98.論争(?)
まだまだ暑い日は続きますねぇ
「どうしても……ダメだって言うんだね?」
「ああ。樂といえどもこれは譲れない」
張りつめた空気。外でリア充になろうと必死に鳴くセミの声だけが、室内に響く。
「交渉、決裂だな」
「……僕は槙がそんな人だとは思わなかったよ」
「それは樂の認識不足だな。俺は元来こういう性格だ」
「でもね、槙……」
一歩間違えば即刻負けが確定する。でも、僕は次の言葉に全てをかける。槙に悔い改めてもらう!
「ア◯スの実なんだから、一粒くらいくれたって良いじゃないかっ!」
「やかましい!昨日俺のアイ◯の実一人で全部食ったお前が言うな!!」
――負けました。
いや、うん。僕が悪いんだけどね……。 誘惑に勝てなかったんだよ!冷凍庫の中から「食べてよぅ……食べてよぅ……」って聞こえたら食べる以外ないでしょ!?
「知らんそんな事情」
「読心!?」
「一人で食ったお前が悪い。だいたい人ん家の冷凍庫から勝手にアイス出して食うなよ」
「呼ばれてたから……」
「とにかく、これはやらん。柚にはやるが」
「酷い!?」
ひ、贔屓だ!柚だけ贔屓してる!
「つーか何度やったら懲りるんだお前は!何度目だよこれで!」
「えーっと……167?」
「なんでそんなに数多くて細かくてしかも疑問形なんだよ!100回超えてたら普通懲りるだろ!」
「僕は普通じゃないのさ!」
「そうだな、だいぶ普通じゃないな」
そこは否定して欲しかった!
「なんか『否定して欲しかった』みたいな顔してるな」
「だからなんで分かるの!?」
「否定なぞしねぇよ!お前は普通じゃない!柚も普通じゃない!ついでに俺も普通じゃない!」
「柚じゃなくて槙がついでなの!?」
「そもそも普通ってなんだ!!」
「槙そろそろ落ち着いて!」
何取り乱してるの!?大丈夫っ!?
「という訳だ。諦めろ」
「突然平常になった!というかもうアイス無いし!」
見れば袋はぺちゃんこ。明らかに中身はない。
「うう……食べたかった……」
「昨日食ったろ」
「ただい……どしたの」
「おかえり」
「うわーん!柚ぅ〜!」
「えぇ?一体何があったのさ」
柚に泣きついてみる。しばらく事情説明。
「――自業自得かな」
「うわーーーん!」
結論!
盗み食いはやめようっ!
食い物の怨みは恐ろしい☆




