呼び名にする。」

パラシオスの故郷ではそういう風習らしい。

「僕は藤野祭〈ふじの まつり〉」

そう答えると、知っているよ変わった名前だね、と笑われ、むっとして言い返そうとすると

「僕と一緒だ。」

と言われた。

「僕も留学してきたんだ。」

言われて祭は切れ長の瞳をしばたかせた。そういえば、よく聞けば彼の話し方には、不思議な訛りが感じられる。

「僕は黄金と緋色の国から来たんだ。」

「黄金と緋色の国。」

「うん、良い所だよ。」

留学生同士、せっかくだから仲良くしようよ、とパラシオスは手を差し出した。

それが〝握手〟を求めているのだと、一瞬の間の後気付いた祭は、ちょっと緊張して、よろしく、と口の中でもごもご言いながら、その手を握った。

同じ学年だよ、と言われて、ついでに同じ歳だといわれて、祭は更に驚かされた。

彫りが深い他国の人間は、祭りにはずっと年上に見える。

てっきりうんと上の学年かと思っていたのだった。



魔法を本格的に幅広く学びたいのなら『深き海の学びの国』が本場だ。

学校も多く授業の質も高い。教師も世界中に名を知られた人がたくさんいて、首都の学校では他国からの留学生も四季ある国で言えば、中学生の年から受け入れている。

祭は十五歳、高校入学の歳に留学を決めた。

自分で望んで留学したとはいえ、祭は少々怯える気持ちを抑えられなかった。

故郷の四季ある国と同じ島国なのだが、同じなのはそこまで、この国の人々は総じて背が高く色が白く彫りが深い。

金色の髪と青い瞳を持つ人が 殆どで、他の色彩を持つ人は少数だ。

ましてや祭のような童顔の小柄な、おまけにまっすぐな黒い髪と切れ長の目を持つ人間など皆無だ。

つむじを見下ろす視線に、目玉のある金色の林の中に放り込まれたような気になっていた。

言葉もある程度学んできたとはいえ、やはり慣れない。授業はともかく休み時間などの雑談に入れない。

深き海の学びの国よりもずっと暖かい土地柄だという黄金と緋色の国を故郷に持つパラシオスは、長身は長身だが、やはり周りの皆とは文字通り異色だった。

肌の色は褐色がかっているし、髪は焦げ茶色の癖っ毛だ。

瞳は深い緑色で、やはり金色の林の中では目立っていた。

そんなわけで祭のことは気になっていたらしい。

クラスが違うので、なかなか声をかけるきっかけがなかったのだが、ここ数日祭があまりに顔色が良くないので、とうとう思い切って声をかけたというのだ。

その率直な言葉に祭は頬を赤らめた。

「今から何か予定あるかい?」

「ううん。」

寮に帰って一人過ごすだけだ。

「じゃあ、何かちょっと食べに行こうよ。」

夕飯までには時間あるしね、とパチンと片目をつぶって見せてくる。

いちいち眩しいなぁ、と思いながらうん、良いよ、と頷いた。

今日の授業の内容で聞きたい所もある。揚げパンなんか食べながら話が出来たら楽しいだろうな。

「あ!」

さて歩き出そうとしたところで、パラシオスは自分の姿を見下ろして慌て出した。

「ちょ、ちょっとまって!!」

バタバタと手を振り回して言うので言われた通りに、祭は立ち止まる。

目を閉じて小さな声で何かを呟くと、パラシオスの全身が金色の光に包まれた。

金色の光は粒子になって、パラシオスの手のひらに小さな丸い光となって転がり、消えた。

祭と同じ制服姿だ。

今のが魔法だ、ということは祭にも分かる。分からないのは今までの格好だ。

「さっきの格好なんだったの?」

「正装。僕の故郷の正装。」

「へぇ。」

「留学生同士だし折角だから。」

にこにこ笑うパラシオスに、祭もありがとう、と笑い返した。

この後、美味しいから、と街の屋台でパラシオスがオススメの菓子をご馳走してくれたのだが、甘い甘い揚げパンにあまいあまーいチョコレートソースをかけたもので、祭は新たなカルチャーショックを受けることになるのだった。
















なんだか説明の羅列みたいなお話になってしまいました。なかなか難しいですね。

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